"機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体" 第10話
の彼方へ
静まり返った空港のVIPロビー。
散乱した類と偽造されたエコー写真の残骸ので、託はただ、に膝をついて震えていた。
「母さん……寄舟……」
託はうようにして、寄舟の元へを伸ばした。
「悪かった……俺が全部悪かった! あいつらに騙されていたんだ! 寄舟、頼むからやり直してくれ! 俺のためにあんなに尽くしてくれていたんだろ!? 俺をしているって言ってくれたじゃないか! Apex社との契約を結んでくれ、そうじゃないと俺は破産してしまうんだ!」
寄舟は歩がり、そのをややかに見ろした。
「託さん。川で私を助けてくれたあの、あなたが見せてくれた優しさに、私は、全全霊で報いてきました。でも、あなたが私を裏切り、あの女に私の腕輪を奪わせた、その恩義は完全に消えりました。……私たちはもう、赤のです」
寄舟は背を向け、切の迷いなく歩きした。
「寄舟! かないでくれ! 母さん、母さんからも言ってください! 俺はあなたの唯の息子なんですよ!」
託が玉のスカートの裾を掴もうとした。
玉は徹な線で見ろし、そのを容赦なく払いのけた。
「託。本付で、あなたをメトロ航空社から解任します。氏グループの全役職を剥奪し、親子の縁を切ります。あなたがグループから横領した資、および私活で流用した交際費については、顧問弁護士を通じて全額請求します」
広告
「か、母さん……! 俺を無文で追いす気ですか!? に迷ってしまう!」
「自分で蒔いた種よ。の痛みに寄り添えず、勝な欲望で恩を踏みにじるに、を束ねる資格などないわ。……自らので、獄をいずり回りなさい」
玉は度も振り返ることなく、寄舟の隣へと歩み寄った。
「寄舟。きましょう」
「はい、お母様」
の女性は並んで歩きした。その背筋はどこまでも真っ直ぐに伸び、周囲の警備員や空港職員たちが斉にをあけ、最敬礼で見送る。
背から聞こえる、託の惨めな号泣と懇願の声は、な自ドアの向こうへと完全に遮断された。
数。
メトロシティの部にそびえつ、氏グループ本社ビルの最階。
広な役員応接のガラス窓からは、どこまでも青く広がるの空と、く発着を繰り返す旅客のい軌跡が見渡せた。
テーブルのには、真しい提携協定が置かれていた。
『氏グループ・Apex社 包括資本業務提携契約』
署名欄には、玉と、クレア・ベネットこと寄舟の名が、力い致で並んでいた。
「寄舟。あの子と婚した以、あなたはもうの嫁ではないけれど……私の娘として、グループを背負ってくれるわね?」
玉が微笑みながら、温かい茶のカップを差しした。
寄舟は目元をらげ、く礼した。
「はい、お母様。お母様が命懸けで守り抜いてこられたこのグループを、今度は私が守り、さらにきく育ててみせます」
が掲げたティーカップが、カランと清らかな音をててなりった。
窓のでは、の型ジェット旅客が、を突き抜けて輝く太陽ののへと力く昇していく。
欺瞞と裏切りの嵐を乗り越え、真実の絆で結ばれたの女王のに、果てしなく広がる輝かしい未来の航が、今まさにかれていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 0 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 7 -
完結第20話
玄関のピンクのウサギ
六十歳の元教師・田島美香は、息子夫婦を助けるため、三年間にわたり孫の世話をしてきた。久しぶりに夫を驚かせようと自宅へ戻ると、玄関の暗証番号が変わり、見知らぬピンクのスリッパが置かれていた。台所から現れたのは、夫と二年近く暮らしていたという女性。さらに調べるうち、夫婦の貯金から消えた百五十万円、売られていた母の形見、そして自宅をめぐる恐ろしい計画が明らかになる。夫婦|裡の顔|第二の人生|修羅場2.8万字5 0 -
完結第13話
濁流の中のSOS
夫と十三歳の娘・凛と買い物へ出かけた私。ところが夫は突然、増水した川へ車を走らせ、帰ろうとした私たちを激流へ突き落とした。必死にもがく私の手をつかみ、「お母さん、もがかないで!」と叫んだ凛。その言葉に従い、二人は奇跡的に生き延びる。だが、夫は救助もせず姿を消していた。裡切られた|夫婦|裡の顔|真相|親子関係1.9万字5 39 -
完結第20話
「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝
妻を亡くした七十五歳の佐伯源次郎は、一人息子の「一緒に暮らそう」という言葉を信じ、長年守ってきた自宅の名義を譲った。しかし、待っていたのは冷たい仕打ちと老人ホームへの入居命令だった。すべてを失った源次郎が向かったのは、亡き妻が幼い頃から愛した信州の山奥。荒れ果てた古民家を直し、畑を耕し、村人たちと心を通わせる日々の中で、妻が遺した「甘い水」に思いがけない価値が見つかる。相続|親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.9万字5 68 -
完結第18話
箱詰めされた母の人生
義母のスマートフォンに届いた、夫・大輔からの一通のメッセージ。「歩美の母親のことは俺がうまく処理したよ(笑)」。不安に駆られた歩美が実家へ駆けつけると、母の幸子は一人で荷物を段ボールに詰めていた。しかも母は、娘に迷惑がられていると信じ込み、高齢者向け住宅への入居と自宅の売却を進めていたのだ。そんなことは一度も言っていない。夫はなぜ、母と娘の間に嘘を重ねたのか。書類に残された「1500万円」という数字から、九年間信じてきた夫の恐ろしい計画が明らかになっていく。裡切られた|怒り|嫁姑|絶縁2.2万字5 91