"一等くじの切れ目" 第11話
戸をけたのは栄だった。妻と娘がいないことをって町を捜し歩き、たねから作業の所を聞いたのだという。肩に巻いた布がずれ、顔には仕事帰りの疲れが残っていた。栄は机の封筒を見てちすくんだ。「今度は何のだ」。子が事を説すると、夫は真の胸元へ伸ばしかけたを引っ込め、く息を吐いた。「おたちは、これを持ってどこへくつもりだったんだ」
「、久蔵さんへ返しにくんだよ。片桐さんにもち会ってもらう」
栄は妻を見た。「たった千円で、皆がこんな目に遭うのか」。その言葉に、真が初めて声をげた。「千円じゃないんです。僕はずっと働いてきたを盗んで逃げただと言われてる」。夫はの顔を見て、しばらく黙った。自分が仕事を減らされた苦しさで、目ののに何が起きたのかを考えなくなっていたのだろう。
帰宅、栄は居で聞を広げたが、も読まなかった。子が娘のしたことをすべて話すと、夫は美津を呼んだ。美津は父のに座り、「叱られることは分かってる」と言った。栄は鳴らなかった。「おが当たりを仕込んだとれたら、お母さんは何を言われるか分かるか」。娘がうなずくと、「なら、なぜ自分で言いさなかった」と聞いた。美津の答えは簡単だった。
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「お母さんが、嬉しそうだったから」
栄は掌で顔を覆った。の者がどれほど洗濯を欲しがっていたか、彼もっていた。の暮れには妻へ「来こそ買う」と言ったが、肩のけがで仕事が減り、約束は守れなかった。「俺が買えなかったから、おが代わりに当てようとしたのか」。美津は黙った。栄はその沈黙を聞いてから、「父ちゃんの代わりなんかするな」と言った。言いながら、自分の声が震えていることに気づいた。
翌朝、子と栄は片桐を伴って松葉堂へった。の奥で千円を封筒ごと机に置き、真が受け取った経緯を説した。久蔵は封筒をき、枚ずつ数えた。それから真を見た。「どうして俺に言わなかった」。は俯いたまま、「言ったら、会さんの話を信じるとったからです」と答えた。久蔵は反論しなかった。の居所を探す代わりに、盗んだという噂をそのまま放っておいた自分を、い返していた。
久蔵のの柱には、真の背丈を測った古い鉛の線が残っていた。に来た最初の、久蔵が冗談で測ったものだという。毎しずつくなり、今の線だけまだ引かれていない。子はその跡を見て、がから追いされたことを単なる雇いの退職とはえなくなった。久蔵も同じことを考えていたのか、帰り際に「になったらまた背を測ってやるつもりだった」
とさく言った。が自分の都でにした噂は、子供が積みげてきたまで簡単に汚してしまう。
そので片桐は、久蔵に封筒のを受け取った付と額をいてもらい、真にも同じ内容を確かめさせた。さな証文だったが、は何度も読み返した。だけで「返した」と言えば、また違う話にされてしまうかもしれない。
しかしが戻ったからといって、真の嫌疑がすぐれたわけではない。久蔵は「会にも確認する」と言い、戻ってくるまではへ入れないと伝えた。真は黙ってうなずいた。子はに付き添い、のへた。末の買い物客がいつもと同じ顔でき交うなか、何かを元通りにするには、つを返すだけではりないのだとった。
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