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"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第2話

円銭

事件のか、操のには布を裁つ音が夜遅くまで続いていた。ちせはさな鉢のそばへ裁ち台を寄せ、紺の布を広げていた。机の端には、操の学費を納めた領収と、米への付けを記したが並んでいる。父がいた頃に買った踏みミシンは故障しており、袖や襟の仕げは縫いで済ませていた。

「式が円銭だって?」と操が尋ねると、母は縫い目から目をげた。「と仕てをわせた値段だよ。学が決めたんだから仕方がない」。

操のでは、円銭は軽く払えるではなかった。ちせは着仕げるごとにしずつ賃を受け取る仕事をしている。先には針仕事が増えるとはいえ、夜の灯油代まで考えれば、娘の式を調する余裕はない。母は学へ分割払いを申していた。

「私は古い袴でいい。お母さん、そのを返品してきて」

操が言うと、ちせは糸を引き切った。「それはできないよ。式を揃えるのは学の決まりだし、私たちの仕事でもあるんだから」。

その、梓女学では卒業式を装で統することになった。援会の居が提案し、学のしさを町に見せる会にしたいという見が通ったのである。注文は町の料商・桐がまとめ、縫製は宮はるの裁縫所と、で針仕事を請け負う女たちに回された。

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翌、操は同級の島田鶴子が職員ので泣いているのを見た。父を病気でくした鶴子のは、妹の費にも事欠いていた。鶴子の母は学へ、卒業式だけは古い袴で席させてほしいと願いた。しかし事務を担当する牧田は、「特別を認めれば全員の統が崩れる」と繰り返した。

「お母さんは、私には学へってほしいって言うの」と鶴子は言った。「でも式のおを払ったら、妹のの靴が買えない。それを先に言うのも、もう嫌になった」。

操は緒に職員へこうとしたが、鶴子は止めた。皆のでの事を説したくないという、その気持ちだけは操にもよく分かった。子どもの頃、学費の遅れた者だけが教のに呼ばれるたび、操は机に顔を伏せたくなったものだった。

午、操は環のへ寄った。藤ではしいの板を作っており、織物を扱う先は布ので華やいでいた。環の式は既に来がり、京から取り寄せた子まで用されている。操が鶴子の話をすると、環はすぐに財布をした。

「私が鶴子さんの分を払うわ。誰にも言わなければいいでしょう」

操は礼を言いかけたが、言えなかった。環は親切で言っている。それでも鶴子が番嫌がったのは、自分の困りごとがの施しによって特別扱いされることだった。

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「おをすに、本に聞いてくれる?」と操が言うと、環はそうにを尖らせた。

「助けようとしてるのに、どうしてられるの。しいを揃えるのは悪いことじゃないでしょう」

「悪いのはじゃないよ。着なければ卒業式にせないっていう決め方だよ」

その言い方に、環はしばらく黙った。操も、環の言葉をすべて否定したかったわけではない。制の襟がきれいに揃った姿を、親たちが楽しみにしていることもっていた。自分の母が縫いとしてその仕事をんでいたことも。

帰宅すると、ちせの指にしい傷ができていた。当てをしながら、操はもう度聞いた。「学がこの注文を取りやめたら、お母さんたちは困る?」。ちせはし考え、「縫いげた物には、もうも布も戻らないからね」とだけ答えた。

その夜、操は鶴子へをいた。助ける方法を決めるのではなく、まず何をしてほしいか尋ねるためだった。翌朝、鶴子から返ってきた答えはかった。《みんなと同じ式にたい。でも、みんなと同じ値段のを買えるふりはしたくない》。

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