"離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私" 第9話
「嫁だから」は理由にならない
母はすぐには答えられなかった。
「そんなつもりじゃ……」
ようやくた言葉は、それだけだった。
けれど健太は引かなかった。
「由紀にだって仕事がある。子どものこともある。自分の親だっている。なのに『嫁なんだから』『緒にんでるんだから』って、全部やって当然みたいにしてきただろ」
父も居悪そうに目をそらした。
由紀さんは俯いていた。
私はその横顔を見て、初めて彼女がどれほどい言葉をみ込んできたのかを考えた。
母は由紀さんへ向き直った。
「由紀さん……そんなに変だったの?」
その問いに、由紀さんはしだけ笑った。
「変でした」
責める調ではなかった。
「お義父さんもお義母さんも嫌いじゃありません。でも、好きだから何でもできるわけではないんです」
母の目に涙が浮かんだ。
「病院へくためにパートを休んで、学事となったら子どもにしてもらって。健太も会社でをげて……。ずっと『族だから仕方ない』とってきました」
由紀さんはそこで度息をえた。
「でも、それを続けていたら、私たちの族が壊れます」
誰も言葉を挟めなかった。
私は佐藤さんが置いたパンフレットを見た。
そこには、族がで抱え込まなくてもいい仕組みがいくつもかれていた。
今までなら、私は「おは私がす」
広告
とだけ言っていただろう。
しかし今回は違った。
「介護サービスの費用は、私がめに負担できる」
健太が私を見た。
私は続けた。
「でも、おだけして終わりにはしない。今は仕事をしていないから、役所の続きも病院の送迎も、私ができることはやる。佐藤さんとの打ちわせにも参加する」
「姉ちゃん」
「今まで健太が全部やってきた分を返すことはできない。でも、これから先まで同じ形を続ける必はないでしょう」
健太はしばらく私を見ていた。
数なら、「があるから偉そうにするな」と言われてもおかしくなかった。
だから私は最に付け加えた。
「これは億円があるからやるんじゃない。私が族として今までやらなかったから、これからはやる」
い沈黙のあと、健太はさく頷いた。
「分かった」
それだけだった。
けれど私にとっては、きな歩だった。
母も涙を拭きながら、佐藤さんの説をもう度聞き始めた。
父は最まで満そうだったが、以のように「そんなものはいらん」と切り捨てることはなかった。
話しいが終わる頃には、はすっかり暗くなっていた。
佐藤さんを玄関で見送り、私はのへ戻った。
廊には、父がつまずきそうなさな段差がある。
ほんの数センチ。
けれど私たち族も同じだった。
ほんのしずつ積みなった無理解や慮やい込みが、いつのにか誰かが越えられないほどきな段差になっていた。
それをなくすのに必なのは、億円だけではない。
誰かが自分の役割から歩くことだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 33 -
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 0 -
完結第20話
「息子が高熱なのに来い!」夫一家に185万円の請求書を押しつけられた私の正体
夫と義家族から「何もできない専業主婦」と見下され、金銭まで搾り取られてきた松岡美央。しかし彼女には、世界的なホテルグループの最高責任者という、誰にも明かしていない秘密があった。ある夜、高熱を出した息子を看病していると、義母から三十件以上の着信が届く。「緊急事態だから今すぐ来なさい!」慌ててホテルへ駆けつけた美央を待っていたのは、豪華な食事を楽しむ夫一家と、185万円もの請求書だった。裡切られた|怒り|嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.6万字5 20 -
完結第10話
元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円
「もう二度と、俺の前に現れるな」離婚の日、夫の大地に冷たく突き放され、ひな子は六歳の息子とともに家を追い出された。渡されたのは、養育費を振り込むという一枚のキャッシュカードだけ。ひな子はそれを封印し、工場で働きながら必死に息子を育ててきた。三年後、口座を解約するため銀行を訪れると、なぜか支店長自らが現れ、特別応接室へ案内される。通帳に記されていた残高は、なんと一億五千万円。さらに差し出されたのは、元夫の筆跡で「ひな子へ」と書かれた一通の封筒だった。あの日の冷酷な離婚には、誰も知らない秘密が隠されていた――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題|熟年離婚1.6万字5 7 -
完結第18話
「片親の貧乏人」と息子を叩いた社長、母の正体を知って絶句
結婚の挨拶から帰宅した息子・祥太の頬には、くっきりと平手打ちの跡が残っていた。婚約者の父親から「片親の貧乏人」と罵られ、結婚まで白紙にされたという。二十五年間、女手一つで息子を育ててきた桃江は、静かに電話をかけた。実は彼女は、父の急逝を受けて大企業の社長に就任したばかり。しかも相手の食品会社は、長年その企業との取引に支えられていた。桃江の正体を知り、突然態度を変える婚約者一家。しかし、亡き父が残した調査記録には、結婚騒動をはるかに超える重大な秘密が隠されていた。因果応報|親子関係|修羅場2.6万字5 21 -
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 14 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 14