"昭和46年、優勝した妻に夫が告げた「帰るな」" 第17話
夫がつくった昼飯
信夫は曜の朝、由美とで買い物へかけた。以は子から渡された買い物袋を持つ役しかしていなかったが、このは自分で献を考えていた。魚で鯖を切れ買い、百で松菜を選んだ。会計の、値段のさに驚いた。子が同じで度の事と弁当を用していたことをうと、にしたことのない細かな夫が見えてくる。
由美は「料理うまくなったな」とは言わなかった。焼いた鯖の皮が鍋にくっつき、噌汁のもによって違う。けれど、父が「帰りに何かいるか」と尋ねるようになったことは嬉しかった。曜の昼、で事をしていると信夫が「母ちゃんにも持っていこか」と言った。由美はし考え、「差し入れするより、緒にべるか聞いてみたら」と答えた。
信夫は桂子のへ話し、子に昼をべに来ないかと誘った。子は「の仕事を伝ってるから、夕方なら」と答えた。以なら自分の都にわせて帰ってくるよう言っただろう。信夫は「ほんなら夕方、でべよう」と返した。話を切った、自分が何度も妻に命令していたことをいした。を誘うのと、帰ってこいと命じるのは違う。
夕方、子がへ来ると、信夫はさな鍋をした。鯖の噌煮だった。「昼につくったら、どうもが濃うなってな」
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。子はべ、「し濃いね」と答えた。信夫はむっとせず、「をしたらよかったか」と聞いた。子は「煮詰めるに見したらええよ」と説し、で笑った。由美は箸を置き、そんな景を久しぶりに見たとった。
、信夫は「教の契約はどうなった」と尋ねた。子はか分の先払いが必で、回練習を休むことにしたと説した。「ほな、りんは俺が貸したろか」。信夫は本気だった。子はすぐに断りかけ、やめた。夫が助けようとしている気持ちを、以の命令と同じに扱うのも違うからだ。「ありがたい。でも、皆で使うおやから、皆で決めたい。私の夫やからという理由では借りられへん」
信夫は「そうか」とうなずいた。妻の答えはたい拒絶ではなかった。それでも、寂しさは残った。族なのだからを貸せることもあるはずだとったのである。子は器を運びながら続けた。「のことでは、これから緒に相談したい。教のことは会の皆と相談する。それだけやねん」。信夫はようやく、妻が何を分けようとしているのか分かった。
由美はその夜、父にデザイン学の費用を見せた。信夫は数字を読んでうなずき、「毎このくらいなら、おが働きながら払えるかもしれんな」と言った。由美は「からもししてもらえたら助かる」
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と正直に頼んだ。信夫は「せる額を決めよう」と答えた。父に初めて対等に相談できた気がして、娘は嬉しかった。
子は帰り際、信夫からしく洗った弁当箱を見せられた。「、これに何入れたらええとう」。子は笑い、「めてもおいしいもの。朝から揚げ物する必はないよ」と助言した。信夫は真面目に聞き、由美が「父ちゃん、母ちゃんの教に入ったら、料理も達するとってるやろ」と笑った。子は「私はボウリングだけやで」と返した。
駅まで送るで、信夫はを止めた。「子、あのはすまんかった。帰るな言うたのは、言いすぎや」。子は夫を見た。何度もので聞きたかった言葉だったが、いざ聞くとすぐには返事がなかった。「言われた、ほんまに怖かったんやで」とだけ答えた。信夫は「そうやろな」と言った。子はその返事が、許しを急がせない言葉であることを嬉しくった。
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