"玄関のピンクのウサギ" 第14話
冊の緑の帳
婚の続きは、ドラマのようにで決着するものではなかった。資料を揃え、相方の主張を確認し、財産について話しい、それでも折りわない部分をしずつ理する。私は何度も松本弁護士の事務所へ通い、そのたびにの暮らしが数字や類に変わっていくのを見た。
宅については、私の返済負担を示す与座の記録、の所、税や修繕費の支払いなどをまとめた。信之側も名義であることを主張したが、最終にはを私が取得する方向で話がまとまっていった。その代わり、の預貯や部の財産について調する。私はだけを何としても欲しかったわけではない。けれど、の与を注ぎ、母の遺品や息子の写真を置き、老を過ごすつもりで守ってきた所を、らない女との活の台にされたまま放したくなかった。
綾乃への支についても、すべてがそのまま返ってくるわけではないと説された。それでも、無断で処分された母の腕輪、雄への〇万円、の贈与計画など、な部分は話しいの材料になった。私は「円残らず取り返したい」とは言わなかった。
「取れるものを取るというより、勝に使っても何も起きないとわせたくないんです」
広告
そう言うと、松本弁護士は「その考え方でめましょう」と頷いた。
最初のでは、信之はまだ婚に同しなかった。綾乃との関係についても「親密ではあったが、貞と呼ばれるようなものではない」と言い張った。けれど、期の活実態、鍵の暗証番号変更、送、隣の証言、の贈与相談、私物の共などが積みがるにつれ、その説は次第に苦しくなった。
あるの帰り、裁判所の建物をたところで信之が追いかけてきた。
「美。全部認める。もおでいい。も、松本先の言う通りでいい。だからもう争うのはやめよう」
私はち止まった。
「婚には同するの?」
信之はい黙ってから、ようやく頷いた。
「する」
「どうして急に?」
「疲れた」
その答えに、私はし笑った。
「私も疲れたわ。でも私は分よ」
信之は何も言わなかった。
その、できる部分が増え、続きは気にんだ。雄については〇万円を分割で返すを作り、綾乃についても腕輪の売却代や部の受領財産について返還方法を決めることになった。現実には回収が難しい部分もある。それでも「約束として残す」ことにがあると私はった。
そして、結婚から目の。私は役所の窓に座っていた。
机のには、婚届と冊の緑の帳。い使ってきた戸籍の姓を放し、私は旧姓の田島へ戻ることを選んだ。
広告
学ではずっと田島先だったので、議なことに“戻った”というより、やっと自分の名と活が致したような覚だった。
「本当にこれでいいのか」
信之がさく聞いた。
「ええ」
「だぞ」
「ってる」
「こんなに簡単に終わるんだな」
私は署名欄を見つめた。
「簡単じゃないわ。ここに来るまでがだったの」
私はペンを握り、自分の名をいた。
田島美。
たった文字なのに、き終えた瞬、肩から何かいものが落ちた。
窓をると、信之が言った。
「これから何かあったら、俺を呼んでくれ」
「必ないわ」
たく言ったつもりはなかった。ただ本当に、もう夫に頼る提できたくなかった。
へるとのが吹いていた。私は腕の翡翠を撫でた。
は消えない。
でも、残りのまで同じ形で続ける必もない。
歳になって、私はようやくそれをった。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 2 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 7 -
完結第10話
機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体
新氏グループの会長・玉金は、息子への株式譲渡を決意し、予定を早めて帰国する。ところが機内で、息子の婚約者を名乗る若い女に席を譲れと迫られ、頬を叩かれてしまう。しかも女の腕には、かつて玉金が息子の正妻・寄舟に贈った家宝の翡翠があった。息子に電話をかけても、返ってきたのは母を侮辱する言葉ばかり。怒りを抑えて空港に降り立った玉金を待っていたのは、愛人が用意した警備員たちだった。しかし、そこへ現れた寄舟の一言が事態を一変させる。裡切られた|嫁姑|第二の人生|親子関係|修羅場1.4万字5 61 -
完結第13話
濁流の中のSOS
夫と十三歳の娘・凛と買い物へ出かけた私。ところが夫は突然、増水した川へ車を走らせ、帰ろうとした私たちを激流へ突き落とした。必死にもがく私の手をつかみ、「お母さん、もがかないで!」と叫んだ凛。その言葉に従い、二人は奇跡的に生き延びる。だが、夫は救助もせず姿を消していた。裡切られた|夫婦|裡の顔|真相|親子関係1.9万字5 45 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1537 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 444