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"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第9話

ほどいた縫い目

、宮裁縫所の女たちは仕事を止めたわけではなかった。物の仕て直しや旅館の寝具の補修があり、針を休める余裕などない。ただ、着の式はの奥に吊られたままだった。納めるも、買い取る相も決まらなくなったからだ。

ちせは娘を連れ、隣町の注文先へった。古い袴の丈を直す仕事を受けるためである。訪ねたの娘は梓女学よりさな学に通っており、卒業を控えていた。「あの紺の式、うちの学でも着られるかしら」と母親が尋ねた。ちせはすぐに売れるとは言わなかった。

「丈を直せば着られます。でも、着は度、梓女学のために作ったものです。私らので勝に売っていいのか、まだ決まっておりません」

帰りので、操は「ほかの学で売れればいいんじゃない?」と言った。ちせはうなずきながらも、「その学の娘さんたちが同じ値段を払えるか、誰が確かめるの」と問い返した。操は答えられなかった。自分たちが嫌だった仕組みを、別の女学たちへ移すだけかもしれない。

その夜、ちせは式の仮留めをほどいていた。操が議そうに見ていると、母は説した。「借りて使うものにするなら、の体にわせて縫い切ってはいけない。裾や袖に、次の子が直せる余りを残すんだよ」

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操は針を借り、ほどいた糸を片づけた。布を傷めずにほどくのは、縫うより難しかった。急げばさな穴がく。ちせはその穴を指で押さえ、「をく使うってのは、継いだところが見えないようにすることじゃないよ。どこを直したか分かるようにして、次に使うが困らないこと」と教えた。

翌、操は環とともにへ、式を学の共物として使う案を持ちかけた。卒業に度しか着ないを、毎買い直すのではなく、貸しし用に直す。仕て代と布代をまず支払い、翌から使う徒には無理のない貸し賃を取る。破れた所は職へ修繕を頼み、その賃も払う。

郁子がを挙げた。「私は自分の式をに持って帰りたい。父に見せたいって、ずっとっていたから」。操は「もちろん買い取ってもいいとう」と答えた。すべてを共にするのではなく、買える者は買い、借りたい者は借りる。卒業式にる資格とを買う能力を、分けて考える方法だった。

しかし同級の民子が別の疑問をにした。「買えるばかりしいで、借りるだけ古いになったら、結局同じじゃない?」。教が静かになった。操は、揃えることそのものがを苦しめるも、揃わないことでが傷つくもあると初めていらされた。

議論の末、環が提案した。

「卒業式ではを揃えなくていいことにする。そので、揃いの装で写真を撮りたいや、学の事で借りたいが使えるようにするの」。それなら式を着ない自由も、着るびも残せる。

この案を持って宮裁縫所へくと、はるは静かに聞いた、「仕事としてなら、面いよ」と言った。ただし、つ問題があった。学にはそもそもを管理し、貸ししのを扱う仕組みがない。誰かが引き受けても、にそのが辞めればはきを失う。

「誰が預かるの。誰が穴を直すの。誰が借りたを記録するの」とはるは次々に尋ねた。操たちは初めて、貸すという言葉のろに仕事がいくつもあることをった。装のしい形だけを争っていた自分たちが、を支える仕事には無関だったことを恥じた。

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