"玄関のピンクのウサギ" 第2話
分の活
ホテルに入っても、私はすぐには眠れなかった。のに浮かぶのは夫と綾乃の顔より、のに増えていたさな活の跡だった。蔵庫の扉に貼られた見らぬスーパーのポイントカード、洗面所の本の歯ブラシ、棚のの価そうな保湿クリーム、私が買った覚えのないりの柔剤。は言葉ではいくらでも嘘をつける。でも、毎の暮らしは嘘をつけない。
私は、川町で息子夫婦の事を助けながら、に万円も自分のために使わなかった。は退職のものを着回し、化粧品は娘もいないのに嫁の裕子がくれたおがりで済ませた。孫がをせば夜でも抱いて歩き、息子夫婦が休勤なら朝から晩まで事を作った。それでも満はなかった。族が困っているに支えるのは、私にとって当たりだったからだ。
だからこそ、夫がシルクのパジャマを着ていたことが妙に引っかかった。信之は昔から自分のにを使うのを嫌い、千円いだけで「もったいない」と言うだった。結婚記に私がしいシャツを勧めても、まだ着られると断った。そのが沢のあるそうなパジャマを着て、別の女が台所につで平然と暮らしていた。
翌朝、私はアプリをいた。夫婦の活費は別々の座からしていたが、信之の座は、老資の管理のため互いに確認できるようにしていた。
広告
以はに数回しかきのなかった座に、見慣れない振込先が並んでいる。綾乃。毎万円。か連続。計万円だった。
さらにスーパー、レストラン、料品、スマートフォンショップ、アクセサリー。以の夫なら絶対に使わなかった額が、しずつ、しかし途切れることなくていっている。私は件ずつスクリーンショットを保した。りに任せて話をかけるより、まず事実を集める。教師代、問題が起きたに何度も自分に言い聞かせてきた癖だった。
午、私はへ戻った。信之は晩で歳老けたような顔をしていた。綾乃の姿はなかった。テーブルのには結婚証に関する類、宅ローンの古い細、権利の写しが積まれている。私は席につき、まず夫のにスマートフォンを置いた。
「綾乃さんへの送。かで万円。これは何?」
「買い物を頼んだり、費をて替えてもらったり――」
「毎同じに万円きっちり?」
信之は黙った。私は次に、カード履歴をいた。のネックレス万千円、女性用バッグ万千円、スマートフォン万千円。夫は「プレゼントじゃない」「頼まれて買っただけ」と言い続けたが、説はつも噛みわなかった。
「昨、さんは“”と言ったわね。階の部にんでいたはずなのに、どうして毎ここにいるの?」
広告
「じゃ変だから、事を作ってもらってただけだ」
「それで暗証番号まで変えたの?」
「防犯だ」
「じゃあ、私にらせなかった理由は?」
そこでも夫は答えられなかった。私は胸の奥で何かがえていくのをじた。しいというより、い信じていたが、自分の像よりずっとさな嘘を積みげるだったことへの失望だった。
「信之。私は、あなたの孫を見ていた。あなたが寂しいと言うから、毎できるだけ話した。忙しくても、夕のだけは顔を見せようとってた。あなたはその話の、さんをどこに隠してたの?」
夫が線を落とした瞬、答えはもう聞く必がなかった。
私は類のから宅ローンの返済記録を抜きした。このを買ったのは〇〇。続きの都で権利は信之名義になっているが、の半をしたのは私で、返済も、私の与座から引き落とされていた。夫は当「あとで名義をえればいい」と笑っていた。私はその言葉を信じたまま、を過ごしていた。
「美、婚なんてげさだ。さんとは本当にただ支えっていただけだ」
「そう」
私は権利を閉じた。
「じゃあ、支えった分を全部見せてもらう。おも、物も、こので何が起きていたかも。私がらないまま終わらせるつもりはないわ」
そのの午、私はの弁護士に話をかけた。教師代の元教え子が紹介してくれた、事事件をく扱う松本弁護士だった。
そして相談の予約を取る直、細のさらに古いページに、私は見覚えのないきな数字を見つけた。
〇万円。
振込先は――綾乃ではなく、その息子の名だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 6 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 8 -
完結第10話
機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体
新氏グループの会長・玉金は、息子への株式譲渡を決意し、予定を早めて帰国する。ところが機内で、息子の婚約者を名乗る若い女に席を譲れと迫られ、頬を叩かれてしまう。しかも女の腕には、かつて玉金が息子の正妻・寄舟に贈った家宝の翡翠があった。息子に電話をかけても、返ってきたのは母を侮辱する言葉ばかり。怒りを抑えて空港に降り立った玉金を待っていたのは、愛人が用意した警備員たちだった。しかし、そこへ現れた寄舟の一言が事態を一変させる。裡切られた|嫁姑|第二の人生|親子関係|修羅場1.4万字5 65 -
完結第13話
濁流の中のSOS
夫と十三歳の娘・凛と買い物へ出かけた私。ところが夫は突然、増水した川へ車を走らせ、帰ろうとした私たちを激流へ突き落とした。必死にもがく私の手をつかみ、「お母さん、もがかないで!」と叫んだ凛。その言葉に従い、二人は奇跡的に生き延びる。だが、夫は救助もせず姿を消していた。裡切られた|夫婦|裡の顔|真相|親子関係1.9万字5 50 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1537 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 444