みかん小説
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"四十九日の絶縁" 第1話

喪の背に刺さった罵声

が吹き抜ける宅の裏。法を終えたばかりの私の取りは、鉛のようにかった。 全を包む黒の喪が、え切った肌にじっとりと張り付いている。 歳、級建築士として設計事務所に勤務する私、浅野裕子(あさの・ゆうこ)の常は、わずかか、最の夫・公平(こうへい・享)が建設現の察に急性筋梗塞で急逝したあのから、彩のすべてを失っていた。

「……お母さん、ただいま戻りました」 法の会となったセレモニーホールから、親戚への挨拶や引き物の配をすべてで片付け、ようやく義実へと帰り着いたのことだった。 同居していた姑の悦子(えつこ・歳)は、法の会すら待たずに「子供たちにお弁当をべさせるから」と言い残し、歳の娘・(こはる)と歳の息子・陽翔(ハルト)を連れて先にタクシーで帰宅していた。

返事はなかった。 代わりに私の界にび込んできたのは、義実の扉の脇、普段は粗ゴミの収集所として使われているコンクリートの叩き台だった。 そこに、見覚えのある段ボール箱がつ、積みげられていたのだ。 数、私が「季節れの類を理しておいてほしい」と義母に頼まれ、ドラッグストアで買い求めてきた品の段ボール箱。

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よけのビニールシートすら掛けられず、汚れたブロック塀にてかけられたその箱の隙から、見慣れた私のお気に入りのジャケットと、仕事で使う青焼きの設計図面が、無残にはみしていた。

「……何、これ……?」 震える指先で箱のガムテープをめくると、に入っていたのは私の類、着、化粧品、建築基準法の専、そして資格証の控え。 私の私物のすべてが、まるで雑巾のように乱暴に詰め込まれていた。

「あら、ずいぶんがかかったじゃないの」 背でガラリと玄関の引き戸がき、腕を組んだ悦子が姿を現した。 黒の喪をすでに脱ぎ捨て、派な臙脂のカーディガンを羽織った義母は、酷な嘲笑を浮かべて私を見ろしていた。

「お義母さん、この荷物は……体どういうことですか? なぜ私の物が、こんなゴミ捨てに……」 「見れば分かるでしょうに」 悦子はをひくつかせ、吐き捨てるように言った。 「それ、うちではもう必のない『ゴミ』よ。持っていきたいなら、今すぐあなたのに積んで持っていきなさい」

「ゴミ……? 私の荷物が、なぜゴミなんですか! ここは公平さんと、子供たちと暮らす私のです!」 私が声を絞りすと、悦子は待ってましたとばかりに眉を吊りげ、柱を平で叩いた。

「寝言を言わないでちょうだい! 公平がんだのよ! がの男で、跡取りの公平がこの世からいなくなったの! 息子のいないに、嫁のあなたが居座る理由がどこにあるのよ? 血の繋がりのない嫁なんてね、息子がねばただの赤のなの! 所詮は! 図々しくがの空気を吸わないで、とっととていきなさい!」

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の気が、私の全を貫いた。 夫をくして。まだなのだ。 骨壷の温もりすら消え切っていないこのに、喪を着た妻を、着の着のままでへ放りす。 この女の胸のには、の血潮というものが滴たりとも流れていないのか。

「……子供たちはどこですか。と陽翔を呼んでください」 私がたく言い放つと、悦子はふんとを鳴らし、わざとらしく目を泳がせた。 「子供たちはね、親戚のに預けてあるわ。あなたが荷物をまとめ終わったら、でちゃんとあなたの自宅へ送り届けるように配してあげるわよ。だからなさって、さっさとをしてちょうだい!」

嘘だ。直がそう告げていた。 だが、ここで警察を呼んで騒ぎてれば、傷つくのは子供たちだ。 私はく息を吸い込み、え切った指先で段ボール箱を抱えげた。 「分かりました。……今すぐ、ていきます」 悦子の唇が、勝利を確信した醜い形に歪んだのを、私は見逃さなかった。

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