"「25万円振り込め」と脅す夫へ、私はもう妻じゃない" 第9話
300万円を持たずに帰宅
リビングへ入ると、浩司と富がソファに座っていた。
テーブルには、私が自分の誕に買ったティーカップが置かれている。
まるで自分たちがこのの主であるかのようだった。
浩司のには、あの赤いバインダー。
私を見るなり、元を歪めた。
「遅かったじゃないか」
富も腕を組んだ。
「300万円、用してきたんでしょうね」
私はスーツケースを壁際へ置き、の向かいの子に座った。
「用してないわよ」
浩司の笑顔が消えた。
「は?」
「300万円なんて払わない」
「お、状況分かってんのか?」
浩司はちがり、赤いバインダーをテーブルへ叩きつけた。
「俺がこのの取引先に話本すれば、おの仕事なんて終わりなんだぞ!」
茶がカップからしこぼれた。
私はその染みを見てから、浩司へ線を戻した。
「じゃあ、話してみれば?」
「何?」
「そのファイルに載ってる番号へ、今すぐかけてみなさいよ」
浩司は瞬ひるんだ。
だがすぐ、
「悔するなよ」
と言ってバインダーをいた。
ページを枚。
枚。
枚。
やがて、そのが止まった。
「……何だ、これ」
に入っているのは古い資料ばかり。
に終わった案件。
町内会の印刷物。
期限切れのチラシ。
。
顧客の話番号など、件も入っていない。
「どうして……」
浩司は何度もページをめくった。
「いつも仕事部に置いてあっただろ!」
広告
「フリーランスで以働いてるが、番切な顧客報をのファイル冊だけで管理するとったの?」
私は静かに言った。
「事なデータは別に管理してる。それはダミーよ」
浩司の顔が青ざめた。
「あなた、ここ数かずっと私の仕事部を気にしてたでしょう」
私はノートをいた。
「引きしの位置も何度か変わっていた。だから、わざと目つファイルを置いておいたの」
バインダーが浩司のから落ちた。
富が慌ててちがる。
「そんなものが偽物でも関係ないわ! 私はご所に話したんだから!」
「町内会の奥さんに?」
「そうよ! あのだって、あんたをひどい嫁だって――」
「さっき駅まで迎えに来てくれましたよ」
富の声が止まった。
「え?」
「由美さんと、お母さん」
私は真正面から富を見た。
「あなたの話、誰も信じていませんでした」
みるみる顔から血の気が引いていく。
「私が毎朝仕事へくことも、病院へ送ることも、材を買って帰ることも、所のは見ています」
さらに続けた。
「それより、私が留守のに若い女性を何度もへ入れていたことの方が、もうられてますよ」
富はソファへ崩れるように座った。
世体を何よりするだった。
「所にられている」
その言が、番こたえたのだろう。
私はスーツケースをけた。
最初に父の桜の箱を取りし、自分の隣へ置く。
次に黒いノート。
の記録をテーブル央へ置いた。
浩司が警戒した顔で聞いた。
「何だ、それ」
「あなたたちが私にしたことの記録」
私はページをめくった。
「活費と偽って引きしたお。に覚えのないカード利用。級ホテル。ブランド品。夜の。それから――」
あのレシートをした。
裏には浩司の字。
《の名義変更》
《印鑑証》
《委任状》
浩司の顔が、完全に固まった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
現地払いの還暦旅行
旅行会社に勤める弘志は、義父の還暦祝いに伊豆の高級ホテルを手配する。ところが旅行当日、義父母と義姉、さらには妻の優希までが、駅で「お前はもう帰れ」と弘志を追い返した。 屈辱をこらえて帰宅した弘志のもとに、妻から不可解なメッセージが届く。一方、義家族はホテルで高級料理や酒、エステを次々と注文していた。 しかし彼らは、旅行のしおりに記された重要な支払い条件を見落としていた。チェックアウトの日、彼らを待ち受ける驚愕の請求と、妻が隠していた秘密とは――。人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.8万字5 2 -
完結第10話
銀座の384万円
巨大企業グループの総帥という身分を隠し、平凡な専業主婦として暮らす美央。夫と義母に見下されながらも、温かい家族を夢見て五年間耐え続けてきた。 義母の誕生日、55万円の高級バッグを用意して銀座のレストランへ向かうと、義家族はすでに食事を終えていた。美央の席も料理もなく、代わりに突きつけられたのは384万円もの請求書。 「会計はあなたが払って」 その言葉に、美央は静かに微笑んで店を去る。しかし義家族はまだ知らなかった。自分たちが誰を敵に回したのかを――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場1.6万字5 0 -
完結第15話
親族会議で追放された妻――翌朝、七枚のカードが全停止
七年間、夫の翔平と宮田家を陰で支え続けてきた神崎紗良。しかし親族会議の席で、夫から突然離婚を宣告される。 「慰謝料も財産分与もなし。一円も持たずに出ていけ」 義父母や親戚からも見下された紗良は、反論することなく離婚届に署名し、屋敷を去った。 ところが翌朝、翔平の七枚のブラックカードがすべて使えなくなる。続いて二軒の豪邸に届く契約終了通知、銀行からの融資見直し。 実は宮田家の誰も、紗良の本当の正体を知らなかった。九十九件もの着信を重ねた元夫が、最後に突きつけられる真実とは――。裡切られた|嫁姑|夫婦|金銭問題1.9万字5 1 -
完結第20話
愛人が妊娠、離婚を迫る夫が私の退職に大慌て
十年間、夫・徹が経営する武田工業を営業部長として支えてきた44歳の百香。ある夜、夫から突然、29歳の女性社員を妊娠させたと告げられ、離婚を迫られる。 さらに夫は、離婚後も会社で働き続け、愛人の子供の世話までしてほしいと言い出した。 呆れ果てた百香は離婚と退職を決意するが、親友の弁護士から驚くべき証拠を渡される。そこには、愛人が会社の裏で進めていた巨額の不正が隠されていた。 十年の献身を踏みにじられた妻が仕掛ける、痛快な逆転劇。怒り|夫婦|金銭問題|不倫2.3万字5 63 -
完結第14話
同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼
中学卒業から十五年。貧しい母子家庭で育ち、いじめに耐えてきた梅本瑞江は、故郷の同窓会に姿を現した。上品な大島紬をまとった彼女を見て、かつてのいじめの主犯・熊切勢子は激怒。友人の借金を盾に保証人になるよう迫り、ついには瑞江の頭からビールを浴びせてしまう。 さらに勢子は、暴力団組長である夫の力を使い、瑞江を脅そうとする。しかし、連れ込まれた奥の宴会場で、誰も予想しなかった光景が待っていた。 十五年前に見下されていた少女が隠していた、驚くべき現在の姿とは――。人生逆転|真相|第二の人生|修羅場2.0万字5 90