みかん小説
本棚

"現地払いの還暦旅行" 第4話

ホームの記写真

発当、京駅の集所に着いたのは俺が番かった。義父たちは指定した刻より分遅れて現れたが、誰も謝らなかった。義母はきなブランドバッグを俺に渡し、美奈子はキャスター付きのスーツケースをつ押しつけてきた。義父の荷物と優希の分もわせると、俺の周囲にはつのきな荷物が並んだ。

「弘志、遅いぞ。主役を待たせるな」と義父が言った。

「集にはにっています。改札まで緒にきましょう」

「言い返すな。今は俺の還暦だ」

俺は返事をせず、荷物の取っをつずつ確かめた。美奈子のスーツケースは片側の輪が緩んでいて、無理に引くと傾く。彼女に伝えると「傷つけたら弁償してね」と言われた。自分で持ったほうが全だとったが、また面倒な議論になるので黙っていた。

グリーンの入で、義母は「荷物はちゃんと見てなさいよ」とを押した。俺の席は両先の普通にある。列がきしてから内を往復するのは周囲の迷惑になるので、荷物は各自の座席くに置くよう説したが、とも俺に任せきりだった。

「弘志、写真を撮って」と優希が言った。

義父は央にち、義母と美奈子が両脇に並んだ。優希は父親の肩にを置き、楽しそうに笑った。俺はしれた所からシャッターを切ったあと、「じゃあ、次は俺も入って」

広告

と言った。

「ええ? 弘志と並ぶと普通の夫婦みたいに見えるじゃない」と優希は言った。

「普通の夫婦だろ、俺たちは」

彼女は笑ってごまかした。義父が「写真はもういい、乗るぞ」と急かし、結局俺が写った写真は枚も残らなかった。旅のしおりの表には、でく族旅といてある。その目が記録に残らないことを、俺以の誰も議にわなかった。

列がにづくころ、美奈子がデッキまで俺を呼びに来た。目の夕に婚活相の健さんを招くので、料理の格を落とすなという。俺は事に追加料の案内を送ったと伝えたが、彼女は「私の幸せに課するとって」と平然と言った。

「その費用は、どなたが負担する予定ですか」

「弘志さんに決まってるでしょ。義姉の結婚が決まれば、あなたにもいい話じゃない」

俺は笑えなかった。結婚は、誰かに請求を回すための制度ではない。そう言いかけたとき、優希からメッセージが届いた。「着いたらすぐ族写真ね」。俺が写らない族写真のことだろうかといながら、窓ののを見た。

列をりたとき、俺はまず義父の元を見た。階段のい駅なので、できるだけエレベーターを使える線を選んでいたからだ。義父は膝を悪くしたことがあり、い距を歩くと痛む。しおりには送迎の乗りまで写真つきで順を載せていた。

俺が「こちらです」と声をかけても、義父は「そんなもの見れば分かる」と言った。俺は案内役のつもりだったが、向こうは最初から違う役目を用していたのだ。

駅に着くと、義父は改札の先でを止めた。駅には送迎が待っていたが、なぜかとも乗ろうとしない。美奈子が俺のからカメラを受け取り、義父は駅名の表示が見える所へ移した。俺は荷物を並べ直しながら、「今度こそで撮るんですか」と尋ねた。

「いや。最に枚、おだけ撮ってやる」と義父が言った。

その声には、祝宴をにした楽しさとは違う響きがあった。俺はカメラを持つ美奈子を見た。彼女は笑いをこらえるように唇を押さえ、スマホの録画ボタンに指を置いていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: