"山奥の身代わり花嫁" 第15話
自分の名で
声をした翌、町の方から取材の申し込みがあった。私は弁護士と相談し、仕事への響と事実関係に限って話すことにした。記者は最初、姉妹の争いを詳しく聞きたがったが、私は「堂を利用する方や働くたちの活がかかっています」と伝えた。記事には、当初の縁談依頼と私の雇用契約について、確認できた範囲が簡潔に載った。
反応はすぐに変わったわけではなかった。訂正記事を見ても、姉の投稿を信じ続けるはいた。取り消された宿泊予約のくは戻らず、学の体験も程を組み直す必があった。それでも、取引先からは「説を確認しました」と返事が届き始めた。の改修事も、会社の業務と個の噂を分けて審査することになり、保留が解除された。
姉は投稿を削除したが、すでに広まった画面の写しまで消えるわけではない。弁護士は必な記録を保全し、虚偽の投稿による損失について正式に請求する方針を示した。私は姉が責任を取るべきだとったが、姉の活がどうなるかを像するとがくなった。そんな私にさんは「かわいそうだとうことと、やったことをなかったことにするのは別だよ」と言った。
堂には、しずつ客が戻ってきた。予約を取り消した族が「子どもがどうしても体験をしたがって」
広告
と話をくれた、さんは受話器を置いてさく拳を握った。私は厨で炊き込みご飯を作りながら、いつもの量よりしだけく米を研いだ。数字が戻ることも嬉しいが、ここへ来たいとってくれるがいることが何より嬉しかった。
ただ、被害の穴埋めにはがかかった。所は部への荷を増やし、宿泊棟は閑散期の研修利用を始めた。私は堂の利益を守るため、配達の経を見直して燃料費を減らした。武さんは私の案を会議で紹介したが、「美緒さんが考えました」と名を添えるだけで、特別な称賛はしなかった。その自然さがよかった。
ある夕方、姉からい話が来た。私は録音や同席のことを考えたが、まず留守番話に切り替えた。残された声は疲れていた。「そんなつもりじゃなかった。あんたがあんなにんでるなんてらなかった」。私は何度も聞き返さなかった。姉は、私が傷ついたことより、自分が損をしたことを悔やんでいるように聞こえた。
その夜、武さんがさな箱を持って堂へ来た。には、元の桜材で作った包丁の柄が入っていた。刃はさんが使っているものと同じ型で、のきさにわせて握りやすく調されている。柄の端にはさく「美緒」と彫られていた。「堂の仕事を続けてくれたお礼です。
会社からではなく、私個から」。
私は包丁を持ち、初めて自分の名が刻まれた具を眺めた。実では姉のおがりを使うことがく、私のためだけに何かを選んでもらった記憶はない。「切に使います」と答えると、武さんは「壊れたら直します。の柄は何度でも作れますから」と言った。私はその言葉が、具の話だけではないようにえた。
帰り際、彼は「今度の休み、仕事ではなく緒にかけませんか」と尋ねた。私はすぐに返事をせず、自分がどうしたいか考えた。初めて会った頃のように、相の期待を読むためではない。私は武さんの顔を見て、「はい。私も、もっとお話ししたいです」と答えた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
現地払いの還暦旅行
旅行会社に勤める弘志は、義父の還暦祝いに伊豆の高級ホテルを手配する。ところが旅行当日、義父母と義姉、さらには妻の優希までが、駅で「お前はもう帰れ」と弘志を追い返した。 屈辱をこらえて帰宅した弘志のもとに、妻から不可解なメッセージが届く。一方、義家族はホテルで高級料理や酒、エステを次々と注文していた。 しかし彼らは、旅行のしおりに記された重要な支払い条件を見落としていた。チェックアウトの日、彼らを待ち受ける驚愕の請求と、妻が隠していた秘密とは――。人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.8万字5 16 -
完結第22話
「慰謝料500万円」ママ友が出した弁護士の名刺に驚愕
夫を亡くし、九歳の娘すももを一人で育てる弁護士・水瀬ひまり。ある日、投資で多額の借金を抱えたママ友の香織から、突然「夫との浮気の慰謝料500万円を払え」と迫られる。 証拠として突きつけられたのは、身に覚えのないLINEと、弁護士を名乗る男の名刺。ところが、その名刺には、ひまり自身の名前が記されていた。 偽りの請求、広がる不倫の噂、そして娘の学校生活にまで及ぶ嫌がらせ。ひまりが証拠を集め始めると、思いもよらない金銭トラブルが浮かび上がる。母として、弁護士として、彼女が下す決断とは――。怒り|裡の顔|真相|第二の人生|金銭問題2.8万字5 33 -
完結第12話
母の葬儀写真に現れた女――銀の花に隠された秘密
幼いころから、人には見えないものが見える紀子。62歳になった彼女は、87歳の母を亡くした葬儀の日、誰も立っていなかったはずの場所に、黒い服の女が写っていることに気づく。女の胸には、銀色の花のブローチ。さらに母の遺品から、見知らぬ女性との古い写真と、秘密の子どもについて書かれた手紙が見つかった。生前、母が繰り返し呼んでいた「千恵子さん」とは誰なのか。そして、棺のそばで聞こえた「あの子はまだ生きてる」という声の意味とは。葬儀写真に残された不可解な影が、半世紀以上封じられてきた家族の秘密を呼び覚ます。日常ホラー|真相|親子関係2.2万字5 5 -
完結第10話
銀座の384万円
巨大企業グループの総帥という身分を隠し、平凡な専業主婦として暮らす美央。夫と義母に見下されながらも、温かい家族を夢見て五年間耐え続けてきた。 義母の誕生日、55万円の高級バッグを用意して銀座のレストランへ向かうと、義家族はすでに食事を終えていた。美央の席も料理もなく、代わりに突きつけられたのは384万円もの請求書。 「会計はあなたが払って」 その言葉に、美央は静かに微笑んで店を去る。しかし義家族はまだ知らなかった。自分たちが誰を敵に回したのかを――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場1.6万字5 12 -
完結第14話
同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼
中学卒業から十五年。貧しい母子家庭で育ち、いじめに耐えてきた梅本瑞江は、故郷の同窓会に姿を現した。上品な大島紬をまとった彼女を見て、かつてのいじめの主犯・熊切勢子は激怒。友人の借金を盾に保証人になるよう迫り、ついには瑞江の頭からビールを浴びせてしまう。 さらに勢子は、暴力団組長である夫の力を使い、瑞江を脅そうとする。しかし、連れ込まれた奥の宴会場で、誰も予想しなかった光景が待っていた。 十五年前に見下されていた少女が隠していた、驚くべき現在の姿とは――。人生逆転|真相|第二の人生|修羅場2.0万字5 210 -
完結第20話
同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約
卒業から24年、150人が集まる同窓会に出席した堀口弘樹。質素なスーツ姿を見た銀行頭取の娘・久我エリは、高校時代と同じように彼を見下し、「パパに頼んで取引を打ち切ってもらう」と脅してきた。 しかし、弘樹の正体は年商2100億円の物流グループを率いる創業社長。東王銀行には300億円を超える預金があった。 「じゃあ、全部解約で」 翌日、銀行から100件もの電話が殺到する。だが、弘樹と頭取の間には、20年前の知られざる恩義があった。彼が最後に下す決断とは――。職場逆転|因果応報|第二の人生2.7万字5 661 -
完結第10話
本当の家主
仕事で疲れ果てて帰宅したのり子を待っていたのは、義妹・美香が散らかしたゴミだらけのリビングだった。片付けも夜食作りも拒否すると、夫の誠は妻を責め、義母のかよは「この家から出ていけ!」と怒鳴り、雨の降る夜にのり子を追い出してしまう。 助けを求める妻を見ながら、夫は冷たくカーテンを閉めた。しかし義家族は知らなかった。土地も建物も、亡き両親の遺産と自分の稼ぎで手に入れた、のり子名義の財産だったことを。すべてを奪われ続けた妻が、ついに静かな反撃を決意する。人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|修羅場1.8万字5 333