"一等くじの切れ目" 第7話
岩崎周平のは、商の央にあるきな呉だった。子が訪ねると、奥座敷へ通され、鉢のに座らされた。岩崎は半ばで、町内会の祭りもの舗装も取りまとめてきた物だった。子の父がくなったにも、商から典をしてくれた。その世話になった記憶が、いまはかえって胸にかった。
「奥さんの気持ちは分かる。暮れの忙しいに嫌なことになった」
岩崎は最初から困り顔だった。「洗濯は引き渡しましょう。その代わり、当の抽選方法についてで話すのはやめていただきたい」。子は元の湯呑みを見たまま尋ねた。「洗濯は度返す約束だったそうですね」。岩崎のきが止まった。「誰がそんな話を」。子は答えない。話した者をかせば、そのが先に傷つけられると分かっていた。
会はため息をついた。「りいに広告へ協力してもらう話はあった。しかし、まだ決まったことではない」。子が特別なくじのことを言うと、岩崎は首を振った。「宣伝用の見本をいくつか作っただけだ。それを本番へ紛れ込ませたのは誰だ」。その問いに子は答えられなかった。娘の名をせば、美津が窃盗や業務妨害の責任まで負わされるかもしれない。
「商会で使ったの帳面を見せてください」
「何の権利があって?」
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「毎ここで買い物をして、福引券をもらってきました。それに、私が等を引いたんです」
岩崎は初めて顔をくした。「商売というものは、帳面のだけで分かることじゃない」。そして子のを見た。荒れて、指先が赤く裂けている。「奥さん、の仕事が変でしょう。洗濯はお渡しします。せっかくの運を、これ以汚さない方がいい」。子は、自分の活のつらさまで止めの理由に使われたようにじた。
をると、通りの向かいでさな騒ぎが起きていた。久蔵が松葉堂の戸をけ、真の作業着をまとめてへしていた。が仕事へ戻るには、盗んだとされるのことを片づけなければならないらしい。子は荷役へ戻る途の栄と鉢わせた。夫は岩崎のからた妻を見ると、うつむいて言った。「朝、雇い主からの荷役は別のに頼むと言われた」。やはり言葉が活に返ってきたのだった。
岩崎のをる、子は奥座敷の障子に貼られた古い商の写真を見つけた。戦争のあと、焼けかけた通りで主たちが並んで写っている。そこには若い岩崎も、くなった子の父もいた。通りをて直したたちのに、父が確かにいた。子は瞬、会を責める自分が父との付きいまで裏切るようにじた。だが写真の隅には『お客さんとともに』と墨でかれていた。
客を騙してを守るのでは、あのみんなで守ろうとしたものが消えてしまう。
晩飯を作る気力もなく、子は豆腐を買って帰った。の女主・たねは袋を渡しながら、「が始めたことを、若い子に押しつけるような真似だけはやめてほしいね」と呟いた。子は顔をげた。たねは線をさず、「真がのを盗んだって話、おかしいとわないかい。あの子、勘定を違えるたび必ず自分の帳面につけてた」と続けた。子は初めて、を守ろうとするが町にはいるとった。
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