"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第4話
の空席
撮のが来た。講堂の階段にはい布がかけられ、写真がきな脚を据えた。操たちはめに集まり、鏡のでしいの襟を直していた。先から名を呼ばれた者が、順に階段へ並ぶ。しかしのうちには、着替えるためのが渡されなかった。
は廊で待っていた。鶴子が誰にも聞こえない声で、「私たちはで写してもらえばいいから」と言った。操はそのを握った。先、全員で撮ってほしいと申し入れたのに、学からは返事がなかった。は写真との約束の刻を理由に、撮をめようとしていた。
その、環が階段をりた。「私も写らない」。操は驚いた。環はのまで、せっかく仕てたを着た写真を楽しみにしていたのだ。「母さんに言われたの。写真って、何も残るんでしょう。そこにいない理由を、私はあとで説できないとった」
環のに、別の女がりた。だが全員ではない。撮を楽しみにしてきた者は階段に残り、「どうして今になって」と戸惑っている。操は瞬、全員にりるよう呼びかけたくなった。けれど佐伯の言葉をいし、を閉じた。
「階段に残るを責めるつもりはありません」と操が先へ言うと、ろからが声をげた。「それなら緒に写ればいいじゃない。
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私はがを買ってくれたのが嬉しい。でも、鶴子さんがいない写真は嫌だよ」。その女はを脱ぎ、廊の子へ置いた。
ずつ、階段をりてきた。最まで残ったのは、装をどうしても写真に残したかった郁子だった。父は毎京へ商売にており、今の卒業には帰れない。郁子は来がった式の写真を送る約束をしていたのだ。
「を脱ぐなら、父に送る写真はどうなるの」
操は答えられなかった。その、写真が慮がちにを挟んだ。「今撮ったものは枚にしてもよろしいですよ。揃いの式の写真と、普段のの写真を撮ればいい。ただし度目の撮代は、どなたかに相談していただかないと」。
女子徒たちは顔を見わせた。撮代も払えないのに、度撮ることなどできるのか。すると環が自分の財布をそうとした。操が止めるよりく、郁子が言った。「私たち、自分でしずつそうよ。の分も入れて、全員でね」
写真は度の撮を引き受けたが、の許は得られなかった。その結果、撮は翌週へ延期となった。牧田はり、操と環に反省文をすよう命じた。操は反省文の代わりに、全員から集めた見を綴ったを持参した。
そこにはの名と、「の代を納めたかどうかで卒業式への参加を分けないでください」
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という文が記されていた。環の跡も、郁子の跡もあった。は写真の扱いについて見が違っても、その点では致していたのである。
はを読んだ、「があるなら保護者に話しなさい」と言った。「学が費用を決めたのは、町の々の協力があるからだ。皆さんが着る式で、この町の仕も仕事を得ている」
操は母のことをいし、何も言い返せなくなった。その夜、ちせにの申し入れを話すと、母は縫っていた袖を置いた。「操、あんたたちが言いたいことは分かる。だけど、縫ったのがらないと言われたら、私たちはどうなるんだい」
「そんなつもりじゃない。を作ってもらったには、きちんと払ってほしいの」
「誰が?」
母のい問いに、操は答えられなかった。学が払うのか、注文したが払うのか。が払えないから起きた抗議なのに、その代はどこからすのか。操は初めて、自分たちの申し入れが誰かの仕事を消してしまうかもしれないとった。
翌朝、宮はるが操を訪ねてきた。「の夕方、縫いたちが集まるの。あなたにも聞いてほしいことがある」。はるのには、縫製代の支払い条件を記した契約が握られていた。
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