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"「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝" 第17話

崩落したと、赤の貼られた扉

裁判所からの却通が届いた、横浜のはたいに打たれていた。 は、乱雑に類が散乱する事務所のデスクで、通を握りしめたまま、魂の抜けたような顔で井を見げていた。 「……却……? そんな……嘘だろ……」 元から滑り落ちた類が、のたまりに落ちてに汚れた。

「どうすんのよ、あなたッ!!」 事務所の奥から、髪を振り乱した麗子が鳴り込んできた。 化粧は剥げ落ち、その顔には狂気じみた焦燥が張り付いていた。 「来週よ! の融資の返済期は来週なのよ! あのを担保に入れられなきゃ、私たち、本当に破産するのよ!?」 はを抱え、獣のような呻き声をげた。 すべてが終わったのだ。 父親の判断能力を奪ってを売りばすという最の博打が潰えた今、残されたはつしかなかった。

その翌週、の経営する内装事会社は、度目の渡りをして取引止処分を受け、事実の倒産に追い込まれた。 負債総額は、億千万円。 連、事務所には号をげる請け業者や債権者が押し寄せ、ガラス戸を叩き割られた。 と麗子は夜逃げ同然に事務所を捨て、横浜の自宅にてこもったが、そこにも容赦のない現実が押し寄せた。

の初め。 かつて源次郎とふみ子が慈しみ、庭のをで、縁側でお茶をんだあの造の。

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その扉に、方裁判所の執官によって、無にも『産競売始決定』を告げるい公示が貼り付けられた。 宅ローンの抵当権を使され、は競売にかけられることが確定したのだ。

「ていってください。期までに退されないは、制執となります」 執官の徹な宣告に、麗子はそのに崩れ落ちて号泣した。 「嫌……嫌よ! ここを追いされたら、私、どこへけばいいのよ!?」 はに濡れる扉にすがりつき、額を打ち付けて咽び泣いた。 父親を追いし、母親の形見をゴミ箱に捨ててまでに入れたはずのが。 そのは、自らの傲と欲によって、砂ののように音をてて崩壊したのだ。

は着の着のままを追いされ、横浜のれの造アパートの畳半に転がり込んだ。 は雇いの解体作業員として、まみれになっていコンクリートガラを運ぶ々が始まった。歳の鈍った体には、ツルハシを振るう労働は骨に沁みた。 当の数千円を握りしめ、酒のパックを煽る夜、の脳裏には、いつもあの信州の奥の景が浮かんでいた。

囲炉裏の傍らで、静かに炭を熾していた老父の背。 『おたちに渡す言葉は、何もない』 あの静かな言葉が、呪鐘のようにの奥で反響し続けた。

自分は体、何を失ったのか。 か、か、それとも――度と取り戻すことのできない、親子の魂の絆だったのか。 暗いアパートの井を見つめながら、の目から流れる涙を拭ってくれる者は、もう誰もいなかった。

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