"離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私" 第6話
は売り物じゃない
「そんなじゃない」
私は反射に否定した。
しかし健太の目からりは消えなかった。むしろ、私が言葉をねるたびにえていくようだった。
私は焦った。
「これからのお父さんとお母さんの介護費用は私がせる。も段差をなくして、もっと全に直せるでしょう。ヘルパーさんを頼うことだってできるし、由紀さんも仕事を減らさなくて済む」
健太は「うん」とだけ返した。
その無な相槌が怖かった。
私はさらに言った。
「それに健太がこれまでのためにした分だって、私が――」
「やめろ!」
弟の声が今を揺らした。
母がい鳴をげた。
「俺のをに換算すんなよ」
「違う。そんなつもりじゃ……」
「同じだよ」
健太は卓へをついた。
「俺が欲しかったのは億じゃない」
言葉のがすぐには理解できなかった。
「俺が欲しかったのは、親父が倒れたに『今度の病院、私がこうか』って言ってくれる姉ちゃんだったんだよ。転勤を断ったに『丈夫?』って聞いてくれる族だったんだ」
私は俯いた。
「に欲しかったんだよ。今、持ちになった姉ちゃんに全部払ってほしいんじゃない」
胸が痛んだ。
「姉ちゃんはらなかったって言うけど、見ようとしなかっただけだろ。母さんが『丈夫』って言えば、それ以聞かなかった。
広告
俺がいるからだって、自分からする方を選んだんだ」
何も否定できなかった。
確かに私は、らなかった。
けれど「らされなかった」のではない。
ろうとしなかった。
く聞けば、自分も何かをしなければならなくなる。夫との庭を優先し、くにんでいるという理由に隠れていた方が楽だった。
その事実を初めて認めた。
父も母も黙っていた。
健太のりは、私だけへ向けられたものではなかった。男だから。くにいるから。同居しているから。そうやって、弟を逃げられない所へ縛りつけた族全員に向いていたのだ。
「ごめん」
私は座布団へ両をついた。
「本当にごめん。億円があれば、今まで何もしなかったことまで消せるとってた。おをせば、私も族の役にったになれるって……どこかでってた」
健太は黙った。
「でも違った。健太が失ったものを私が買い戻すことはできない」
由紀さんが静かに目を伏せた。
私は続けた。
「このおは過を買うためには使わない。ただ、これから誰かが犠牲にならないために使いたい」
「姉ちゃん」
「でも、今すぐ許してほしいなんて言わない。健太がってるのは当然だから」
い沈黙が流れた。
やがて健太は顔をそむけた。
「があるなら、好きに使えばいい」
そしてく続けた。
「ただ、俺のを買い取ったつもりにはなるな」
弟は部をていった。
その夜、億円の当選類は、テーブルのでただの切れのように見えた。
けれど同に、私は初めて分かった。
おにできないものがあるからこそ、何におを使うべきなのかを考えなければならないのだ。
翌朝。
健太は、さらに私のらなかった話をした。
「姉ちゃん。この、に度売ろうとしたんだ」
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 31 -
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 0 -
完結第20話
「息子が高熱なのに来い!」夫一家に185万円の請求書を押しつけられた私の正体
夫と義家族から「何もできない専業主婦」と見下され、金銭まで搾り取られてきた松岡美央。しかし彼女には、世界的なホテルグループの最高責任者という、誰にも明かしていない秘密があった。ある夜、高熱を出した息子を看病していると、義母から三十件以上の着信が届く。「緊急事態だから今すぐ来なさい!」慌ててホテルへ駆けつけた美央を待っていたのは、豪華な食事を楽しむ夫一家と、185万円もの請求書だった。裡切られた|怒り|嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.6万字5 18 -
完結第10話
元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円
「もう二度と、俺の前に現れるな」離婚の日、夫の大地に冷たく突き放され、ひな子は六歳の息子とともに家を追い出された。渡されたのは、養育費を振り込むという一枚のキャッシュカードだけ。ひな子はそれを封印し、工場で働きながら必死に息子を育ててきた。三年後、口座を解約するため銀行を訪れると、なぜか支店長自らが現れ、特別応接室へ案内される。通帳に記されていた残高は、なんと一億五千万円。さらに差し出されたのは、元夫の筆跡で「ひな子へ」と書かれた一通の封筒だった。あの日の冷酷な離婚には、誰も知らない秘密が隠されていた――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題|熟年離婚1.6万字5 7 -
完結第18話
「片親の貧乏人」と息子を叩いた社長、母の正体を知って絶句
結婚の挨拶から帰宅した息子・祥太の頬には、くっきりと平手打ちの跡が残っていた。婚約者の父親から「片親の貧乏人」と罵られ、結婚まで白紙にされたという。二十五年間、女手一つで息子を育ててきた桃江は、静かに電話をかけた。実は彼女は、父の急逝を受けて大企業の社長に就任したばかり。しかも相手の食品会社は、長年その企業との取引に支えられていた。桃江の正体を知り、突然態度を変える婚約者一家。しかし、亡き父が残した調査記録には、結婚騒動をはるかに超える重大な秘密が隠されていた。因果応報|親子関係|修羅場2.6万字5 20 -
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 14 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 14