みかん小説
本棚

"同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼" 第10話

凛たる宣告

事務所のには、もはやの駅の喧騒すら届かない、絶対な静寂が支配していた。

蔵にすべてを委ねられた瑞は、歩へ歩みた。の島紬の裾が擦れう微かな擦れの音だけが、息を呑む全員のに届く。

瑞は、にいつくばる広文と勢子ではなく、応接用ソファでさくを縮めている同級、そして帳を抱えてち尽くす美代へと向き直った。

「美代ちゃん。渡辺くん、佐藤くん、くん」

穏やかな、しかし芯の通った声で呼びかけると、同級たちが恐る恐る顔をげた。

「あなたたちが熊切組……いいえ、勢子さんに脅し取られていた遅れ賃は、利息も含めて、熊切さんの個資産から円残らず全額返還させます。……熊切さん、よろしいですね?」

に額を擦り付けたままの広文が、狂ったようにをさせた。

「ハ、ハイッ!! 全額、即座にを揃えて返還いたします! 私の貯とを処分してでも、今に全員の座へ振り込ませますッ!」

「そして、美代ちゃんの借百万円。これは昨夜申しげた通り、こので完全に帳消しです。債務の証を、今すぐ熊切組の名義で作成してください」

「承いたしましたッ! ただいま作成いたしますッ!」

広文が震えるで事務机の引きしから便箋を取りし、自で借の無効と完済を証する文をき殴り、実印を押して美代のに差しした。

広告

美代は震える両でそのを受け取り、粒の涙をボロボロと畳のにこぼした。

「み……瑞ちゃん……ありがとう……ありがとう……!」

ソファの鏡の男——渡辺もちがり、美代のでくをげた。

「美代ちゃん、本当にすまなかった……! 俺たち、勢子に脅されて、君が横領したなんて嘘に同調して……本当に悪かった!」

「僕もだ……ごめん、美代ちゃん……!」

の同級たちも次々とをげた。昨夜まで勢子の威に怯え、あるいは媚びへつらって瑞や美代を嘲笑っていた者たちが、自らの卑しさを恥じ入るように涙を流していた。

その景を見届けた瑞は、最に、にへたり込んで震えている勢子の正面へと歩み寄った。

「せ……勢子さん」

勢子は恐る恐る顔をげた。その顔は涙とマスカラで真っ黒に汚れ、昨夜の尊で暴力な番の面はどこにも残っていなかった。

「み、瑞ちゃん……! お願い、許して! 私たち、学からの同級じゃない! 昔はちょっと悪しちゃったけど、仲良くしてた期だってあったじゃない! ねえ、助けてよ!」

勢子がいずりながら瑞の元に縋り付こうとした。

しかし、瑞は帯のでねたを微だにさせず、たく澄み切った瞳でそのを静かに見ろした。

「を陥れ、力で踏みにじってきたあなたのには、もう誰もちません」

昨夜、ビールをから浴びせ、瑞の髪を鷲掴みにして勢子が言い放った言葉。

『もう誰もあんたのにはたないわよ』

その残酷な言葉が、言句狂うことなく、そのまま勢子自の胸へと突き刺さった。

勢子の唇がワナワナと震え、顔から完全に血の気が引いていく。

「昨夜、あなたが私に言いましたね。になったら力のある者がすべてだと。……私はそうはいません。ですが、あなたが信じたその力によって、あなたがすべてを失うことは確かです」

瑞は背筋を伸ばし、蔵へと振り返った。

「あなた。私の話は、これで終わりです」

蔵はさく度だけ頷くと、え切った差しを広文のへと落とした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: