"消えた十一丁の鍬" 第11話
誰の半か
鍬を返さないと言いしたのは、の段畑を耕す庄兵だった。持ち主の弥助はに貸したきり戻ってこないとっていたが、庄兵にも言い分があった。娘がをしての仕事ができず、父親では予定の畦直しが終わらなかったのである。「の朝には必ず返す」と頼む庄兵に対し、弥助は「そのが何度も延びた」と首を振った。
信は両の畑を見にった。庄兵の畑ではがまだ湿り、鍬を入れるにも力がる。方、弥助の芋畑にはでえぐられた溝ができており、急いでを寄せなければ芋がする。「誰が悪いか決めても、鍬は本しかありません」。信が言うと、弥助は「そんなことは見れば分かる」と嫌になった。正しい説と、目のの仕事をめることは別だった。
お勢はから本の柄を持ってきた。徳兵が捨てずに取っていた古い柄で、先端はどちらも太さが違う。「先に弥助さんの芋畑へ庄兵さんも来てもらう。でを戻したら、庄兵さんの畦を皆でやる。それなら今じゅうに終わるかもしれない」。弥助はすぐにはうなずかなかったが、具を抱えてでり回るより現実だと分かった。
信は父にもう本の刃を取り付けてもらった。徳兵は柄の曲がりを見て、庄兵のにはしすぎると言い、端を削り直した。
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誰もが同じ農具を使えると考えていた自分の表の粗さを、信はまたいった。ようやく本で仕事を始めると、を運ぶ、畦を踏み固める、子どもを見るが自然に分かれた。
夕方、弥助は庄兵へ鍬を返すよう迫らなかった。「の午は使え。代わりにうちの溝をあとか所伝ってくれ」。庄兵は黙ってをげた。信はの名を帳面にき、ただし次からは期限を延ばすに持ち主へ声を掛ける決まりにした。罰を増やすためではなく、勝に決めるを減らすためだった。
へ戻ると、父は炉のでを洗っていた。「おの帳面は役にったか」と聞かれ、信は「帳面にけないことのほうがかった」と答えた。徳兵はを鳴らしたが、し笑っているようにも見えた。
お勢が茶を運んでくると、信は今の畑のことを説した。彼女は「軒で折りえたのなら、は別のも伝えるかもしれない」と言う。庄兵の娘のががるまでは、事を運ぶも必だった。お勢は所の女たちと話をつけ、翌は庄兵のの仕事をいずつ伝うよう配した。鍬本を返すために始めた相談が、いがけず全体の負担を分けることにつながった。
その夜、信は使い終えた鍬の柄を乾いた布で拭きながら、庄兵の娘のがくがるよう願った。
具を直しても、が働けるようになるとは限らない。翌朝にはお勢の頼んだ女たちが庄兵のへ向かうはずだった。その夜、父は預かった具の札の裏へ、使うの背丈とのきさをき添えていた。
しかし翌朝、本がの流からってきた。「夜けにが増えています。仮の嚢を積み直さないと、今にも崩れるかもしれません」。信は鍬の貸し帳を閉じ、の男たちを呼びにった。いま必なのは鉄を数えることではなく、限られたをどこへかすか決めることだった。
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