"「嫁には1円もやらない」義母へ、家族3人の決断" 第18話
駅のファミレスと、孫の選択
がけた旬の曜。 陽太が「バーバ、元気かなあ」とぽつりと言った。 子どもにとって、玩具を買ってくれ、を撫でてくれた祖母の記憶は、の確執とは無縁のものだ。 私たちは約束通り、義母との「の面会」をセッティングした。 所は、田のではなく、駅のるいファミリーレストランだった。
約束の午。 のボックス席に、義母はすでに座って待っていた。 タクシーで乗り付けたという義母の姿を見て、私は胸の奥でさく息を呑んだ。 わずか数ヶのに、義母は回りも回りもさく縮んだように見えた。 背は微かに丸まり、杖をテーブルの脇にてかけている。 派な毛皮や貴属はにつけておらず、なウールのコートを着て、膝のには陽太のために買ってきたであろう菓子折りの袋を事そうに抱えていた。
「陽太ちゃん……!」 陽太の姿を見るなり、義母の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。 「きくなったわねえ……! バーバに会いに来てくれたのね!」 陽太は駆け寄り、義母の隣に座った。 「バーバ、これあげる! 保育園で作った折りのコマだよ!」 「まあ……! ありがとう、ありがとうねえ……」
義母は震えるで折りを受け取り、何度も何度も陽太のを撫でた。 そのつきには、かつての傲な気配は微もなく、ただ孫をおしむの老いた祖母の愁だけが漂っていた。
広告
運ばれてきたパンケーキを頬張る陽太を、義母はおしそうに見つめながら、向かいに座る私と孝介へ、恐る恐る線を向けた。
「織さん……孝介……。おの方は、どう……?」 「ええ、適に暮らしています」私が穏やかに答えると、義母はさく肩を落とし、うつむいた。 「そう……。あのね、織さん。私、植の親方に自分でお話したのよ。ノートにいてあった通りに、の消毒をお願いして……。お寺の管理費も、自分で納めにってきました」
「そうですか。無事に済んで何よりです」 私の返答は、どこまでも礼儀正しく、だが決して線を越えさせない静けさを保っていた。 義母は何かを言いかけ、言葉を呑み込み、やがて計の針が分を指した、すがるような声で陽太に囁いたのだ。
「陽太ちゃん……今、バーバのおに泊まりに来ない? 美しいお肉、買ってあるのよ……?」 座席の空気が、瞬だけ止まった。 義母の瞳には、かつてのように「孫を奪い返せば、息子夫婦も戻ってくるはずだ」という、かすかな打算のが揺らめいていた。
陽太はフォークを置き、義母の顔をじっと見つめた。 そして、私のをぎゅっと握りしめると、首を横に振ったのだ。
「ううん。ぼく、ママとパパのおに帰る」
「え……?」義母の顔が、凍りついた。 「ぼくのお部、お様がいっぱい入って、あったかいんだよ。ミミちゃんも待ってるもん。
……ママと緒に帰る」
く、無垢な、だが決定な拒絶。 歳の子どもは、どちらが自分にとっての「本当の庭」なのかを、本能でっていたのだ。 義母のが、力なく膝のに落ちた。 「そう……そうよね。ママと緒がいいわよね……」
会計を済ませ、のでタクシーに乗り込む義母の背を、私たちはで見送った。 窓の向こうから、義母が何度も何度もを振っていた。 その瞳に溢れていたのは、者を侮辱し、踏みにじり続けたが、の黄昏に支払わねばならない「完全な孤独」の代償だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算
父の急逝により、43歳の真帆が引き継ぐことになったのは、信州の古びた温泉旅館と約3億円の借金だった。夫の拓也は「貧乏になる前に離婚してくれ」と冷たく言い放ち、ただ一人、17歳の息子・勇気だけが母について行くと決める。 亡き父の宿を守ろうとする真帆だったが、遺された宿日誌から夫の恐ろしい裏切りが発覚。さらに離婚協議では、16年間つけ続けた家計簿が思わぬ反撃の切り札となる。 夫に見捨てられた母と息子は、3億円の借金を抱えた旅館で新たな人生を切り開けるのか――。人生逆転|真実|孤獨|親子関係2.4万字5 0 -
完結第16話
庭付き新居に押しかける長男夫婦、引越し当日に絶句
夫を亡くした62歳の田所美津子は、長年暮らした家を売り、菜園付きの一軒家で新生活を始めようとしていた。 ところが長男の琢磨と嫁の真理亜は、相談もなく同居を宣言。「断るなら一生介護しない」と脅しまでかけてくる。 夫の葬儀で遺産を要求された美津子は、もう息子に振り回されないと決意していた。 長女の美香と密かに進めていたのは、誰にも知らせていないもう一つの引っ越し計画。 何台ものトラックを連ね、当然のように新居へ乗り込んだ長男夫婦。だが引っ越し当日、二人は思いもよらない事実を知ることになる――。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|介護2.4万字5 0 -
完結第10話
義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私
34歳の藤崎菜央は、義父の古希祝いのため、親族57人の食事会を一人で準備し、手付金30万円も立て替えていた。ところが当日、会場に用意されていたのは55人分の席だけ。消されていたのは、菜央と13歳の娘・小春の席だった。 義妹と義母は「連れ子は家族ではない」と言い放ち、夫の啓介さえ娘をかばおうとしない。 菜央はホテルの支配人に「予約名義は私です」と告げ、契約の名義変更を求める。だが、本当の裏切りは三日前の予約変更記録に隠されていた――。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場1.4万字5 112 -
完結第22話
離婚裁判で7歳の娘が見せた秘密の映像
夫の健太郎から突然離婚を突きつけられた詩音。七歳の娘・柚月の親権も、自分が貯金を出した家も奪われようとしていた。 夫が提出したのは、詩音を「母親失格」に仕立てる写真と専門家の意見書。しかし、資料の矛盾や消えた預金を調べるうちに、夫の隠された計画が浮かび上がる。 そんな中、柚月は画面の割れた古いタブレットを頑なに手放そうとしなかった。 そして裁判の日、娘が口にした思いがけない言葉。 「裁判長、ママも知らないもの、見せていい?」 七歳の娘が守り続けていた秘密とは――。人生逆転|夫婦|裡の顔|親子関係3.1万字5 19 -
完結第18話
「家は俺が守る」息子を信じた母、4年後の衝撃
骨折をきっかけに高齢者施設へ入った72歳の黒田春江。息子の直樹は「家は俺が見ておく」と約束したが、回復後も「家が傷んでいる」と帰宅を拒み続けた。やがて面会も途絶え、気づけば四年。76歳になった春江は、相談員の助けを借りて自宅を訪ねる。ところが、荒れているはずの家は美しく整えられ、鍵まで交換されていた。さらに玄関の向こうから聞こえてきたのは、誰かの足音。息子が隠していた秘密とは何なのか。家族への信頼と、自分の人生を取り戻すための静かな反撃が始まる。親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.5万字5 25 -
完結第10話
拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃
九歳の娘を育てながら、商社の経理部で働く森田咲。ある朝、会社のロビーで財布を拾い、管理員立ち会いのもと持ち主の女性主任へ返却した。 ところが直後、主任が突然押しかけてきた。 「財布に入っていた五万円がない! あなたが盗んだんでしょう!」 同僚の前で泥棒扱いされ、母子家庭であることまで侮辱された咲。しかし彼女は取り乱さず、一枚の受領書を取り出す。 証拠によって反撃を始めた咲だったが、会社はなぜか彼女を重要業務から外してしまう。やがて、財布の紛失騒動の裏に隠された別の疑惑が浮かび上がり――。職場逆転|裡切られた|裡の顔|金銭問題1.8万字5 49 -
完結第20話
7年伸ばした髪を妹に切られた日、婚約者まで笑った
七年間大切に伸ばしてきた髪を、妹の美緒に突然切り落とされた凛。ところが両親も婚約者の修も、泣きそうな彼女を見て笑うばかり。それどころか、凛が泣き出すまでの時間を賭けていた。 長年、家族のために自分の希望を諦めてきた凛は、ついに婚約を破棄し、遠く福岡への転勤を決意する。 だが、彼女が去ったあと、家族が遊び半分で撮影していた動画から、思いがけない事実が明らかになっていく。 失った七年間を取り戻すように、新しい人生を歩み始めた凛。彼女を笑い続けた人々を待ち受ける結末とは――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|真相|第二の人生2.9万字5 131