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"杉原千畝の査証を得た一家、母だけが出国できない" 第5話

母のいない許証

のは、根裏の窓枠から容赦なく入り込んだ。朝になると差しの表面がたくなり、母は弟のを温めるため、まだのついていないストーブのに布を敷いた。

父は追加の確認を求められた類を探すため、毎かけていた。母が若い頃に暮らした町の名、結婚に移った所、の綴り。彼女のが、図と帳面の断片に分けられていた。ミラは折、類を作るが母自に会えば、何もかも分かるのではないかとった。母はここにいて、話し、働き、夕飯を作っている。それでもが揃わなければ、のとして数えられないことがある。

「お母さん、もしだけ先にけることになったら」

ミラがをくと、母は縫いかけの袖を膝に置いた。

「あなたは、どうしたい?」

「私だって残る」

「それは、お母さんが嬉しい答えじゃないわ」

「どうして」

「私のためにあなたのがなくなるからよ」

ミラはった。「そんなふうに言われたら、けなくなる」

母は度だけ目を閉じた。それから針を持ち直し、縫い目を確かめた。

「だったら今は、決めなくていい。決めなくて済むように、もう度続きをするの」

そのはエヴァが伝いに来た。エヴァの弟は学にけない々に退屈し、廊でさな鳥を見つけて世話をしていた。

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傷ついた羽が治るまで、窓のへ放せないのだという。ダヴィドは自分のパンをし砕いて持ってった。

母はそれを見つけて叱った。「自分の分が減るでしょう」

「でも、鳥は自分で買い物にけないよ」

ミラは笑ってしまった。母もやがて笑い、ほんのしだけパンの屑を分けてやった。

笑えるは、まだある。それがミラにはいがけない発見だった。

の半ば、父は親戚のんでいた町の古い記録について、証できる類を探しした。母の名はつの言語で異なる綴りになっていたが、同じ女性だと説する文が添えられている。父はそれを持って窓へ向かった。

結果がるまでにはさらにが掛かった。支援団体のが、旅費の分について話を聞いてくれることになった。父は自分が修理職であったこと、族に子どもがいることを正直に話した。相はすぐにを渡すとは言わず、にも助けを待つ族がいと説した。

父はくをげた。宿へ戻ってから、ミラが尋ねた。

「悔しくないの?」

「何が」

「お父さんは、に頼るのが嫌いだったでしょう」

「嫌いだよ。今もな」

「じゃあ、どうして」

父はしばらく考えてから言った。

「に頼むは、必ず『すみません』と言うものだとっていた。でも、今のは『事を教えてください』と言った。

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謝るより、何に困っているかをちゃんと話す方が事なこともあるんだな」

ミラはその言葉を覚えておこうとった。

に入り、宿のにはが積もった。エヴァたちの部のストーブが壊れ、皆でつの部へ集まって眠る夜もあった。毛布をねても先はえる。母は弟の靴を何度も繕った。ミラは、旅が始まるから旅をしているような気がした。毎、昨とは別の所で自分たちの居所を探していたからだ。

ある午、父が息を切らして戻った。にはしい通があった。

「境の続きが、んだ」

母は子からちがった。「とも?」

「先に、私とミラとダヴィドの類を受け取れるそうだ」

母の顔から笑みが消えた。「私のは?」

父はを広げた。母の欄だけ、まだ保留と記されている。追加説は受け付けられた。しかし確認の終わる付は示されていなかった。

そのの夜、アロンは支援者を通じて得た列の報を告げた。条件が揃えば、け々にへ向かう便を利用できるかもしれない。ただし族全員が揃うかどうかは分からない。

「待つ」と父は言った。

母は首を横に振った。「子どもたちだけでもした方がいいが来るかもしれない」

「そんな話はするな」

「考えないことと、起こらないことは違うわ」

父は拳を握った。声を荒らげるに、ミラが割って入った。

「私、かない」

両親が振り返る。

「を置いて、どこへけというの」

「ミラ」と母が言った。「あなたにはまだ先がある」

「お母さんにもあるでしょう」

父は机に置かれた類を見つめた。の名を何度もいてきたのに、今、そのうちつだけが先へもうとしている。誰かの名を消せば類は簡単になる。だが族は、類のように直すことはできなかった。

夜、ミラは母がこっそり旅券をいているところを見た。母は自分の顔写真を指先で押さえ、そっと閉じた。

「怖いの?」とミラが尋ねる。

「怖いわ」

「になることが?」

「それより、自分のためにあなたたちがめなくなることが」

ミラは母の隣に座った。はしばらく話さなかった。ではを踏む音がして、どこかの部から咳が聞こえた。

翌朝、父は役所へ向こうとした。その、エヴァが駆け込んできた。

「アロンさん、待って。支援団体のところへ来てほしいの」

「どうした」

「あなたたちの発について、確認の話があったの。今ある許で乗れるのはだけだと」

父のが止まる。エヴァは息をえた。

「それから、もうつ言われたわ。次の便に乗るつもりなら、今夜に返事が必だって」

ミラは机のの分の名を見た。列はる。母の許はまだない。でくと信じてきた族に、初めてはっきりとした期限が突きつけられた。

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