"磨かなかった靴" 第15話
名をいた
京へ戻る列で、俊は窓のよりも健太の顔を何度も見ていた。健太はそのたびに「ちゃんといるよ」と言い、兄は照れたように笑った。利夫は向かいに座り、の作業で自分がしたことをいつ話すべきか考えていた。駅をりると、はすぐへはかず、片桐のいる相談所へ向かった。
片桐は俊の本確認をめ、問題の類にある署名を見せた。俊は「いていません」とはっきり答えた。いつか兄弟が再会したらすべて分かるとっていた健太には、それだけで終わらない調査がもどかしかった。片桐は落ち着いて説した。「類が違うことを確かめるには、実際に誰が記入し、誰が確認したのか、各段階を分けなければなりません」
俊は自分がの職で署名した別の類について、覚えていることを話した。宗男の怪の記録、賃の照会、治療費をて替えてもらうためのい受領。怪の直には文字をくのも辛く、誰かに代してもらったこともあるという。片桐は「署名が本の字でなくても、代を頼んだ類なら別の問題です」と言った。健太は初めて、字が違うだけで全部が嘘だとは言えないのだとった。
利夫は裏へ具箱を運んだ事実を、自分から話した。俊は驚き、く黙ったあと「俺が移した箱とは別だ」
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と言った。危ない使い方を止めるためにした箱は、昼、責任者に見える所へ置いていた。利夫が裏まで運んだ箱には、械の部品と測定器が入っていたらしい。両方の来事が混同され、俊に疑いが集まった能性があった。
「俺、あのに言っていれば」と利夫が呟いた。俊は首を振った。「おが黙ったことで困ったはいる。でもあの頃のおだけに全部を背負わせるのは違う」。利夫は「だからこそ今、話したい」と答えた。片桐はそれぞれの証言を記録し、今、作業の当の担当者へ確認を求めると約束した。結果がすぐにるわけではないが、俊が自分の名で説できるようになったことはきかった。
相談所をると、俊は篠田商会のでち止まった。健太が「かなくてもいい」と言うと、「いや、あの靴のことは自分で話す」と言った。に入ると田切がてきて、俊の顔を見るなり言葉を失った。篠田は奥から現れ、若い男を眺めた。「きていたのか」。俊はをげなかった。「はい。私が預けた靴について、お聞きしたいことがあります」
篠田は子へ腰をろし、の経緯を語った。病院でて替えられた費用の部を、寺岡が商会に請求してきた。俊はを持っておらず、靴を担保のように置いていった。篠田は賃も含めて買い取ったつもりだったという。
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「俺ので支払った。盗んだわけじゃない」。俊は頷いた。「分かっています。ただ、寺岡へ払った分が本当に病院へ渡ったか、私は確かめられませんでした」
田切は目を伏せた。篠田は苛ち、「また昔の話を蒸し返すのか」と言った。俊は静かに答えた。「昔のことだから確かめたいんです。今も同じき方で、弟たちを働きにそうとしている」。篠田は健太を見た。健太は逃げずに言った。「俺、あの靴を磨かなかったのは、兄を忘れたくなかったからです。でも今は、靴より先に聞くことがあります。俺の名を誰が勝にいたんですか」。
篠田はすぐには答えなかった。やがて田切へ向き直った。「記入したの帳面を全部せ」。番は瞬ためらい、「古いものは理してしまいました」と言った。篠田の声が鋭くなった。「俺が聞いているのは、誰のに渡したかだ」。田切は観したように、倉庫の鍵を取りした。健太は、ようやくたちので何かがき始めたことをじた。
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