みかん小説
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"赤ペンで消した夫" 第5話

のクライマックスが千百字にわたって規入力された記録。 ――「編集部の若と夜まで管理」と言っていた夜。ログには、午分に也のIDで、あの箱根の面が加修正された記録。

完璧な符だった。 也は、単なる肉体関係の浮気に溺れていたのではない。 版社の編集という絶な権力を濫用し、会社のシステムとを使って、のための説を自ら代し、賞という公の文学の台を正に歪めようとしていたのだ。 自らはかつて説のに破れ、編集者へと転向した男。 その男が、若く美しいの肉体をに入れる見返りとして、自らの果たせなかった創作の野を彼女の肉体に憑依させ、形遣いのように言葉を操っていた。

「……汚らわしい」 子の唇から、くい声が漏れた。 りを超え、い吐き気と侮蔑が胃の腑から込みげてくる。 、庭を守り、彼の健康を気遣い、彼の社会成功を誇りとしてきた自らの献が、すべてこの茶番劇を成させるための「都の良い隠れ蓑」として利用されていたのだ。 子は震える指先をコントロールしながら、更ログの全データと、文章比較解析のレポートを、部の容量暗号化USBメモリへと吸いげた。 カチリ、と静かに完のポップアップが表示される。

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そのの午。子は別件の正原稿を納品するため、神保町にある版の本社ビルへと向かった。 たいが、杏並の黄い葉を歩へと散らしている。 ガラス張りの壮麗な層タワーを見げた、子の胸を来したのは、かつてこの所で誇りく働いていた自分への惜だった。 彼女は正面玄関を抜け、エレベーターホールが見渡せる階のオープンカフェの奥まった席に腰をろした。 打ちわせの類を確認するふりをしながら、ロビーをき交う々の姿を観察する。

分ほど待った頃だった。 層階用エレベーターの扉がき、見覚えのあるの男が姿を現した。 也だった。 そして、その半歩ろを、華奢な躰を揺らしながら歩いてくる若い女の姿があった。 ベージュの品なトレンチコートに、ゆるく巻かれた艶やかな黒髪。 写真で見たことのある顔――朝倉希だった。

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