"昭和46年、優勝した妻に夫が告げた「帰るな」" 第16話
子は代表をりる
か契約の返事をする、子は自分の名がかれた申込を持っていった。だが署名する直、ペンを置いた。これまでの教は子の賞で始めた。会との交渉も、参加者への連絡も、自分が引き受けてきた。もし病気になれば、ほかのたちは練習する所を失う。皆で使う教なのに、子の体調や懐具で決まってしまうのは、やはりおかしい。
「支配さん、今すぐには契約できません。代表を変えたいんです」
栗田は顔をげた。「ほかに指導できるがいるんですか」。子は首を振った。「教える役は続けます。でもおと利用を決めるは、別にいた方がええとうんです」。栗田は帳簿を閉じ、し考えてから「個の集まりのままやと、としては連絡先が必ですよ」と言った。子は、責任者を複数決める方法を皆と相談すると約束した。
京子はその話を聞いて驚いた。「あんたが始めたんやのに、代表をやめるの?」。子は「自分の物にするために始めたんと違うから」と答えた。澄子も困った顔をした。「でも、誰が嫌な役を引き受けるんです」。誰もすぐにはを挙げなかった。練習は楽しい。けれど会代を集め、の欠席にをげ、参加者同士の満を聞く仕事は、誰にとっても気がかった。
桂子が茶を入れながら言った。
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「代表をに押しつけたら、子さんと同じことの繰り返しやで」。そこで、会計は澄子、利用の連絡は京子、受付の当番表はたみが取りまとめることになった。子は指導と、しく来るへの説を担当する。何もできないとっていたたみが「字ならきゅうけるよ」と笑い、用したに当番の名をき始めた。
子は教の名も変えようと提案した。「榎本子ボウリング教」ではなく、「あさひ婦ボウリング会」。それまで黙っていた初枝が「婦会というと、また決まっただけの集まりみたいや」と言った。仕事をしているも、にいるも、夫のいないもいる。では何と呼ぶか。分も話して、結局「町のボウリング仲」というさな名に落ち着いた。板を見たが何の集まりか分かるよう、由美がに「初めての方もどうぞ」ときした。
決まったのは名ばかりではない。会費を払いできないのために回参加の枠を残すこと、休むに理由を無理に聞かないこと、教の伝いをするへは必な交通費を記録して払うこと。子は皆がつずつ約束をすたび、へいた。自分で考えたには気づかなかった規則が、増えていった。
ただし、決めたことには困った面もある。会議をしているは練習できず、見が割れれば帰りも遅くなる。
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子は度、つい「もう私が決めます」と言いかけた。京子がそれを見抜いたように笑った。「先、投げると同じや。力みすぎ」。子はをつぐみ、自分にもまだ学ぶことがほどあるとった。
そのの夕方、栗田へしい契約案を持参した。代表者をの連名とし、連絡係を子に置く。栗田は最初こそ驚いたが、複数の責任者がいるならとしても困らないと認めた。「契約は結べます。ただし、最初のか分は先にお願いします」。現実の商売は、名を変えただけではかない。皆が集めたと残りの賞をわせても、わずかにりなかった。
京子は「次の練習を回休んで、その分を先払いに回そう」と言った。初枝は「回休めば、仕事を休まんで済むもいる」と賛成した。子は迷った。始めたばかりの練習会なのに、わざわざ休む選択をするとはわなかったからだ。しかし回することで、先のかが守れるならがある。栗田は類を預かり、期までに分を納めればよいとした。
帰りの駅で、子は信夫から借りたままだった自宅の鍵をので転がした。以はへ入るための鍵だとっていた。いまは、入ろうとえばいつでも入れるのに、ただ入るだけでは変わらないことがあるとっている。桂子のへ戻ると、由美がしい会の名札を描いて待っていた。
子はそれを見て、のトロフィーより嬉しくなった。
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