"離婚裁判で7歳の娘が見せた秘密の映像" 第2話
消えた活費
翌朝、健太郎が勤するのを待ってへ向かった。窓で事を話すと、担当者は本名義の座について私に示できる範囲は限られると丁寧に説した。私は通帳と計の記録を持って帰り、以に保していた入通のメールを探した。半分の通は削除されずに残っていた。毎しずつ減っていたとっていた貯蓄が、回のきな振込で急に消えていた。
振込先には同じ名が繰り返されていた。『リベルテ企画同会社』。最初は百万円、次は百万円、そのも額を変えながら、計千百万円が送られている。私はその会社をらない。健太郎から事業を始めるとも、投資をするとも聞いていなかった。しかも最の振込は、婚の類が届くだった。
私は結婚の貯通帳を入れていた箱をけた。を買ったの売買契約と、の振込控えは無事だったが、祖母から譲り受けた指輪と、母に結婚祝いとしてもらったさな真珠のネックレスが消えていた。価な品ではない。それでも勝に持ちされたとった、通帳の数字以に息が詰まった。夫は額だけでなく、私が自分のものだとっていた記憶まで処分できると考えているらしかった。
昼休みのを狙って、昔の同僚である美に話をかけた。
広告
経理課で隣の席だった彼女は、私の話を最まで聞いてから「で類に返事しないで」と言った。美は現、法テラスの制度を利用して弁護士に相談したをっているという。紹介されたのは駅裏のさな事務所で婚事件を扱う藤啓介弁護士だった。私は相談予約を入れ、計簿と写真を鞄に詰めた。
「奥さんが働いていないから財産分与はゼロ、という理屈にはなりません」
藤先は最初にそう言った。私はその言で、子に座っていることができなくなりそうだった。先は、婚姻に形成された財産と結婚からの財産を分けて調べること、子の監護実績を記録すること、相方の言葉に反応して利な約束をしないことを順に説した。弁護士費用についても、利用できる制度や分割の相談を具体に案内してくれた。
「ご主が娘さんを普段どのくらい世話していましたか。送り迎え、病院、学との連絡をいせる範囲で」
私は分の来事をにした。夜の発、保育園の呼びし、運会の弁当、喘息を疑われて通院した。話しているうちに、健太郎が娘の好きなべ物をらないことより、私自が毎の世話を当たりとして記録してこなかったことに気づいた。先は「今からでも残しましょう」
広告
と言い、学からのメールや受診記録を集めるよう勧めた。
事務所をる、藤先は私に枚のを渡した。そこには相談内容を理するための項目が並んでいた。の通、宅の類、娘の通院歴、夫から届いたメッセージ。混乱しているので、何から始めればいいのか分からなかった私には、その順番がありがたかった。帰りのでつずつ印をつけると、恐怖のにも自分でできる仕事が残っているとじた。
帰宅すると、夫は娘とリビングでしいタブレットを封していた。柚はきな箱を抱えて嬉しそうに笑っている。健太郎は私を見て「古いのは捨てていいな。あんな割れた画面、危ないだけだ」と言った。娘は返事をせず、箱の角を指でなぞった。私が「のはどうしたの」と聞くと、柚は瞬だけ父親の顔を見た。
その夜、私は夫に活費の追加を求めるメッセージを送り、返事を保した。『無駄遣いするには渡せない』。続けて夫から届いた写真には、私が買った覚えのないブランドバッグの領収が写っていた。購入者欄には、私の名が印字されていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
妹の手術前に「家族やめれば?」――私はドナーを辞退した
幼い頃から父と継母に冷遇され、妹・直美の引き立て役として育った広美。家を出て新体操の夢を追っていた彼女は、重い肺の病気を患う妹を救うため、生体肺移植のドナー候補になることを決意する。 ところが手術前の食事会で、広美の席だけが用意されていなかった。 「なんで来たの? 家族やめれば?」 妹の冷酷な一言をきっかけに、広美は臓器提供を辞退する。さらに病院で見つかったのは、身に覚えのない署名がされた同意書だった。 家族の裏切りと隠された不正に向き合い、広美は自分の人生と夢を取り戻せるのか。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係2.9万字5 25 -
完結第20話
借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算
父の急逝により、43歳の真帆が引き継ぐことになったのは、信州の古びた温泉旅館と約3億円の借金だった。夫の拓也は「貧乏になる前に離婚してくれ」と冷たく言い放ち、ただ一人、17歳の息子・勇気だけが母について行くと決める。 亡き父の宿を守ろうとする真帆だったが、遺された宿日誌から夫の恐ろしい裏切りが発覚。さらに離婚協議では、16年間つけ続けた家計簿が思わぬ反撃の切り札となる。 夫に見捨てられた母と息子は、3億円の借金を抱えた旅館で新たな人生を切り開けるのか――。人生逆転|真実|孤獨|親子関係2.4万字5 0 -
完結第16話
庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句
夫を亡くした62歳の田所美津子は、長年暮らした家を売り、菜園付きの一軒家で新生活を始めようとしていた。 ところが長男の琢磨と嫁の真理亜は、相談もなく同居を宣言。「断るなら一生介護しない」と脅しまでかけてくる。 夫の葬儀で遺産を要求された美津子は、もう息子に振り回されないと決意していた。 長女の美香と密かに進めていたのは、誰にも知らせていないもう一つの引っ越し計画。 何台ものトラックを連ね、当然のように新居へ乗り込んだ長男夫婦。だが引っ越し当日、二人は思いもよらない事実を知ることになる――。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|介護2.4万字5 0 -
完結第10話
義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私
34歳の藤崎菜央は、義父の古希祝いのため、親族57人の食事会を一人で準備し、手付金30万円も立て替えていた。ところが当日、会場に用意されていたのは55人分の席だけ。消されていたのは、菜央と13歳の娘・小春の席だった。 義妹と義母は「連れ子は家族ではない」と言い放ち、夫の啓介さえ娘をかばおうとしない。 菜央はホテルの支配人に「予約名義は私です」と告げ、契約の名義変更を求める。だが、本当の裏切りは三日前の予約変更記録に隠されていた――。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場1.4万字5 112 -
完結第14話
「3月末に出ていけ」離婚を迫る夫が知らない真実
結婚17年目、42歳の立花伊佐美は、単身赴任中の夫・秀哉から突然離婚を突きつけられた。 「3月末までに息子と家を出ていけ」 長年家庭を支えてきた妻に、夫はわずかな解決金しか渡さないと言い放つ。ところが、赴任先を訪れた伊佐美は、夫が別の女性と6歳の息子を育て、もう一つの家庭を築いていた事実を知る。 絶望する伊佐美に手を差し伸べたのは、夫と不仲だった義父・信造だった。 そして3月28日。新しい妻子を連れて家を奪いに来た秀哉は、まだ知らなかった。自分の知らないところで、すべてが変わっていたことを――。夫婦|真実|親子関係|修羅場|不倫1.9万字5 34 -
完結第20話
「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断
義父の死後、義母との同居を始めて十年。40歳の香織は仕事と育児を両立しながら、家事も義母の世話も一人で担ってきた。 しかし義父の法事の日、義母は親族の前で「遺産は全部娘に渡す。嫁には一円もやらない」と笑いながら宣言する。 限界を迎えた香織が「では出ていきます」と告げると、夫も五歳の息子も一緒に家を出ることを決意。 三人が去った途端、義母の生活は崩れ始める。さらに、香織が十年間隠し持っていた亡き義父のノートには、誰も知らない前田家の秘密が記されていた――。人生逆転|嫁姑|介護|金銭問題2.4万字5 14 -
完結第18話
「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃
骨折をきっかけに高齢者施設へ入った72歳の黒田春江。息子の直樹は「家は俺が見ておく」と約束したが、回復後も「家が傷んでいる」と帰宅を拒み続けた。やがて面会も途絶え、気づけば四年。76歳になった春江は、相談員の助けを借りて自宅を訪ねる。ところが、荒れているはずの家は美しく整えられ、鍵まで交換されていた。さらに玄関の向こうから聞こえてきたのは、誰かの足音。息子が隠していた秘密とは何なのか。家族への信頼と、自分の人生を取り戻すための静かな反撃が始まる。親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.5万字5 25