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"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第7話

環の卓

藤の夕は、操のよりほどかった。環の父・宗郎は織物商を営み、町では主ばかりでなく援会の役員としても顔がられていた。夕の席で娘が卒業式の騒ぎについて切りすと、宗郎は箸を置いて、まず環の装を見た。環はでも、式の紺のを着ていた。

「学を侮辱したと聞にかれている。おが先にったそうだな」

「聞には先なんていてないわ。で決めたことよ」

「それならで学へ詫びるべきだ。これから就職や縁談のある者もいるんだぞ」

環は瞬、声がなくなった。ではしいが似うと褒められていたのに、いま父が気にしているのは娘の評判だった。「お父さんは、の同級が写真からされそうになったことをっていた?」と環が聞くと、宗郎は初めて線を逸らした。

実は宗郎は学側から、式の布について相談を受けただった。藤のでを扱えば元に利益が残るとったが、括納入の条件がわず、注文は桐へ回ったという。「私は装に反対ではなかった。娘たちが揃って卒業するのは派だとった」と宗郎は言った。

「揃ってって、同じを買えるだけが揃うことなの?」

父は答えなかった。母が環の肩を軽く押さえ、「ご飯がめるから続きはで」

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と言った。環はそれ以詰め寄らず、に父の帳へった。自分の式の仕て代がどう分かれているのか、商売をするの目で確かめたかったのだ。

宗郎は渋々、桐がした見積もりの写しを見せた。、釦、裏、運搬、仕て、それにの取り分が並んでいる。ただし仕ての欄は着分でまとめてかれ、の女たちへ実際に渡る額は分からなかった。

「値段のいいだけじゃないのよ。私たちが脱いだら、なぜ縫ったが弁償することになるの?」

「商いには約束がある。それを無すればも潰れる」

「だったら、最初の約束が悪かったはどうするの?」

宗郎は娘の顔を見た。環はいつも父のしたをんで着る娘だった。初めて商売の仕組みそのものへ疑問をぶつけられ、父はしばらく黙っていた。「、桐の主に会う。おも来るか」と言ったのは、やがて夜が更けてからだった。

翌朝、桐のへ来た環は、主がったほど悪びれていないことに驚いた。「女学さんたちが着なくなったのは、うちの責任じゃありません」と主は言う。「学には学のがあります。式が潰れれば宣伝にもならない。そうなれば庫になるだけです」。

宗郎が「縫製所へ布の代を負わせるのは酷ではないか」と尋ねると、主は契約を指した。

「宮さんたちも署名しました。私らだけ損を被れとおっしゃるんですか」。環は腹をてたが、言い返せなかった。父のも、売れ残りがれば苦労することをっていたからだ。

帰り際、番が見送りながら声で言った。「着が来の徒にも着てもらえるなら、うちだって話しえます。ただし学は、毎しく買わせる方が品が揃うと言い張っています」。

環はその言葉を父に伝えた。宗郎はのでを止め、「古いを貸す女学など聞いたことがない」と言った。環は答えた。「聞いたことがないから、これから始めればいいじゃない」。父は笑わなかったが、今回はから否定もしなかった。

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