"消された十六番目の席" 第7話
寿司の座敷で起きた異変
私がのまる陸へと疾していたその同じ刻、駅の老舗寿司『吉川』の階座敷では、宴も酣を迎えていた。
広々とした畳の座敷。 本来ならまで余裕で収容できるい座卓の央に、嫌でビールを煽る輔と、満面の笑みを浮かべた麻美が陣取っていた。 その両脇には麻美の両親である川久志さんと千恵里さん、向かいには麻美の妹夫婦と弟。 そして、夫の親族である敏さん夫婦と夫さんは、入りにい座の端にさくなって座らされていた。 かつて夫の正幸がきていた頃、座敷の真んで私を隣に座らせ、『かず子がいなきゃ始まらない!』と豪に笑っていた、まさにその所を、若夫婦が占拠していたのだ。
「いやあ、輔君! こんな派なでの特寿司を振るってくれるなんて、本当に謝するよ!」 義父の久志さんが赤ら顔で輔の肩を叩く。 「いえいえ、お義父さん! 今はうちの奢りですから、慮なくんでください!」 輔は胸を張り、まるで自分が国の主であるかのように酒を注いで回った。
麻美はといえば、向かいに座る妹の真由に向かって、得げに自話を繰り広げていた。 「お呂もキッチンも、にうちでしくしたでしょ? リフォーム会社と何回も打ちわせして、本当に変だったんだから!」
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「お姉ちゃん凄いね! 完全にを仕切ってるじゃん。あ、そういえば階の側の部、本当に私たちが泊まっていいの?」 「いいのいいの! はお母さんが使ってたんだけど、子供部にするからって言って、階のにりてもらったの。お母さんも階段がキツいって言ってたし、ちょうど良かったのよ」 真由が「へえ、お義母さんを追いしたわけじゃないんだ」としたように頷くと、麻美は「当たりじゃない、謝されてるわよ」とを膨らませた。
座の端でその会話をにした敏さんは、怪訝そうに眉をひそめていた。 (うちでしくした……? あのは兄さんとかず子さんのなのに、なんであの子が『うちで』なんて言うのかしら……) 違はそれだけにとどまらなかった。 敏さんが座卓の向こうに声をかける。 「麻美さん、かず子さん、本当に来たくなかったの? さっきをる、何だか寂しそうなお顔をされていたけれど……」
麻美は箸を止め、困ったような作り笑いを浮かべて見せた。 「そうなんですよ、おば様。お母さん、昔から混みや騒がしい所が本当に苦みたいで……。『私はでゆっくりテレビを見ていたいから、みんなで楽しんできて』って、何度もを押されちゃいまして」 千恵里さんも配そうにを挟む。 「田さん、お夕飯はどうなさるのかしら? で寂しくないかしらねえ」
「蔵庫におせちの残りがたくさんありますから丈夫ですよ! お母さん、自分で何でもできるですから!」
輔はといえば、自分の母親の話題がているというのに、線を落として黙々とトロの握りをに運ぶだけだった。 そのだった。 麻美の弟・翔太の隣で、玉子の握りを頬張っていた学の連君が、議そうにきな声をげたのだ。
「でも、輔おじちゃんのおばあちゃん、お寿司好きって言ってたよ?」
座敷の空気が、ピタリと止まった。 輔の持っていたお猪から、本酒がツーと畳のにこぼれ落ちた。
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