みかん小説
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"花嫁のいない結婚式" 第12話

旅会社のパンドラの箱

翌朝の午、私はシンガポールオフィスのさな個別ブースに入り、ノートパソコンの画面をいた。 画面の向こうには、百法律事務所の佐藤弁護士が、えられた執務のデスクから穏やかな、しかし鋭い差しでこちらを見つめていた。 昨夜送付したタイムスタンプ付きのメール履歴に目を通した佐藤弁護士は、く頷いた。

「川さん、このヶの辞退届と式夜の緊急配のログは非常に力です。あなたが計画に式を破棄したという郎側の主張は、裁判所のでは秒も持ちません。これで法為者としての汚名は完全にらせます」 「ありがとうございます。……ですが先、問題は式から請求されている百万円のキャンセル料です。式を最終に取りやめたのは私ですから、相は費用の折半、あるいは私への全額負担を求めてくるはずです」

「その通りです」佐藤弁護士は鏡のブリッジを指先で押しげた。 「郎側に全額を負担させるためには、『婦が式を拒絶せざるを得なかった正当な事由』――すなわち、婚約関係の信頼を根底から破壊した郎のな帰責事由を、客観な証拠として証しなければなりません。ドア越しに聞いたという『代わり』発言だけでは、相が『そんなことは言っていない、聞き違いだ』としらを切れば、証が難しくなります。

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……何か、彼が元婚約者のを具体に引きずっていたという、第者の記録はありませんか?」

その問いを聞いた瞬、私の提げ鞄のに眠っていた「あの類」が閃のように脳裏に浮かびがった。 タヒチ・ボラボラ島への婚旅の程表だ。 「先、当たりがあります。ハネムーンの予約配です。旅代理へ確認を取ってみます」

オンライン面談を終えた私は、すぐに国際話で本の旅代理『J-トラベル』の予約センターへダイヤルした。 保留音が数分流れた、落ち着いた女性オペレーターがた。 「お話ありがとうございます。J-トラベル予約デスクでございます」 「お世話になります。そちらで配していただいているタヒチ旅の予約確認と、キャンセルの続きをお願いしたいのですが。予約番号は、TH-〇です」

「かしこまりました。照会いたしますので々お待ちください……はい、確認取れました。黒田瞬様のアカウントからのご予約ですね。ご本様確認のため、ご登録されているご同伴者様のお名をフルネームでお願いいたします」 「川由です」

私が即座に答えると、受話器の向こうでオペレーターのタイピング音がピタリと止まった。 自然な沈黙が数秒続いた、困惑を含んだ声が返ってきた。 「……失礼ですが、もう度よろしいでしょうか? 当システムの基本会員報に登録されております、配偶者様のお名とお話番号をお願いできますでしょうか」

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「え……? 私、婚約者の川由ですが、致しませんか?」

「申し訳ございません。当フライトの搭乗者名簿には確かに『川由様』のお名が登録されているのですが……黒田瞬様の会員メインプロファイルに登録されている配偶者様のお名と、致いたしません」 私の背筋に、たい氷の刃が突きてられた。 搭乗者の名は私なのに、アカウントに登録された配偶者の名が違う? 私は乾いた唇を震わせ、胸の奥底に巣っていた最悪の予をにした。

「……その登録されているお名は、野織(みずの・かおり)様ではありませんか?」

オペレーターが息を呑む気配がした。 「……お客様の方からお名を仰っていただきましたのでお答えいたしますが、様でございます。野織様のお名で登録されております。……こちらのアカウントは、に設されたものでして、今回のタヒチ旅の配履歴も、に作成された『お気に入りプラン』からそのまま復元されております」

血の気が引くと同に、あまりの悍ましさに吐き気が込みげた。 黒田瞬は、私との婚旅のためにしくアカウントを作ることすらしていなかったのだ。 に織とくはずだった旅の予約画面をそのままき、保されていたホテルとフライトをそのまま流用し、発の直になって搭乗者の名義だけを織から私へときしただけだった。

私は、旅代理のシステムにまで、元婚約者の「代替品」として刻み込まれていたのだ。

「オペレーター様、お願いがございます」 私は湧きがるりを鋼の志で抑え込み、徹に告げた。 「その予約がに作成されたプランの流用であること、ならびに配偶者登録の履歴を示す画面を、公式の証類として私のメールアドレス宛てに送付していただけないでしょうか。婚約破棄に伴う法続きのため、搭乗者本としての正当な示請求です」

分、私のスマートフォンに届いたPDFファイルには、黒田瞬の執着と欺瞞の全貌が、かぬデジタルデータとしてのに刻まれていた。

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