"一等くじの切れ目" 第2話
福引会から戻った子を待っていたのは、祝いではなく族の沈黙だった。夕方になっても洗濯は届かず、美津は畳の台所で、めた根を刻んでいた。正彦は歳で、普段なら何でも母をかばうのに、そのだけはを尖らせた。「みんな当たったってってるのに、どうして持ってこなかったんだよ」。修は所の子に等の話をしてしまい、何度も玄関をけて配達を待っていた。
夫の栄は夕刻、荷役の仕事から帰った。戦から倉庫で働き続けた男で、に肩を痛めて以来、い荷を持つは腕に布を巻いている。子から顛末を聞いた栄は飯碗を置き、「ただでに入る物を疑ってどうする」と言った。だが子が半形の切れ目を説すると、彼は眉をひそめた。「それが何だ。印刷が切り損ねただけかもしれん」。
「そうかもしれないよ。だから確かめたいの」
「確かめてから受け取ればよかった。子供らので騒ぐことはなかったろう」
正彦が「もういい」と言って席をった。族の願いを自分が踏みつけたのだと分かっていた。子は何も言い返せず、流しの脇に置いた濡れた布巾を絞った。から美津は赤く腫れた首を隠しており、朝の洗濯を伝わせまいとっても、分の類をでは洗い切れない。
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もしあの洗濯があれば、と考えない瞬はなかった。
翌朝、商へくと、等の洗濯には『当選者確認』というが貼られていた。川器のには、さっそく悪い噂がっていた。「田の奥さんが、景品をつくれとごねたんだって」。子の古参客は子を見るとを閉じ、百の女主も妙に気を遣った笑みを浮かべた。誰かが、事をしずつ違う話にしている。
松葉堂の主、藤崎久蔵を訪ねると、坪ほどのの奥は帳簿と包装のだった。主は真の名を聞くなり、「倉田なら昨から姿が見えん」と言った。子が福引の切れ目を見せると、久蔵の線がわずかにいた。「を折れば、角が欠けることもある。こんなもので騒いだらが困る」。いつも娘に鉛をおまけしてくれた老の声が、見らぬもののように固かった。
をる際、入のガラスにさな張りが見えた。『臨伝い求む』。真はも働いてきたはずだ。それなのにたった晩で、代わりを募集するほど簡単にいなくなったことにされていた。
夕飯のあと、久枝が洗濯板を抱えてきて、母の横に座った。「これ、今度から私が使うね」。子が「学の勉を先にしなさい」と言うと、娘はむっとした。「お母さんが洗濯しすぎるから、洗濯が欲しかったんでしょう」
。その通りなのに、子は返す言葉が見つからなかった。が善で差ししたを、いつも「まだ子供だから」とざけてきたのではないか。台所の隅のたらいが、急にきく見えた。夜、子は眠っている娘のを確かめ、まだ柔らかい指をそっと布団へ戻した。
そのの午、子のへ商会の使いが来た。差しされたのは、洗濯を正式に受け取るための類だった。品物は無料、配達料も。だが受領の欄のには、さな字で『福引運営について異議を申してない』と印刷されていた。子は類を折らずに返した。「景品を受け取ることと、調べるなという約束が、どうして緒なのですか」。使いの男は困った顔でち尽くした。
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