みかん小説
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"消された十六番目の席" 第15話

産の訪問と青ざめた夫婦

、曜。午分。 陸の景を背に、野経由の来線で戻ってきた私は、週ぶりにがののにっていた。 の鋭い差しが、築の根瓦をく照らししている。 夫と選び抜いた落ち着いたの佇まい。庭の犀のが、たいに揺れていた。

カチャリ、と鍵を回して玄関の引き戸をける。 玄関框には、輔の革靴と麻美のパンプスだけが揃えられていた。 正に泊まっていった川の面々は、翌の夕方、逃げるようにして川越の実へ引きげていったと、敏さんからの連絡で聞いていた。

「母さん……!」 廊の奥からびしてきた輔は、この週で見るもないほどやつれ果てていた。 無精髭が伸び放題になり、目のには黒々とした隈が張り付いている。 そのろから、おずおずと姿を現した麻美は、化粧気のない蒼な顔で、目を腫らしていた。

「お帰りなさい、お母さん……」 麻美が消え入りそうな声でをげたが、私はそれに答えず、コートを脱いで廊のフックに掛けた。 リビングへ入ると、内は見するときれいに片付けられていた。 だが、それは表面を取り繕っただけの片付けだった。棚のの埃、台所の油汚れ、そして何より、このを満たしていた温かな空気の残骸が、え切ったまま漂っている。

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ピンポーン。 午ちょうど、玄関のチャイムが規則正しく鳴り響いた。 輔が怪訝そうに眉をひそめ、「誰だ……?」と呟きながら玄関へ向かう。 引き戸をけると、仕ての良いグレーのウールコートを着た、代半ばの誠実そうな男性が、々とをげて名刺を差しした。

「おはようございます。ひかり産の野と申します。本は、田かず子様からのご依頼を受けまして、物件の現査定ならびに売却続きのご相談に伺いました」

「……は?」 輔のから、名刺がポロリと滑り落ち、(たたき)のに落ちた。 「ば……売却……? 査定……!?」

リビングの入りにっていた麻美が、鳴をげて駆け寄ってきた。 「ちょっと! 売却って何ですか!? お母さん、体何を考えてるの!?」

私は玄関へ歩み寄り、野さんに丁寧に会釈をした。 「野さん、寒いをありがとうございます。どうぞおがりください」 そして、取り乱して叫ぶ息子夫婦を瞥し、静かに言い放った。

「私が建てたを、私のこれからののために売るのよ。……何か、おかしなことでもあるかしら?」

輔の顔から、完全に血の気が引いていった。 「ば、売るなんて……嘘だろ母さん! ここは親父のだぞ! 俺たちのじゃないか!!」

「いいえ、輔。ここはあなたのお父さんと、私のよ」 私の瞳の奥に宿る絶対零度のに気圧され、輔はそれ以、言葉を継ぐことができなかった。

野さんは内のただならぬ空気を敏に察し、元のバインダーに目を落としながら、慎にをいた。 「田様、もしご族での最終な形成がまだということであれば、本は回りと図面の確認だけにとどめ、内はを改めることも能ですが……」

「いえ、野さん。そのままめてください」 私は遮るように告げた。 「名義である私ので、売却の続きをめます。階の部も、回りも、どうぞ隅々までご覧になってください」

野さんはく礼すると、メジャーとタブレット端末をに、階段をっていった。 トントン、と階のを踏み鳴らす査定員の音。 それは、若夫婦が奪い取った「偽りの」が、完全に解体されていくカウントダウンの音だった。

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