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"出征前夜、夫から突然の離縁状――日記に隠された本心" 第13話

分の朝餉

「馬鹿みたい」

つ並んだ茶碗を見て、私はで笑った。

誰かが来る予定もない。

淳さんが帰るというらせもない。

それでも、久しぶりに膳並べたかった。

米は貴だったから、実際に盛ったのは膳だけだった。空の茶碗を向かいに置き、私は噌汁をすすった。

淳さんがいたころ、卓は静かだった。

会話らしい会話などほとんどなかった。

それなのに今い返すと、嫌な静けさではなかった。

「はどうですか」

「うまいです」

「今は遅くなりますか」

「し」

それだけ。

もっと話しておけばよかった。

好きなべ物。

子どもの頃のこと。

軍になった理由。

何つらない。

もし帰ってきたら、聞きたいことがほどある。

方で、りたいこともあった。

どうして勝に縁したのか。

どうして好きだと言わなかったのか。

どうして名すら呼ばなかったのか。

私は空の茶碗へ向かって言った。

「帰ってきたら、全部聞きますからね」

自分でも笑しくなった。

事のあと、の掃除をした。

今は仕事が休みだった。

障子をけると、の反射で部がるい。

押し入れを理していると、奥から淳さんの古い羽織がてきた。

とほとんど同じ匂いが残っている気がした。

顔を埋めたい衝に駆られたが、やめた。

「帰ってきたら本が着るんです」

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誰に言うでもなく呟き、丁寧に畳み直した。

昼過ぎ、志乃さんが餅をつ持ってきた。

「余ったから」

「ありがとうございます」

「今は休みでしょう。夕方、うちで緒にべない?」

以なら断っていた。

を空けているに淳さんが帰ってきたら。

そんなことばかり考えて、必以にへなかった期もある。

今は違う。

「きます」

笑って答えた。

淳さんが帰れば、隣のくらい探しに来るだろう。

待つことは、自分を縛ることではない。

その夜、志乃さんのでは久しぶりに勢で事をした。

戦争で夫をくしたもいた。

息子を待っているもいた。

誰もが何かを失い、何かを待っていた。

それでも笑うは笑った。

帰宅したのはを過ぎていた。

をける。

がまたり始めていた。

玄関のに跡はなかった。

「今も違いましたか」

私は空を見げた。

寂しくないと言えば嘘になる。

けれど絶望はしていなかった。

翌朝。

いつものに起きた。

竈にを入れる。

薬缶を置く。

湯が沸くのを待ちながら、私はふとを澄ませた。

で何か音がした気がした。

だろうとった。

が根から落ちたのかもしれない。

また作業へ戻る。

その。

今度ははっきり聞こえた。

の軋む音だった。

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