"「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断" 第6話
の痕跡との脱
「織さん! 孝介! 嘘でしょ!? 待ちなさいよ、話しおうって言ってるじゃないの!」
居の襖を乱暴にけ放ち、義母が狂乱状態で階の私たちの寝へ駆けがってきた。 階段をドタドタと踏み鳴らす音は、先ほどまでの優雅な奥様の気取りなど微も残っていなかった。 寝では、私と孝介が黙々とクローゼットからスーツケースを引きし、を詰め込んでいる最だった。陽太は自分のさなリュックサックに、あの汚れたウサギのぬいぐるみ「ミミちゃん」と、お気に入りの絵本を静かに押し込んでいる。
「孝介! 本当に母親を捨てる気なの!? 親孝者! ご所に何て言えばいいのよ! 男夫婦に逃げられたなんてられたら、私の世体が丸潰れじゃないの!」 義母は私の腕を掴もうとを伸ばしてきた。 だが、そのを鋭く払いのけたのは、孝介だった。
「触るな!」 孝介の声が、畳の寝に鳴のように轟いた。 「世体だと!? 母さんが配してるのは、俺たちのことでも陽太のことでもなく、結局自分の世体だけか! 織が、どれだけのいでこのを支えてきたか、母さんは度でも考えたことがあるのか!」
「な、何よ……! 私はまわせてあげてたじゃない! 賃も取らずに養ってあげてたのに、恩を仇で返す気!?」
広告
「養ってただと?」 孝介は笑を浮かべ、壁のクローゼットから枚の預通帳を突きつけた。 「活費も費も、毎俺と織の座からきっちり母さんの座へ振り込んでたんだよ! 費も用品も織が全部してた! 母さんが払ってたのは、固定資産税と自分の贅沢品だけだろ! どこが『養ってやってた』だ!」
義母は言葉に詰まり、をパクパクと魚のようにかした。 その背から、恐る恐る階段をがってきたひろみさんが、震える声でを挟んだ。 「お、お兄ちゃん……お母さんも言い過ぎたって反省してるから……今はいったん落ち着いて……」
「ひろみ」孝介は妹を瞥し、静かに告げた。 「お、さっき母さんから『も預も全部おに残す』って言われて、ありがたく貰うって言ったよな。……なら、これからの母さんの面倒も、このの維持管理も、全部おが引き継げよ。それが『全財産を貰う』の果たすべき義務だろ」
「えっ……!?」 ひろみさんの顔から、急速に血の気が引いていった。 「わ、私!? 無理だよ、私には自分の庭があるし、子供たちの学だってあるのに……!」 「俺たちにだって庭がある。陽太の育児がある。それを、織に押し付けて甘えてきたのは、母さんだけじゃない、おもだ」
が絶句する、荷造りはわずかで完した。 暮らしただったが、持ちす荷物は驚くほどなかった。
広告
族の季節の、陽太の保育園用具、私の仕事具、そして通帳類。 型の具やは、すべて義父がに買い揃えたものか、義母の好みの調度品ばかりだった。私自の志で買いした私物など、段ボール箱数個に収まってしまう程度しかなかったのだ。
午半。 の斜陽がくを落とす玄関先で、私は最に靴を履き、振り返った。 廊の奥の暗がりに、義母が、幽霊のようにち尽くしていた。 「……織さん」 掠れた声で、義母が呟いた。 「そのに持ってる黒いノート……何なのよ。さっきから事そうに抱えて……」
私は胸に抱いた義父の学ノートを、静かに見つめ返した。 「お義父さんの遺品です。に私が預かりました。……今はお見せできませんが、いずれが来たら、お義母さんにお返しします」
「な、何よそれ……お父さんが私に内緒で何か残したっていうの!?」 喚きてる義母の声を背で聞き流しながら、私は度も振り返ることなく、玄関の引き戸を閉めた。 パチンと掛けの落ちる乾いた音が、の私の隷属の終焉を告げていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算
父の急逝により、43歳の真帆が引き継ぐことになったのは、信州の古びた温泉旅館と約3億円の借金だった。夫の拓也は「貧乏になる前に離婚してくれ」と冷たく言い放ち、ただ一人、17歳の息子・勇気だけが母について行くと決める。 亡き父の宿を守ろうとする真帆だったが、遺された宿日誌から夫の恐ろしい裏切りが発覚。さらに離婚協議では、16年間つけ続けた家計簿が思わぬ反撃の切り札となる。 夫に見捨てられた母と息子は、3億円の借金を抱えた旅館で新たな人生を切り開けるのか――。人生逆転|真実|孤獨|親子関係2.4万字5 0 -
完結第16話
庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句
夫を亡くした62歳の田所美津子は、長年暮らした家を売り、菜園付きの一軒家で新生活を始めようとしていた。 ところが長男の琢磨と嫁の真理亜は、相談もなく同居を宣言。「断るなら一生介護しない」と脅しまでかけてくる。 夫の葬儀で遺産を要求された美津子は、もう息子に振り回されないと決意していた。 長女の美香と密かに進めていたのは、誰にも知らせていないもう一つの引っ越し計画。 何台ものトラックを連ね、当然のように新居へ乗り込んだ長男夫婦。だが引っ越し当日、二人は思いもよらない事実を知ることになる――。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|介護2.4万字5 0 -
完結第10話
義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私
34歳の藤崎菜央は、義父の古希祝いのため、親族57人の食事会を一人で準備し、手付金30万円も立て替えていた。ところが当日、会場に用意されていたのは55人分の席だけ。消されていたのは、菜央と13歳の娘・小春の席だった。 義妹と義母は「連れ子は家族ではない」と言い放ち、夫の啓介さえ娘をかばおうとしない。 菜央はホテルの支配人に「予約名義は私です」と告げ、契約の名義変更を求める。だが、本当の裏切りは三日前の予約変更記録に隠されていた――。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場1.4万字5 112 -
完結第22話
離婚裁判で7歳の娘が見せた秘密の映像
夫の健太郎から突然離婚を突きつけられた詩音。七歳の娘・柚月の親権も、自分が貯金を出した家も奪われようとしていた。 夫が提出したのは、詩音を「母親失格」に仕立てる写真と専門家の意見書。しかし、資料の矛盾や消えた預金を調べるうちに、夫の隠された計画が浮かび上がる。 そんな中、柚月は画面の割れた古いタブレットを頑なに手放そうとしなかった。 そして裁判の日、娘が口にした思いがけない言葉。 「裁判長、ママも知らないもの、見せていい?」 七歳の娘が守り続けていた秘密とは――。人生逆転|夫婦|裡の顔|親子関係3.1万字5 19 -
完結第18話
「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃
骨折をきっかけに高齢者施設へ入った72歳の黒田春江。息子の直樹は「家は俺が見ておく」と約束したが、回復後も「家が傷んでいる」と帰宅を拒み続けた。やがて面会も途絶え、気づけば四年。76歳になった春江は、相談員の助けを借りて自宅を訪ねる。ところが、荒れているはずの家は美しく整えられ、鍵まで交換されていた。さらに玄関の向こうから聞こえてきたのは、誰かの足音。息子が隠していた秘密とは何なのか。家族への信頼と、自分の人生を取り戻すための静かな反撃が始まる。親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.5万字5 25 -
完結第10話
拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃
九歳の娘を育てながら、商社の経理部で働く森田咲。ある朝、会社のロビーで財布を拾い、管理員立ち会いのもと持ち主の女性主任へ返却した。 ところが直後、主任が突然押しかけてきた。 「財布に入っていた五万円がない! あなたが盗んだんでしょう!」 同僚の前で泥棒扱いされ、母子家庭であることまで侮辱された咲。しかし彼女は取り乱さず、一枚の受領書を取り出す。 証拠によって反撃を始めた咲だったが、会社はなぜか彼女を重要業務から外してしまう。やがて、財布の紛失騒動の裏に隠された別の疑惑が浮かび上がり――。職場逆転|裡切られた|裡の顔|金銭問題1.8万字5 49 -
完結第20話
7年伸ばした髪を妹に切られた日、婚約者まで笑った
七年間大切に伸ばしてきた髪を、妹の美緒に突然切り落とされた凛。ところが両親も婚約者の修も、泣きそうな彼女を見て笑うばかり。それどころか、凛が泣き出すまでの時間を賭けていた。 長年、家族のために自分の希望を諦めてきた凛は、ついに婚約を破棄し、遠く福岡への転勤を決意する。 だが、彼女が去ったあと、家族が遊び半分で撮影していた動画から、思いがけない事実が明らかになっていく。 失った七年間を取り戻すように、新しい人生を歩み始めた凛。彼女を笑い続けた人々を待ち受ける結末とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|真相|第二の人生2.9万字5 131