みかん小説
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"玄関のピンクのウサギ" 第15話

空っぽになった寝

婚が成したあと、最初にしたのはの窓をけることだった。信之がていってから何度も掃除はしていたのに、どこか空気がよどんでいる気がしていた。寝のカーテンをして洗い、シーツを全部替え、綾乃が選んだとわれる鉢植えは管理に頼んで処分した。柄の物も、使いかけの化粧品も、残っていたものはつずつ片付けた。

けれど、何でも捨てたわけではない。の結婚活のには、嫌な記憶しかないわけではなかった。健が幼稚園で作った父のの作、族で旅したの写真、信之が初めてボーナスで買ってくれた炊飯器の保証までてきた。私は写真を組に分け、信之の分は段ボールに入れて送った。

数、いメッセージが届いた。

《写真、ありがとう》

私は返事をしなかった。ただ、捨てずに渡せてよかったとった。

になったは、最初の数は驚くほど静かだった。朝起きても誰かの分の噌汁を作る必がない。洗濯物も半分。夕も自分がべたいものだけでいい。私は以、誰かの好みにわせて献を決めてきたことに初めて気づいた。

ある夜、蔵庫ので分く考えた末、夕を卵かけご飯と噌汁だけにした。教師代なら「栄養が偏る」

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と自分を叱っただろう。けれどべながら、私は笑ってしまった。誰にも文句を言われない。翌は好きな魚を焼き、次のはで蕎麦をべた。自由とは、旅や贅沢だけではなく、こんなさな選択の積みねなのだとった。

健は何度も「川町に来ればいい」と言った。

「母さんだと配だよ」

「だから配って、決めつけないで」

「でも何かあったら」

「話するわ。それに私はまだ歳よ。あなたたちのところへったら、また孫の送り迎えから全部やることになるでしょう」

健は笑って、「否定できない」と言った。

私は息子夫婦を嫌いになったわけではない。孫もい。でも、朝から夜まで子どもの活にわせたことで、自分のがほとんどなかったのも事実だ。これからは「伝う」と「背負う」を分けることにした。

そんな、昔の教え子のから連絡が来た。野でさな学習塾を経営している井という男性だった。

「田島先、国語の指導を見てもらえませんか。週に回でもいいんです」

最初は断るつもりだった。定はもう教壇に戻らないと決めていたからだ。けれど見学だけならとを運び、学の作文を読んだ瞬、教師だった頃の覚が戻ってきた。文章の癖、言葉の選び方、どこでつまずいているか。かけてにつけたものは、れたくらいでは消えていなかった。

授業、井がをげた。

「先、顧問として来てもらえませんか」

「顧問なんてげさよ」

「じゃあ、指導責任者で」

「もっとげさじゃない」

で笑った。

最初は週回、万円という話だった。私は「そんなにもらえない」と言ったが、井は譲らなかった。

「田島先、先は、のために自分のをく使いすぎです。仕事にはちゃんと値段があります」

その言葉が胸に残った。

私は条件をつした。

「講師の採用と授業の質については、私がをすわよ」

「ぜひお願いします」

こうして、歳の。私はもう度、教える仕事へ戻った。

に帰ると、空っぽになった寝にが差していた。

以なら、その空を寂しいとったかもしれない。

でも今は、何を置くか自分で決められる余に見えた。

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