みかん小説
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"花嫁のいない結婚式" 第19話

京のカフェでの再会

あれから半のが流れた。 〇、うららかなのがり注ぐ京・丸の内。

私は、シンガポール支社での規事業ちげの成功を受け、アジア統括マネージャーとして、京本社での全社戦略会議に席するために帰国していた。 ショートボブに切り揃えた髪、仕ての良いベージュのパンツスーツにを包んだ私の姿には、かつて誰かの顔を伺ってい髪を揺らしていた面はどこにもなかった。 会議でのプレゼンテーションは成功を収め、役員たちからも満致の賞賛を受けた。

そのの午、私は町の層ビルの階にある、井のいオープンカフェのテラス席に座っていた。 アイスティーのグラスを傾けていると、約束の分、くから混みを掻き分けるようにして歩いてくるの男の姿が目に入った。 黒田瞬だった。

かつてにつけていた仕てのいい級ブランドのスーツはなく、量販で買ったようなし着古したジャケットを着ていた。 肩は丸まり、頬は痩せこけ、目のには消えない疲労の隈が刻まれている。 半、あれほど傲に輝いていた男のメッキは完全に剥ぎ取られ、そこにはただの、活に追われたれな代の男がっていた。

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「……由」 掠れた声で私の名を呼ぶ瞬に、私は静かに線を向け、向かいの席をで示した。 「久しぶりね、黒田さん。座って」 「……ああ」

瞬はおずおずと子を引き、縮こまるように腰をろした。 運ばれてきたアイスコーヒーにをつけることもせず、彼は両を膝のでく握りしめた。 「由……急に呼びしてすまなかった。匠を通じて、君が京に張に来てるって聞いて……どうしても、度だけでいいから、直接会って謝りたかったんだ」

「ええ。聞くわ」 私の声には、りも、みも、何の波もっていなかった。ただの、取引先の担当者と話すような平坦なトーンだった。それが逆に、瞬の胸を締め付けたようだった。

「……あのは、本当に最だった」瞬はくを垂れた。 「匠のせいにしたり、織のせいにしたりして、自分を守ることばかり考えていた。百万のローンを毎毎、料から引き落とされるたびに……俺がどれだけ取り返しのつかないことをしたか、骨の髄までいらされたよ。俺は……織のばかりを追って、由というそのものを度も見ていなかった。君が俺のためにどれだけのものを捨ててくれていたのかも、気づこうとしなかった。……本当に、すまなかった」

瞬はテーブルに額がつきそうなほどくをげ、肩を震わせた。 その謝罪に、嘘はなかった。

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半という孤独と貧困、そして周囲からの軽蔑の線に晒され続けたことで、彼はようやく、自らの愚かさという獄の底に辿り着いたのだ。

私は静かにグラスを置き、彼を見つめた。 「謝罪は、受け取るわ」 瞬がパッと顔をげた。その瞳に、かすかな、しいほどの期待のが宿ったのを、私は見逃さなかった。 『許してもらえたなら、もしかしたら……』という、男の浅ましい甘え。 私は、その最の甘えを、美しく、徹に切り落とした。

「でも、あなたの元に戻ることは、がひっくり返ってもあり得ないわ」

瞬の息が止まった。

「もし私があなたを許して戻ったとしても、私は、疑い続けることになるわ。『今、このは私を見ているのか、それとも過の誰かをねているのか』ってね。夫の顔を伺いながら、自分が誰かの代用品じゃないかと怯えて暮らすなんて、真っ平ごめんよ」

私はちがり、バッグを肩にかけた。 「私はね、黒田さん。誰かの代わりを務めるためにまれてきたんじゃないの。川由という、私自のをきるためにここにいるのよ」

瞬は言葉を失い、ただ虚ろな目で私を見げるしかなかった。 彼が自らので作りした「理の妻という空席」には、もう度と誰も座ることはない。 彼は、そのたい空席と、自らの犯した罪を抱きしめてきていくのだ。

「さようなら、黒田さん。お元気で」

私は背を向け、の柔らかなが満ちる丸の内の並へと、力く歩みした。 度も、振り返ることはなかった。

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