みかん小説
本棚

"離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私" 第15話

父が放したもの

さらに半ほど経った頃、父が自分から言った。

「、売ってもいいぞ」

私は聞き返した。

「本当に?」

「誰もまないなら、空けておく方がにも悪い」

以の父なら絶対に言わなかった言葉だった。

「先祖代々の」はどうするのかとったが、私はあえて聞かなかった。

父はもう分考えたのだろう。

齢者向け宅で活を始めてから、父にはしい友ができた。週に何度か将をし、気のいいは所を散歩している。

を持っていなくても、父は父だった。

むしろ古いという「男の証」かられたことで、以より穏やかになった。

売却の準備が始まり、私と健太、由紀さんは実の理をすることになった。

すでにきな具は業者へ依頼していた。

残っているのは、族で確認しなければ捨てられないいの品ばかりだった。

父の曜の具。

母の着物。

私の学習机。

健太が学の頃に使っていたグローブ。

つずつに取っていると、記憶が戻ってくる。

昔の私なら、捨てることに抵抗があっただろう。

これを処分したら族のいまで消えるような気がしたかもしれない。

しかし今は違った。

物がなくなっても、いは消えない。

がなくなっても、族は消えない。

逆に、物やにしがみつくことで誰かを苦しめるなら、放した方がいいこともある。

夕方まで作業を続けると、のはほとんど空っぽになった。

具がなくなった今は、記憶のよりずっと狭く見えた。

この狭いを守るために、私たちはずいぶんい、自分たちのまで狭くしていたのだとった。

健太が最に玄関の鍵を持った。

弟は度、空っぽのを振り返った。

そして私の方を見て、し悪そうに笑った。

「姉ちゃん」

「何?」

「やっぱり、このに姉ちゃんの居所ないな」

のあのと、同じ言葉だった。

私は瞬黙った。

そして笑った。

「うん」

健太も笑う。

私ははっきり言った。

「もう、いらない」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: