みかん小説
本棚

"高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった" 第11話

祭壇の真実ときていた奇跡

「……! お願いだから目を覚ましてよぉっ!」 麻里奈は骨壷の乗ったの台座にしがみつき、額を擦りつけて慟哭していた。 マスカラが黒く溶けして頬を伝い、派なリゾート用ワンピースの袖が線ので汚れていく。 そのろで、秀もまた両を畳につき、額をに擦り付けながら震えていた。

「美……本当にすまなかった……! 俺が……俺が麻里奈に唆されて、魔が差したんだ! ちゃんのことは本当に取り返しのつかないことをした……! 俺を殴ってくれ、警察に突きしてくれ!」 保のために即座にへと責任を擦り付ける夫の浅ましさに、私は笑を禁じ得なかった。

「秀さん、ずいぶんな言いね。さっきまで国のスイートルームで『美は子供ができないれな女だ』って笑いっていた相を、もう切り捨てるの?」 私の静かな言に、秀の呼吸がピタリと止まった。 麻里奈も涙でぐしゃぐしゃになった顔をねげ、信じられないものを見る目で秀を凝した。

「あんた……! 私が唆したですって!? 『妻とは別れるから、旅にこう』って航空券を取ったのはあんたじゃないのよ!」 「うるさい! おが『子供は妹に押し付ければタダで面倒見てくれる』って言ったんだろうが!」

祭壇ので、醜悪な責任の押し付けいを始める。

広告

その浅ましい姿を、腕を組んで仁王ちしていた父がした。

「黙らんか、このどもがッ!!」

鳴りのような父の号が広に響き渡り、はびくりと体をすくませてを噤んだ。 広に、静寂が戻る。線の煙が、え切った空気のを真っ直ぐにっていく。

私は、ゆっくりとの台座へと歩み寄った。 そして、麻里奈が涙を流して抱きしめていた骨壷を、無造作に片で持ちげた。 「え……? 美、何するのよ……!」

私は骨壷の蓋をした。 に入っていたのは――骨などではない。 所のドラッグストアで購入した、真っな脱脂綿の塊と、ちゃんが普段使っていたおしゃぶりだった。

「……え?」 麻里奈の目が点になる。秀も呆然とをけた。

「言ったでしょう、お姉ちゃん。『葬儀の準備』だって。……ちゃんがんだなんて、私は言も言っていないわ」

その、仏の奥にある襖が、スルスルと静かにいた。 現れたのは、母の胸に抱かれ、すやすやと穏やかな寝息をてている、きたちゃんだった。 額のは完全に引き、点滴の針の跡にはさな絆創膏が貼られている。 桃の頬をふくらませて眠る幼子の姿が、そこにあった。

「こ…………!?」 麻里奈が弾かれたようにちがり、娘の元へと駆け寄ろうとした。 しかし、そのくを、父のたくましい腕が鉄の棒のように遮った。

「その子に触るな! 汚らわしいで、この子にづくんじゃない!」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: