"消された十六番目の席" 第9話
に沈むと散乱した残骸
午分。 駅からのを歩いてきたが、田ののに辿り着いた。 「あれ……? 気、消えてるわね」 麻美がのでち止まり、首を傾げた。 灯こそ淡く灯っていたものの、階のリビングも階の部も、真っ暗に沈み返っていた。
「やだあ、お母さんたら、気代をケチって真っ暗にしてるのかしら?」 麻美がおどけたように笑うと、久志さんも「ハハハ、寄りは寝るのがいからな!」と陽気に相槌を打った。 だが、敏さんだけは胸騒ぎを覚えていた。 (あの几帳面なかず子さんが、お客様を迎えるのかりを消して寝るなんて、あり得ない……)
ガラガラと玄関ドアをけ、輔ががり框にを踏み入れた。 「母さん! 戻ったよ!」 返事はない。 「お母さーん! お呂沸いてますかー?」 麻美が続けて声を張りげたが、返ってきたのは、廊の奥から返ってくるたい反響音だけだった。
パチリ、と輔がリビングの照スイッチを入れた。 その瞬、玄関から崩れ込んできた親戚同のが、斉に凍りついた。
「……な、何これ?」 麻美のから、引き攣った声が漏れた。 リビングは、に全員がてったの状態のまま、寸分の狂いもなく放置されていた。 座卓のには、乾ききったおせちの残骸と、埃をかぶったみ残しのコップ。
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畳のには、枚の座布団がの形にへこんだまま散乱し、脱ぎ捨てられたスリッパがあちこちを向いて転がっている。 キッチンの流し台には、夕方に使った湯呑みが、濁ったに浸かったまま積みげられていた。
「ちょっと……! お呂も入ってないし、も切れてるじゃない!」 麻美が脱所へり込み、湯器のパネルを連打した。画面には無にも『湯止』の文字。 さらにの襖を乱暴にけた麻美は、絶叫をげた。 「布団が敷いてない!! 押し入れに入ったままだわ!」
の押し入れには、今朝麻美が無理やり積み直した客用布団組が、そのままの形でなっていた。 「お母さん! どこにいるのよ!」 麻美はヒステリックに階段を駆けがり、階の部のドアを次々とけ放った。 妹夫婦が泊まるはずだった側の部、自分たちの寝、納戸。 「いない……どこにもいないわよ!」
「おい、母さんの携帯、さっきからずっと『源が入っていないか波の届かない所』ってアナウンスが流れるぞ……!」 リビングでスマートフォンをに当てていた輔が、顔面を蒼にして震えていた。 その、仏のにっていた敏さんが、息を呑むような鋭い声をげた。
「……輔。兄さんの写真がないわ」 「え……?」 「仏壇の横にあった、兄さんの写真てがないのよ! それに……廊のフックに掛けてあった、かず子さんの紺のコートも……!」
輔が慌てての箪笥へ駆け寄り、番の引きしをけた。 通帳、印鑑、保険証、そして母がいつも使っていたさなボストンバッグ。 切なの回りのものだけが、綺麗さっぱりと消失していた。 具や調度品には、指本触れられた形跡がない。ただ、母というだけが、このから完全に蒸発していたのだ。
「てった……のか?」 敏さんの夫・武雄さんが、呆然と呟いた。 その、キッチンのカウンターにづいた輔が、ダイニングテーブルの央に置かれた、枚のい便箋に気づいた。
照のの、母の見慣れた几帳面な跡が、残酷なまでの確さで浮かびがっていた。
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