"「25万円振り込め」と脅す夫へ、私はもう妻じゃない" 第2話
義母が迎え入れた女
「ドラマでも見てたんだろ。じゃあな」
浩司はそれだけ言うと、方に話を切った。
無質な子音がホテルの部に残った。
私はスマホをテーブルへ置き、めたコーヒーをんだ。
りはなかった。
泣きたいともわなかった。
むしろ、胸のが議なほど静かだった。
、浩司が会社を辞めた、私は本気で夫の挑戦を応援しようとっていた。
「半だけ準備期がほしい」
そう言われ、活費は私が負担した。
けれど半はになり、はになった。
名刺だけは何度も作り直すのに、肝の事業計画はいつまでたっても完成しない。
朝は遅くまで寝て、昼からカフェへかけ、夜になると「脈作り」と称してする。
費用はすべて私名義の族カードだった。
そこへ富まで転がり込んできた。
「浩司が起業するなら、母親の私も支えてあげないとね」
そう言って荷物を運び込んだものの、事を伝ったことなどほとんどない。
朝からソファを占領し、
「今はお肉がべたいわ」
「洗濯物、まだなの?」
と私に注文する。
父が削った檜の柱に掃除をぶつけても、
「古いなんだからしくらいいいじゃない」
と笑った。
私は、その言葉を何度もみ込んだ。
あのは、くなった父が私のために建ててくれた唯の財産だった。
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玄関をけると漂う檜のり。
リビング央の太い柱。
庭に父とで植えた桜。
私にとって、単なる建物ではない。
だからこそ、な夫婦喧嘩でまで失うことだけは避けたかった。
ある夜、仕事を終えて台所へ向かった、暗いリビングからの話し声が聞こえた。
「美穂の稼ぎがあるうちは、あんたはゆっくりを探せばいいのよ」
富の声だった。
「あんな女、使い倒せばいいんだから」
浩司がで笑った。
「あいつはただの財布だよ。どうせ俺がいないときていけないし」
私は台所の入でを止めた。
にしていたマグカップを握る指に力が入った。
そので鳴り込むことは簡単だった。
だが、私はしなかった。
父は、の仕事で何か問題が起きるたびに、
「鳴ったって柱は真っすぐにならん。曲がった理由を先に探せ」
と言っていた。
だから私も、まず事実を集めることにした。
それから半。
私は活費、カード細、富へ渡した現、浩司の自然なを記録し続けた。
仕事の報酬も理し、な類は別の所へ移した。
そしてホテルで話を切った直、スマホに件のメッセージが届いた。
送り主は、向かいのにむ幼なじみの由美だった。
《美穂ちゃん、張だよね? のため送る》
い画が添付されている。
再すると、夕方のわがの玄関が映った。
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黒いタクシーが止まり、るい茶の髪をした若い女性がりてくる。
にはきなブランドの袋。
そして玄関がいた。
てきたのは浩司ではなかった。
富だった。
「いらっしゃい。さあ、く入って」
さな音声でも、弾んだ声ははっきり聞こえた。
女性は笑いながらをげ、そのまま私のへ入っていった。
私は映像を止した。
顔を見たことはない。
けれど声は分かる。
先ほど話の向こうで、
「ワインがぬるくなっちゃう」
と言った女だった。
夫が浮気をしている能性には、とっくに気づいていた。
けれど、まさか義母がその女を堂々とへ招き入れていたとはわなかった。
私はもう度、富の便箋を見た。
《しい方をお迎えします》
あれは未来の話ではなかった。
はもう、私がいなくなったの活を始めるつもりでいたのだ。
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