みかん小説
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"7年伸ばした髪を妹に切られた日、婚約者まで笑った" 第4話

の引っ越し

荷物を詰め始めて最初に気づいたのは、私自の持ち物が驚くほどないことだった。器棚の段には母の好みの皿が並び、リビングの棚には美緒の写真集や雑貨が詰まっている。私がかけて買ったものといえば、仕事用の本と古いノートパソコン、着慣れたくらいだった。にいるのくを族の用事に使ってきたのだから、当然といえば当然だった。

父の通院予定、薬の残量、公共料の契約番号、美緒の資格試験の締め切り。私はそれらを枚のにまとめ、蔵庫に貼った。父の薬は薬局に話して次の受診を確認し、母には「来から各自で管理してね」とだけ伝えた。私は族の活を壊したいのではなかった。自分がいなくても困らないよう、必な報を残してかられたかったのだ。

私名義でて替えていた用品の定期購入も、次の更から止めることをらせた。計の座は父母の名義で、私が勝に触ることはできないし、触るべきでもない。必な連絡先を渡し、引き落とし方法を確認してもらうだけにした。暮らしをえることと、いつまでも代し続けることは違う。

修への返事はい文にした。婚約を解消したいこと、会の予約を取り消したこと、指輪は宅配便で返送すること。

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理由には「私が傷つくとりながら、あなたが繰り返しそれを笑いにしたため」といた。い言い争いをしても、彼は「冗談だった」の言で片づけるだろう。私は送信履歴と受領確認が残る方法を選び、返送の伝票も保管した。

目の朝、美緒は廊に脚をてていた。私の部の扉がく位置を測り、スマートフォンの角度を変えている。「今夜は特の企画があるんだから、までに帰ってきてよ」と笑った。テーブルのには、蛍緑のヘアスプレーと、派なかつらの袋が見えた。切られた髪がようやくったばかりなのに、今度はそれを汚すつもりなのだろう。

「今、かけるから。夜は戻らない」

美緒は「へえ、? 今度は何もつかな」と笑い、父も「子供のころだってのところで腹が減って帰ってきただろ」と言った。母は「婚約で気がっているのよ。好きにさせなさい」と片づけた。修は玄関先で私のキャリーケースを見ても、「帰ってきたらちゃんと話そう」としか言わなかった。私が何を言っても本気にされないことは、もう分かっていた。

駅までのタクシーに乗ると、運転が「ご旅ですか」と聞いた。「仕事で引っ越すんです」と答えると、「それは変ですね。しいは慣れるまで疲れますよ」と言われた。たったそれだけの会話なのに、胸が詰まった。

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族は私の荷物を見て笑ったが、初対面の運転は、らない所で暮らし始める苦労を像してくれた。

幹線の窓から見える景が変わるころ、津田さんから「部の鍵は管理会社で受け取れます。は無理に社しなくていい」と連絡が来た。私は「予定どおり朝からきます」と返信した。仕事を逃げにしたいのではない。自分で選んだ所に、きちんとをつけてちたかった。窓に映るい髪の女は、よりしだけ背筋が伸びて見えた。

津田さんはさらに、赴任の評価面談では私の判断をきちんと記録すると伝えてくれた。以の部署では、私が急な仕事を引き受けても「林ならできる」で終わることがかった。今度は成果も失敗も、誰が何をしたか残る。責任が増えることにはあったが、その仕組みは私にとってかった。

転勤を決めてから、夜に何度もで目が覚めた。族とれて本当にやっていけるのか、仕事で失敗したら帰る所がないのではないか。けれど、があることと、違った選択をしたことは同じではない。私は引き継ぎの資料を見直し、聞くべきことを帳にいた。

夕方、福岡の駅に着いた。部にはまだ段ボールが積まれていたが、窓をけると、らないの匂いがした。母から「夕は何に帰るの」

という連絡が入り、続いて美緒から「に絶対ね。画の準備してるから」と送られてきた。私は返事をせず、仕事用の鞄からしい社員証を取りした。

そのとき、修から通のメッセージが届いた。「会がキャンセルになったって、どういうことだ」。私は返信欄をき、あらかじめ決めていた言葉を打った。『面を送りました。婚約は解消します。私は福岡で暮らします』。送信を押した直、端末が震え始めた。私は音を消し、段ボールの封を切った。

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