"消えた十一丁の鍬" 第9話
荷の軸
信は折れた鍬を持ち主へ返し、損害をで引き受けると伝えた。「借りるが悪いと決めつけられないようにしたい。柄の傷は、貸すからあったかもしれないんです」。持ち主の弥助は渋い顔をしたが、鍬を見てため息をついた。「俺も忙しくて、の割れ目をそのままにしていた」。責任をへ押しつける話にはならなかったものの、信は破損を確かめず貸しした自分の見落としを悔やんだ。
すみはそれを聞いて、古い柄のひびを確かめるさな片を信に見せた。以、父が見回りのに使っていた物だという。信は自分が図面ばかり見て、具の持ちがどれだけ危険になるか像していなかったと気づいた。貸しの札には、刃先だけでなく柄の傷と点検したをくことにした。弥助も「これなら自分で気をつけられる」と言った。さな訂正だったが、の信頼を取り戻すのはこうした仕事の積みねしかなかった。
すみも貸し札のき方を覚え、具のや柄の印を描き添えることを提案した。文字だけより違いが減ると信はした。
午になって、やっと町へた。運送の主は使わなくなった荷を指し、軸なら田にまとめて渡す約束をしたと説した。信は事を話し、引き取れる品かどうか確認したいと頼んだ。
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「約束を破れと言っているんじゃありません。売り先や届けが必なら、その順を踏みたいんです」。運送は若い鍛冶の真剣さを見て、まず田と話すよう勧めた。
田は相変わらず忙しそうだった。「の鍬を囲い込む親父の息子が、今度は鉄を買いに来たか」。彼は笑ったが、信がの図を広げると表を変えた。の板を支えるための具と、軸の寸法がいのほかかったからだ。「ただの古鉄で済むなら話は簡単だ。だが既に引取りに名が載っている品なら、こっちも勝に渡せん」
本を通じて役へ確認すると、軸は引渡し予定品のうちまだ処分が済んでいないつだった。代わりに同等の鉄を適法に集めて引き取る方法がないか相談することになった。信はへ戻り、余っている鉄を集め直す伝いを頼んだ。ただし誰の物か確認できない物と、使える農具にはをつけない。その条件だけは譲らなかった。
古釜の取っ、壊れた牛の輪、く使われていない錆びた具。集まった品には、それぞれの歴史があった。
あるでは壊れた鉄鍋の脚をしたが、祖母が「これはにのそばへ鍋を置くの台にしている」と止めた。信はそのまま返し、代わりにの裏で錆びついていた枠を見せてもらった。別のでは父が使っていた具を息子が放したがらず、族で話しってからすことにした。
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健にはの無駄に見えただろう。しかしつの物を残すかどうか決めるのは、その物と暮らしてきたなのだと信はった。お勢は祖父の代から使っていない鉢の鉄枠をしたが、徳兵は「それはの物だ」と渋った。お勢は笑わずに言った。「の物だからこそ、私もすかどうか決める権利があるでしょう」。徳兵は何も言えなくなった。
方、健は回収作業が遅いことに苛っていた。「古釜の取っだけ集めても、たいしたさにはならん」と言い、納に置かれた修理待ちの鍬をまた数え始めた。信は彼のを止めた。「修理予定をき、持ち主にも使いを確かめてある」。健は「そんな面倒なことをして、いつ終わる」と吐き捨てた。
その夕方、運送から伝言が届いた。軸を譲る話はすぐには決まらないという。信は肩を落としたが、父はにも「なら壊れた具の形を直しながら待つ」と言った。鍬の刃を再利用する案が失敗したことを、まだ誰にも話していなかった。信は父と目をわせ、「の寄では、失敗した試験もきちんと報告しよう」と告げた。父はゆっくりうなずいた。
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