みかん小説
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"箱詰めされた母の人生" 第18話

「お帰り」「ただいま」

仕事帰り、私は母の部へち寄った。

鍵は持っていない。

母が「勝に入れる鍵はもう誰にも渡さない」と決めたからだ。

私はそれでいいとっている。

チャイムを鳴らす。

しばらくして、母がドアをけた。

「いらっしゃい」

「ただいま……じゃないか」

「どっちでもいいじゃない」

母は笑った。

靴を脱いでへ入る。

さな部。

父の写真。

ベランダの鉢植え。

器棚には柄のカップ。

テレビの横には、母が友とかけた旅先の写真がしく増えている。

実にあったものだけで埋められた部ではない。

母が今をきて増やしたものが、しずつ並んでいる。

私はその景が好きだった。

「今ね」

母が台所から言った。

「圭子さんと偶然駅で会ったの」

私はし驚いた。

「話した?」

「挨拶だけ」

「何か言われなかった?」

「言われたわよ。元気そうですねって」

「それだけ?」

「それだけ」

母は噌汁をよそった。

「だから私も『お元気で』って言った」

私は母の横顔を見た。

以なら、相の顔を読み、謝らなくてもいいことまで謝っていただ。

今は必な分だけ言葉を交わし、そこから先へ入れない。

それでいい。

卓へ分の夕が並んだ。

「そういえば」

母が箸を置く。

「今、所のから変な話を聞いたのよ」

私は瞬だけ体が固くなった。

母がいたずらっぽく笑った。

「だから、ちゃんと本に話して直接聞いた」

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私はわず笑った。

「完璧じゃん」

「かけて学習したからね」

「私も気をつける」

「あなたもよ。誰かが『お母さんはこう言ってた』って言ったら?」

「お母さんに聞く」

「そう」

母は満そうに頷いた。

あの、輔は母を「処理した」といた。

借を消すために、母の暮らしをかし、を売り、へ変える。

自分にとって都の悪いを、つの問題のように片づけようとした。

でも、は処理するものではない。

母には母の考えがあり、暮らしがあり、過があり、これから使うがある。

を売るのか。

どこへむのか。

誰におを渡すのか。

誰と付きうのか。

そのすべてを決める権利は、母自にあった。

そして私にも、自分のを誰と歩くか決める権利があった。

私たちが最に取り戻したのは、古い実でも、売却代でもない。

の言葉を通さず、互いの顔を見て話せる関係だった。

夕を終え、帰ろうと玄関へ向かった、母が背から声をかけた。

「歩美」

「何?」

「今度は泊まっていけば?」

私はし考えた。

は休だった。

「じゃあ、泊まろうかな」

「布団すわね」

「自分ですよ」

「じゃあ緒に」

で笑った。

。

私は「処理した」という文字を見て、母の実へ必にをらせた。

玄関をけた先にいたのは、娘に嫌われたとい込み、自分のを箱へ詰めていた母だった。

今は違う。

自分で選んだ部で、自分のおを自分のために使い、自分ので「嫌だ」と言える母がいる。

私は買ってきた果物を蔵庫へ入れ、居へ戻った。

母が何気なく言った。

「お帰り」

私は瞬だけち止まり、それから笑った。

「ただいま」

そのつの言葉のには、もう誰も入ることができなかった。

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