"花嫁のいない結婚式" 第15話
親友・匠の告発
内容証郵便が会社に届いたそのの午、瞬の職は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。 法務部からの問いわせが企画発部の元へ入り、瞬は部へと直ちに呼びされたのだ。 結婚式という極めて私なトラブルにおいて、式の額キャンセル料を巡る法紛争を勤務先のオフィスへ送り付けられたこと自体、ホテルチェーンの管理職候補として致命な失態だった。
「黒田君、これはどういうことだね?」 厳格な部が机のに内容証の写しを放り投げた。 「君は先週、『婦が勝にキャリアを選んでへ逃げた』と全社に言いふらしていたな? だがこの通を見る限り、君が元婚約者と密会し、結婚準備においてな背信為を働いたことが原因だとかれているぞ。しかも、相の代理はあの百法律事務所だ。事実無根でこんな類を会社宛てに送るはずがない」 「ち、違います部! これは彼女の狂言で……!」 「事実確認が取れるまで、君のの昇事案は完全に凍結とする。社内のコンプライアンス委員会にも報告をげさせてもらうから、そのつもりでいなさい」
部をた瞬の取りは、刑台からりてきた罪のようにふらついていた。 フロアの同僚や輩たちが、巻きにややかな線を投げかけてくる。
広告
『おい、聞いたか? 黒田さん、元カノの代わりに今の彼女を使ってたらしいぞ』 『うわ、最……。それで自分は被害者面して悪言ってたの?』 ささやき声が、針のように瞬のプライドを突き刺した。
そのの夜、耐えかねた瞬は、親友である森本匠を都内の居酒へと呼びした。 「匠……頼む! おから由に連絡を取ってくれないか!? あいつ、弁護士なんかてて俺を破滅させる気なんだ! おもあの夜、俺と緒にいただろ? あれはただの男同士の冗談だったって、由に証言してくれ!」
テーブル越しにすがりつく瞬を、匠はたい、射殺すような目で見つめていた。 ビールジョッキにを伸ばすこともせず、匠は静かにをいた。 「……瞬。お、本当にどこまで腐ってるんだ?」 「え……?」
「俺はな、由ちゃんから全部聞いたよ。おが会社や学の友達に『由が仕事のために俺を捨てて逃げた』って嘘を言いふらしてたことも、全部な」 匠の拳が、テーブルのでギリギリと音をてて握りしめられた。 「由ちゃんはな、おとの結婚のために、オオトモフーズのシンガポール赴任っていうのを、ヶに度泣く泣く断ってたんだぞ」
「な……んだって……?」瞬の目が点になった。
「由ちゃんはおのために自分のを犠牲にして、おの体調を配して、あの夜も雑炊を作ってってきてくれたんだ。
広告
その彼女の真を、おは『ただの代わり』と呼び捨てにして、織と秤にかけたんだよ。……そんなを、誰が庇うとうんだ?」
「で、でも……! 織が帰国したのは本当なんだ! 織だって俺のことを――」
「目を覚ませ、この馬鹿野郎!!」
匠の号が居酒の個に轟いた。 「織が帰国したのはな、親父さんの末期癌の治療と介護のためだ! 俺の嫁が織の従姉妹と繋がりがあって、先週全部聞いたんだよ! 織はおのことなんかミリも未練なんてない! 昔預けてた荷物を引き取る事務連絡でおに会っただけなのに、おがで『復縁できるかも』っていがって、勝に由ちゃんを秤にかけてただけだろうが!」
瞬の顔が、から青、そして気へと変していった。 彼がすがっていた最の蜘蛛の糸――「俺にはまだ織がいる」という甘い妄すら、彼自の都のいい脳内補正がみしたに過ぎなかったのだ。
「もう度と俺に連絡してくるな。おみたいな奴を親友だとってた自分が恥ずかしい」 匠は千円札を数枚テーブルに叩きつけると、席をち、度も振り返ることなくっていった。 居酒の片隅に、世界の誰からも見放された男が、きりで取り残された。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」
交通事故で車いす生活となった恋人・明菜と、もう一度穏やかな日常を取り戻そうとしていた聡。明菜の誕生日、二人は思い出のフレンチレストランを訪れる。しかし待っていたのは、食事時間の一方的な短縮と、三万三千円もの「迷惑料」だった。因果応報|人生逆転|真相|修羅場2.8万字5 94 -
完結第10話
すり替えた味噌汁
検事任官の最終面接を迎えた朝、神田玲奈は義母が自分の味噌汁に何かを混ぜる姿を目撃する。夫にも相談できないまま、玲奈は不審な味噌汁を密かに保管し、何食わぬ顔で食卓に戻った。同じ日、義妹の彩佳も三度目の教員採用試験に挑もうとしていた。玲奈が彩佳と味噌汁の椀を交換した瞬間、義母は血相を変えて叫び出す。嫁姑|第二の人生|金銭問題1.4万字5 9 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 104 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 68 -
完結第23話
孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由
七十二歳の幸子は、亡き夫と建てた家で息子夫婦と孫の蓮斗と暮らしていた。学費も生活費も援助し、家事まで引き受けてきたのに、いつしか家族から「居候」のように扱われるようになる。ある夜、孫に胸ぐらをつかまれても、息子は助けてくれなかった。翌朝、幸子は弁当も朝食も作らず、黙って家を出る。しかし家族はまだ知らなかった。人生逆転|祖父母と孫|第二の人生|ATM扱い|絶縁3.1万字5 129 -
完結第18話
誤爆LINEの夜
結婚六年目。妻の明子に勧められ、出張前夜をホテルで過ごすことにした直人。ところがチェックイン直後、妻から「今日旦那いないから、いつもみたいにイチャイチャしよ♡」というLINEが届く。慌てて削除されたメッセージに不信感を抱いた直人は、何も知らないふりをして自宅へ戻る。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫2.0万字5 112 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 43