"磨かなかった靴" 第12話
箱をかした
利夫の告を聞いた健太は、ほとんど眠れなかった。兄が責められた、隣にいたは本当のことを言わなかった。だが利夫も当は歳で、仕事もべ物も寺岡のの内にあった。健太がいま同じに置かれたら、勇気をして話せるだろうか。そう考えるとりの向け先さえ定まらなかった。
翌朝、健太は利夫と緒に静の修理へった。はから歩いて分ほどのにあり、軒先には履き古した靴が何も並んでいた。静はに茶をし、「俊さんがここにいたのはのまで」と教えた。片を痛めた青が針を持つ練習をしていたこと、仕事を覚えるのはかったが、々自分を責めるような顔をしていたことを話した。
「今はどこにいるんですか」。健太が問うと、静はの帳面をめくった。「最のはの方の町から来たの。そのはみ込みで靴の修理を習うと言っていた」。所は控えてあったが、急に訪ねてよいか分からなかった。「俊さんは、誰かを捜しているようだった。でも、見つけたどうしたらいいかをずっと怖がっていた」。健太は兄の性格をい、そんなこともあるのかと胸が苦しくなった。
静はの話を聞き、利夫へ尋ねた。「具箱のこと、の作業でいつか話しましたか」
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。利夫は首を振った。「俺がやったとれたら、仕事がなくなるとって」。静は「怖かったんだろうね」と言った。「でも、今なら話せる。箱をどこへ運んだか、その所を忘れないうちにいておきなさい」。はの隅でを広げ、倉庫から裏までのを絵にした。
帰る、静が健太の靴を見て眉をげた。「そんな底じゃ、のに滑るよ」。健太は照れてを引いた。「直すがなくて」。静は古い革を切りし、修理の方法を教えてくれた。代は材料分だけでよいと言う。健太は兄の真似をして針をかした。力を入れすぎて糸を切った、静は笑わなかった。「度切ったら、結び直せばいい。急がず、針を戻してごらん」
夕方、がへ戻ると、信吉は険しい顔をしていた。の区画の使用料を、約束の期までに納められないかもしれない。利夫が使ったを埋めわせるために雇いにた信吉自も、を痛めてしまったのだ。「俺は丈夫だ」と言ったが、歩くたびに顔をしかめた。健太は靴の仕事を増やそうと提案したが、信吉は「修理はがかかる。客が次々来なきゃ稼げねえ」と言った。
その晩、常夫はで魚が捨てようとしていた網を持ち帰った。破れた網を縫えば、次の朝に使えるかもしれないという。健太は驚いた。「そんな仕事、頼まれてないぞ」
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。常夫は「頼んでみればいい。靴じゃなくても、直せるものはあるだろ」と言った。たちは破れた網を囲み、糸の太さと穴の形を見比べた。うまく直せるか分からないが、仕事をつ増やすことはできそうだった。
数、片桐から呼びしが来た。利夫が描いた図と、宗男の覚えていた荷札番号が致する能性があるという。作業の具が別の所へ移された記録が見つかったのだ。だがそれは、俊が盗みをしていないと証するものではない。箱をかすに、誰が指示をしたのかが分かっていなかった。
健太は相談所の帰り、利夫に尋ねた。「もし兄ちゃんが何かを盗んでいたら、どうする」。利夫はしばらく考えた。「まず、何を盗ったか聞く。誰のためでも、黙って持ってっていいとはわない。でも、話を聞かずに棒って決めるのも嫌だ」。健太はうなずいた。兄と会えたに、最初に抱きつくよりに聞かなければならないことがあるかもしれない。それでも会いたかった。
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