みかん小説
本棚

"愛人が妊娠、離婚を迫る夫が私の退職に大慌て" 第5話

サンルームの品定めと、運命の乾杯

週の曜、午半。 のたいが窓を叩く、がのインターホンが陽気に鳴り響いた。

「はーい! 徹さぁん、来ちゃいましたぁ!」 玄関のドアをけると、まるで級フレンチのディナーにでも招かれたかのような装いの美咲がっていた。 オフホワイトの質なカシミアコートに、ブランドロゴが散りばめられたバッグ。首元にはダイヤのネックレスが輝いている。 横領したで買い漁ったのであろう戦利品をに纏い、美咲は私の顔を見るなり、勝ち誇ったような笑いを浮かべた。

「お邪魔しまぁす。わぁ、やっぱり社のって広くて素敵! からずーっと来てみたかったんですよねぇ」

リビングにいた徹が、満面の笑みで迎えた。 「なんだよ美咲、慮するなよ! 今からももかに料理を作らせて、もてなしてやるからな!」

私の顔など切気に留めず、美咲はが物顔でリビングから廊へと歩き回り、内をジロジロと品定めし始めた。 「キッチン、アイランド型で広くていいなぁ! 私の1LDKの狭いアパートとは違い! あ、あっちの、子供部に改装しちゃいましょうよ徹さん!」

「お、いいなそれ! 壁をるい黄にしてさ!」 徹がニヤニヤしながらを追う。

美咲はさらに、リビングの奥にある畳ほどの広々としたガラス張りのサンルームへとを踏み入れた。

広告

そこには、私が丹精込めて育ててきたパキラやベンジャミンなどの観葉植物と、化ガラスのローテーブル、リラックス用のハンモックが置かれていた。 美咲はわざとらしくを鳴らし、観葉植物の葉を指先で弾いた。

「うわぁ……なんか観葉植物ばっかりで鬱陶しい空。せっかくの当たりのいいサンルームなのに、センス悪ぅい。これ、ももかさんの趣ですかぁ?」

「ああ、そうだよ」徹が嘲笑交じりに同調する。 「ももかは優しいおと違って、や植物にしか興がないたい女なんだよ。でも、育ててもすぐに枯らすんだよな。植物にすら嫌われてるんだよ、あいつは!」

「あはは! ももかさん! 子供も産めなきゃ植物も育てられないなんて!」 の甲い笑い声が、サンルームに響き渡る。 棒猫がのにでがり込み、守ってきた主を嘲弄する――あまりの図々しさと劣さに、私はりを通り越して、胸の奥がスーッとえ切っていくのをじていた。

「話しいに来たのでしょう? さっさと席に着いてちょうだい」 私の淡な言で、はようやくリビングのソファへと腰をろした。

徹と美咲が並んで座り、テーブルを挟んだ向かい側に私が座る。 徹は美咲の肩を抱き寄せ、これ見よがしに指を絡めっていた。 「ももか、単刀直入に本題に入ろう。

広告

美咲のお腹には、正真正銘、俺の跡取りがいる。おも女なら、これ以見苦しくゴネないで、を引いてくれ」

美咲もまた、潤んだ瞳で両を胸のでわせ、わざとらしい懇願のポーズを作ってみせた。 「ももかさん、本当にごめんなさい! でもね、これは世から決まっていた運命なんです! 徹さんの子供を宿した私が、武田を継ぐのが自然の摂理なんですよぉ。ももかさんは今までお疲れ様でした。円満に婚してくださるなら、私、ももかさんのことみませんから!」

狂気の汰だった。 倫をしての庭を壊した女が、「みません」とから目線で免罪符を与えようとしているのだ。 私は氷のような笑みを浮かべ、ゆっくりとをいた。

「分かったわ。夫婦活への未練は、ミリもないもの。婚には応じるわ。……いいけれど、私、会社の仕事も完全に辞めるわね」

その瞬、徹の顔から笑みが消え、怪訝そうに眉を吊りげた。 「は? 何言ってんだよ。仕事は続けろよ」

「……なんですって?」

「お、その歳で武田業を辞めたら、次の再就職先なんてあるわけないだろ! 俺の慈で、今まで通り営業部の席を用してやるって言ってるんだよ。美咲だって寛に許してくれてるんだから、ありがたく働けよ!」

美咲もパチパチと瞬きをしながら、信じられない台をねてきた。

「そうですよぉ、ももかさん! 私、全然気にしませんから! 昼は会社でバリバリ働いて、夜は私たちが夜遊びにってる、で赤ちゃんの面倒を見てくれればいいんです! ね、お互いWin-Winじゃないですかぁ!」

のをここまで愚弄できるが、この世にするのだろうか。 私はく息を吸い込み、テーブルののティーカップをトンと置いた。

「無理よ。だってその女――」 私は拍置き、美咲の瞳を射抜くように見据えて、言い放った。

「――会社のおを、千百万円も横領している犯罪者ですもの」

リビングの空気が、カチリと音をてて凍りついた。 美咲の顔から、瞬で血の気が引いていった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: