"離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路" 第18話
の父
私の活は、ゆっくりと元に戻った。
婚した直は静かすぎる部に違があった。
けれど数週もすると、その静けさがよくなった。
仕事から帰り、べたいものを作る。
疲れているは惣菜を買う。
麻婆豆腐を作るは、販の素だって使う。
誰にも「抜き」と採点されない。
休に洗濯をさぼってもいい。
自分のなのに、私は結婚していた頃よりずっと自由に呼吸できた。
そして迎えた私の誕。
母から「夕飯を緒にべよう」と連絡が来た。
指定されたへくと、母と今の父、それから実父の鈴も揃っていた。
「とも来たの?」
「誕なんだから当たりでしょう」
母が笑った。
両親は私が幼い頃に婚した。
その母が再婚し、私は今の父にも切に育ててもらった。
実父との縁も切れなかった。
同士の事は々あったのだろう。
けれどなくとも私のでは、ともお互いを敵にしなかった。
「最ちょっと事を控えててね」
実父が腹を押さえる。
すると今の父も笑った。
「実は私もです」
でお腹を触っていると、母が員を呼んだ。
「特、つお願いします」
父が同に振り返った。
「特?」
母が笑う。
「今は綾乃の誕なんだからいいでしょう」
私はわず吹きした。
特の鰻。
亮介ならきっと言う。
並と質は同じだ。
広告
量が違うだけ。
そんなことにいを使うは報者だ、と。
でも今なら分かる。
母は鰻の値段にを払っていたわけではない。
んでほしい。
元気でいてほしい。
今は特別なだから、し贅沢をしよう。
その気持ちごと買ってきてくれていたのだ。
料理が運ばれてきた。
蓋をけると、ばしい匂いが広がった。
「いっぱいべなさい」
母が言う。
「うん」
私は素直に頷いた。
実父がグラスをげた。
「綾乃、誕おめでとう」
今の父も続く。
「おめでとう」
「ありがとう」
夫婦として選んだ相とは別れることになった。
しの結婚は失敗だったと言えば、そうなのかもしれない。
けれど私は、あのを全部無駄だったとはわない。
対等という言葉は、円単位までを半分にすることではない。
族だから何を言っても許されるわけでもない。
誰かに助けてもらうことと、誰かへ責任を押しつけることも違う。
亮介は最まで、その違いを理解できなかった。
だから今も、自分が幸になった理由を誰かのせいにしてきているのだろう。
私はもう、それを確かめようとはわない。
目のには、切なたちがいる。
「綾乃、めるぞ」
実父に言われ、私は箸を取った。
ふっくらした鰻をべる。
「美しい」
そう言うと、母が嬉しそうに笑った。
あの、亮介に「持ちに寄している」
と笑われた私は、もういない。
誰かに認めてもらわなければきられない女でもない。
働き、自分のおで暮らし、疲れたには族に甘える。
そして族が困ったには、今度は私がを差し伸べる。
それでいい。
窓のには、夜のの灯りが広がっていた。
私はグラスを持ちげ、の父と母の顔を順番に見た。
失ったものより、今ここにあるものの方がずっときい。
そうえる誕だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 0 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 0 -
完結第21話
赤ペンで消した夫
四十一歳の黒沢洋子は、出版社で腕を認められるベテラン校正者。編集長として出世した夫・和也を支え、七年間、穏やかな結婚生活を送ってきた。ところがある夜、夫から頼まれた若い女性作家の原稿に、見覚えのある文章を発見する。それは、かつて夫が洋子だけに囁いた愛の言葉だった。疑念を抱いた洋子が調べ始めると、原稿の裏には夫の不倫だけでは済まない重大な秘密が隠されていた。やがて和也は、女性作家との十日間の執筆合宿へ出発する。何も知らず帰宅を楽しみにする夫に、洋子は静かに最後の準備を進めていた。夫婦|真実|修羅場|不倫2.3万字5 7 -
完結第10話
産後七日目の決別
帝王切開からわずか七日。傷の痛みと貧血に苦しむ真帆に、夫の直人は「産んだ人が自分で育てればいい」と冷たく言い放った。生まれたばかりの娘を守るため、真帆は実家へ避難する。ところが直人と義母は、彼女を「産後うつで勝手に家出した妻」に仕立て上げ、親族に嘘を広め始めた。追い詰められた真帆は弁護士に相談し、あの日の暴言が記された助産師の記録を手に入れる。そして、夫の勤務先から届いた一通の回答書が、直人の主張を根底から覆そうとしていた――。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫1.9万字5 12