"7年伸ばした髪を妹に切られた日、婚約者まで笑った" 第19話
招待しないという返事
瀬への返事をしたのは、それからかだった。で休の朝を作っているとき、私は「緒に暮らしたいとっています」と伝えた。瀬は包丁を置き、何度も「本当に?」と確かめたあと、ようやく笑った。私たちはきな式を急がず、まずむ所と仕事の予定を相談した。結婚は誰かに見せるための事ではなく、毎の暮らしを緒に作ることだとっていた。
族には、結婚が決まったことをでらせた。式は親しいだけでうので、招待しないことも記した。母からは数、「らせてくれてありがとう。幸せを願っています」とだけ返事が届いた。以の母なら、親が呼ばれないのは世体が悪いとったかもしれない。私は封筒を読み返し、引きしにしまった。返事を送るかどうかは、まだ決めなかった。
母は所のから「娘の式に呼ばれないなんて、何があったの」と聞かれたとき、私のせいにはしなかった。「親として娘を事にできなかったんです」とだけ答えた。詳しい事を言いふらすことも、私に許しを求めるための材料にすることもしなかった。母にできることはなかったが、なくとも同じ過ちをねない選択はできた。
式の担当者には、招待状を持たないが来ても案内しないよう、事に相談しておいた。
広告
何も起こらないことを願ってはいたが、当のを偶然に任せたくなかった。瀬は「必な続きなら緒に確認しよう」と言い、私は「ありがとう。でも連絡は私からするね」と答えた。彼はその役割を尊してくれた。
父はを読んだ夜、「親が娘の結婚式にられないなんて」とった。美緒も瞬、「そんなのひどい」と言いかけた。しかし母が「私たちは、凛の事なに何度も笑ってきたのよ」と言うと、は黙った。顔わせのの、婚約写真を撮るの髪、何度も勝に撮った画。祝うべき面で、私を困らせることばかり考えていたのは自分たちだった。
「福岡へって、くからでも見ればいいんじゃないか」
父がそう提案すると、母は首を振った。「招待しないっていてあるの。見にくのも、凛が嫌がるかもしれない」。父は「親だぞ」と言ったが、母は「親だからこそ、今度は約束を守りたい」と答えた。美緒は元のスマートフォンを見つめた。昔なら式を探しして驚かせる画を撮ろうとしただろう。今は、その考えがどれほど勝か分かるようになっていた。
修のにも、私が結婚するという話は届いた。共通のが気を遣いながららせてくれたのだ。修は「そうか」とだけ答え、帰宅してからいあいだ何もできなかった。彼の部には、私が返した婚約指輪の箱がまだあった。
広告
緒にいたのだから、最には自分のところへ戻るとっていた。けれど私は、戻る所を探していたのではなく、自分で暮らす所を作っていたのだ。
修は度、私のしい連絡先をに尋ねようとした。しかし相から「本がらせていないなら、教えられない」と断られた。修はそこで初めて、自分の気持ちを伝える権利があることと、相に聞いてもらう権利があることは違うとった。彼は端末を伏せ、返事の来ない文章を打つのをやめた。
美緒は結婚式の、私にもう度をこうとして、やめた。祝福の言葉を送りたい気持ちはあったが、それを受け取るかどうかで私を悩ませたくなかった。代わりに、次の資格試験に格したことを母に報告した。母は「凛にらせる?」と尋ねず、「頑張ったね」と言った。美緒はしだけ笑った。姉がいなくても、自分のをめていかなければならない。
私は式の夜、い髪を自分でえ、翌のを子に掛けた。鏡ので、あののことをいさないわけではなかった。けれどは、誰かに何かを奪われるではない。自分で選んだたちと、自分で決めたを過ごすだ。私は携帯話の通を切り、静かな部で眠った。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
妹の手術前に「家族やめれば?」――私はドナーを辞退した
幼い頃から父と継母に冷遇され、妹・直美の引き立て役として育った広美。家を出て新体操の夢を追っていた彼女は、重い肺の病気を患う妹を救うため、生体肺移植のドナー候補になることを決意する。 ところが手術前の食事会で、広美の席だけが用意されていなかった。 「なんで来たの? 家族やめれば?」 妹の冷酷な一言をきっかけに、広美は臓器提供を辞退する。さらに病院で見つかったのは、身に覚えのない署名がされた同意書だった。 家族の裏切りと隠された不正に向き合い、広美は自分の人生と夢を取り戻せるのか。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係2.9万字5 0 -
完結第20話
借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算
父の急逝により、43歳の真帆が引き継ぐことになったのは、信州の古びた温泉旅館と約3億円の借金だった。夫の拓也は「貧乏になる前に離婚してくれ」と冷たく言い放ち、ただ一人、17歳の息子・勇気だけが母について行くと決める。 亡き父の宿を守ろうとする真帆だったが、遺された宿日誌から夫の恐ろしい裏切りが発覚。さらに離婚協議では、16年間つけ続けた家計簿が思わぬ反撃の切り札となる。 夫に見捨てられた母と息子は、3億円の借金を抱えた旅館で新たな人生を切り開けるのか――。人生逆転|真実|孤獨|親子関係2.4万字5 0 -
完結第16話
庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句
夫を亡くした62歳の田所美津子は、長年暮らした家を売り、菜園付きの一軒家で新生活を始めようとしていた。 ところが長男の琢磨と嫁の真理亜は、相談もなく同居を宣言。「断るなら一生介護しない」と脅しまでかけてくる。 夫の葬儀で遺産を要求された美津子は、もう息子に振り回されないと決意していた。 長女の美香と密かに進めていたのは、誰にも知らせていないもう一つの引っ越し計画。 何台ものトラックを連ね、当然のように新居へ乗り込んだ長男夫婦。だが引っ越し当日、二人は思いもよらない事実を知ることになる――。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|介護2.4万字5 0 -
完結第10話
義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私
34歳の藤崎菜央は、義父の古希祝いのため、親族57人の食事会を一人で準備し、手付金30万円も立て替えていた。ところが当日、会場に用意されていたのは55人分の席だけ。消されていたのは、菜央と13歳の娘・小春の席だった。 義妹と義母は「連れ子は家族ではない」と言い放ち、夫の啓介さえ娘をかばおうとしない。 菜央はホテルの支配人に「予約名義は私です」と告げ、契約の名義変更を求める。だが、本当の裏切りは三日前の予約変更記録に隠されていた――。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場1.4万字5 1 -
完結第14話
「3月末に出ていけ」離婚を迫る夫が知らない真実
結婚17年目、42歳の立花伊佐美は、単身赴任中の夫・秀哉から突然離婚を突きつけられた。 「3月末までに息子と家を出ていけ」 長年家庭を支えてきた妻に、夫はわずかな解決金しか渡さないと言い放つ。ところが、赴任先を訪れた伊佐美は、夫が別の女性と6歳の息子を育て、もう一つの家庭を築いていた事実を知る。 絶望する伊佐美に手を差し伸べたのは、夫と不仲だった義父・信造だった。 そして3月28日。新しい妻子を連れて家を奪いに来た秀哉は、まだ知らなかった。自分の知らないところで、すべてが変わっていたことを――。夫婦|真実|親子関係|修羅場|不倫1.9万字5 2 -
完結第20話
「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断
義父の死後、義母との同居を始めて十年。40歳の香織は仕事と育児を両立しながら、家事も義母の世話も一人で担ってきた。 しかし義父の法事の日、義母は親族の前で「遺産は全部娘に渡す。嫁には一円もやらない」と笑いながら宣言する。 限界を迎えた香織が「では出ていきます」と告げると、夫も五歳の息子も一緒に家を出ることを決意。 三人が去った途端、義母の生活は崩れ始める。さらに、香織が十年間隠し持っていた亡き義父のノートには、誰も知らない前田家の秘密が記されていた――。人生逆転|嫁姑|介護|金銭問題2.4万字5 3 -
完結第22話
離婚裁判で7歳の娘が見せた秘密の映像
夫の健太郎から突然離婚を突きつけられた詩音。七歳の娘・柚月の親権も、自分が貯金を出した家も奪われようとしていた。 夫が提出したのは、詩音を「母親失格」に仕立てる写真と専門家の意見書。しかし、資料の矛盾や消えた預金を調べるうちに、夫の隠された計画が浮かび上がる。 そんな中、柚月は画面の割れた古いタブレットを頑なに手放そうとしなかった。 そして裁判の日、娘が口にした思いがけない言葉。 「裁判長、ママも知らないもの、見せていい?」 七歳の娘が守り続けていた秘密とは――。人生逆転|夫婦|裡の顔|親子関係3.1万字5 16