"杉原千畝の査証を得た一家、母だけが出国できない" 第11話
神戸の
神戸に着いた族は、何もの難民とともになまいへ案内された。通りにはがあり、坂のには異なる形の建物が並んでいた。の話す言葉も、角の匂いも、それまで暮らしたどのとも違っていた。
難民たちを支える々が、事や寝る所、役所への連絡をえていた。誰かが名簿を作り、誰かが国語のを読み、また誰かが次のの報を集めている。ミラは、その景に懐かしさを覚えた。カウナスの宿にいたも、皆が同じように名をき、列に並び、互いの困り事を聞いていたからだ。
父は、次のき先を決めるための相談に通い始めた。本の通過査証は、そもそもく滞するためのものではない。けれどすぐに別の国の入国許が得られる族ばかりではなかった。支援団体や関係者の助けを借り、滞や次の渡航について、そのつど確認を続けなければならない。
最初のが過ぎる頃、ミラは父へ尋ねた。
「もう本からなければいけないの?」
父は答えに迷った。「決まりは決まりだ。でも、事を説して待たせてもらうこともある。相談してくる」
「いつもね」
「そうだな」
「という言葉、もう聞き飽きた」
父は静かに頷いた。「私もだ」
母は共同の作業部で裁縫を頼まれた。傷んだを直して、ほかの族へ渡す仕事だった。
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最初のうちは、言葉の違いで寸法が伝わらず、何度もやり直した。そこでミラが振りと数字をいたを使うと、しずつ注文が通るようになった。
「あなたの字のおかげね」と母が言った。
「エヴァのおかげよ。あの子がいなかったら、私も類を読もうとしなかった」
母は針をかすを止めた。「をきなさい。所が分からなくても、くだけならできるわ」
ミラは机に向かった。神戸へ来たこと、敦賀でべた温かい事、弟がの匂いを覚えていたこと。伝えたいことは幾つもあった。しかし「あなたたちはどうしていますか」とこうとした、ペンが止まった。りたいことがすぎて、何から尋ねればよいのか分からなかった。
彼女は最につだけいた。
《まだあなたにもらった針を使っています。》
す先のないを母に見せると、母は封筒へ入れておくよう言った。「届けられるが来たら、最初の通にすればいいのよ」
その頃、ダヴィドは所の子どもたちと遊び始めていた。共通の言葉はないが、坂にを転がして速さを競う遊びに説はいらなかった。ある、本のがダヴィドのいを珍しそうに見た。
ダヴィドはを掌へ載せ、ミラに言った。「この子にもつあげたい」
「これはパヴェウがくれた物でしょう」
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「だから、つだけ。友達から友達へ渡すの」
ミラはしばらく考え、首を振らなかった。ただ、弟が自分で決めるのを待った。ダヴィドはを渡さず、代わりに港で拾った別のを本のへ差しした。
「それは、どうして?」とミラが聞く。
「パヴェウのは、まだ預かってるから」
弟なりに、残してきた友との約束を守ろうとしていたのだ。
がづくと、族ので見が分かれ始めた。父はアメリカへ渡れる能性を探したいと言い、母は今あるを失うに、受け入れ先を確保できるへむべきだと考えていた。支援者からはについての話も聞いた。必な続きや受け入れの事は簡単ではなかったが、本をれ、そこへ移る難民がいるという。
「アメリカへけば、親戚のを頼れるかもしれない」と父が言った。
「かもしれない、ではべていけない」と母が答えた。
「で私たちに何ができる」
「今だって、ここで縫い物をしているでしょう。向こうでも働く方法を探すのよ」
が争っているのを聞き、ミラは初めて、自分たちのき先がつではないとった。図にはいくつもの線を描ける。けれど族の荷物を乗せられるは、いつもつだけだ。
ある、共同の台所で父が々と相談していると、見覚えのある老が現れた。シベリア鉄で緒だっただった。
老は別のき先を求めて続きを続けていたが、いまだに発の見通しがたないという。
「君たちはどうするのかね」と老が尋ねた。
父は答えた。「族と相談です」
老は頷いた。「どこへっても、また始めるしかない。があるときには忘れるが、は毎朝、同じことをして暮らしているんだよ」
その言葉を聞いたミラは、カウナスで老が弟たちへ昔話をしてくれた夜をいした。あのもまだ、終わらない旅の途にいる。
夜、父はミラへ図を見せてくれと頼んだ。何度も折りたたんだせいで、は裂けかけていた。ミラはしいを枚持ってきて、今度は線をつ描いた。を越えてさらにへむ線と、別の港へ向かう線。
「どっちが正しい?」と父が尋ねた。
「まだ分からない」とミラは答えた。「でも、どちらかを選んだら、選ばなかった方を悪いだとわなくていいんじゃない?」
父は娘の顔を見た。ミラは続けた。
「私たちは何度も違えた。でも、ここまで来られた。きっとどちらへっても、次に考えることがあるわ」
父はしい図を静かに折りたたんだ。その翌、彼は族全員を集め、へ向かう能性を正式に調べたいと告げた。
母はすぐに賛成しなかった。今度は彼女が、発のに確かめるべきことをつずつにき始めた。
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