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"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第3話

仕の裏

の末、操は母の仕事を初めて訪ねた。宮裁縫所はきなではなく、商から本入った裏通りの階だった。階には踏みミシンが台、窓際には裁ち台、奥には裁ち屑を入れた籠がある。女たちは窓がるいうちに襟や袖を仕げ、が暮れると自宅へ仕事を持ち帰った。

「おや、ちせさんの娘さん」とはるが笑った。はるはをし過ぎた、背筋のまっすぐな女だった。操が学の式について聞くと、はるは裁断した布を畳みながら、注文の仕組みを説してくれた。

「学の先がずつ注文したんじゃないよ。援会が桐へ括で頼んで、桐が私らへ仕てを回した。は桐がす。縫いには仕て賃だけ。全部納めて、検品が済んだらおがる約束なの」

操は母たちが既に何着も縫っているのを見た。未完成のものも含めれば着い。縫いの、枝はまだ歳そこそこで、幼い子を背負いながら襟の返し縫いをしていた。「この仕事が終われば、子どもにの靴を買ってやれるの」と言って、来がった袖をそっと撫でた。

その、桐の番が布の束を持って入ってきた。細い伝票を差しし、「が揃っていない。着分は縫い直してもらわんと」と言う。はるは布を広げて確かめた。

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確かにはわずかに違っていたが、元のを分けたのは桐だった。

「裁ち直す布をいただけるなら、縫い直します。ただし賃は別にお願いします」とはるが言うと、番は顔をしかめた。「学は揃いを求めているんだ。ここで仕事を失ったら困るでしょう」。その言葉に、女たちのが瞬止まった。

操は腹がった。違いのを渡したのはなのに、仕てる女だけが責められている。しかしはるは声を荒らげなかった。受け取った布に印をつけ、誰がどこを直すかを決める。番がった、ようやくさなため息をついた。

「負けたんですか」と操が聞くと、はるは首を振った。「今は納期を守る。縫い直しの話は、受け取りのにもう度する。先にったら、布も渡してもらえなくなる」。

学では同じ頃、卒業式の準備がんでいた。全員の式が揃うことを示すため、式の週に撮をうという。だが代を払い終えていない者には、を引き渡さないと牧田が告げた。写真にはのうち、まだ代を納めていないが入れないことになる。

操は放課、佐伯先を訪ねた。佐伯は鶴子の事もっていたが、職員会議で見が通らなかったと言う。「同じ教育を受けた子を、写真からすことはおかしいわ。けれど私ひとりで決められることではないの」

「先、全員でお願いしたらどうですか。だけの問題にしないで」

佐伯は机のの欠簿を閉じた。「全員と言うなら、全員が何を望んでいるのか確かめなさい。誰かが代わりに決めるのは、学がしていることと同じよ」。

その言葉を聞き、操は自分が環の善を拒んだのことをいした。鶴子のためだと言いながら、自分にも誰にも相談していなかったのではないか。翌の昼休み、操は同級たちに集まってもらうことにした。

教のろで、枚の机を見渡した、操は初めて怖くなった。の事をにしたくない者もいる。しい装を楽しみにしている者もいる。何が公平かという答えは、教のだけでも揃っていなかった。

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