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"山奥の身代わり花嫁" 第17話

台の夜

最初の避難者が到着したのは午を過ぎた頃だった。濡れた着を抱えた族、杖をついた齢者、さな子を抱く母親。静さんは玄関で数を数え、さんは避難者名簿を作り始めた。私は井さんと厨へ入り、何分の事が必になるか確認した。広には次々とが集まり、夜半には百を超えた。

武さんはの災害対策本部と連絡を取り、林の状況を伝えていた。会社の両は勝に危険区域へ入れず、請があったに全な所で資材や運搬を伝うことになった。私は彼がへるのを止めたかったが、彼が危険を軽く考えていないことも分かっていた。「戻る予定が変わったら必ず連絡してください」と言うと、武さんは頷いた。

が起きたのは、夕の支度を始めてすぐだった。非常灯が点き、厨の蔵庫が静かになった。私は井さんと相談し、まず傷みやすい材を使い、保の利く米や缶詰をに回した。非常用のガス設備を全確認してから、鍋で雑炊を炊いた。物アレルギーのある子どもには、材料を確認した別の事を用した。

広では、らない所に来た子どもが泣きしていた。私はさなおにぎりを握り、すぎないようましてから母親へ渡した。「朝になったら、また温かいものを作ります」

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。そう声をかけながら、自分にも言い聞かせていた。べ物だけでを消すことはできない。それでも、のに何か温かいものがあると、はし落ち着ける。

夜、奥の集落に暮らしの老が残っていると連絡が入った。私は武さんへ話したが、すぐにはつながらなかった。数分、の対策本部から、消防団と救助隊が全な経を確認しながら向かっているとらされた。武さんはそのたちと連携し、通れるの報を伝えているという。私は何度も計を見たが、厨のを止めるわけにはいかなかった。

静さんが私の肩にを置いた。「美緒さん、し休んでください」。私は首を横に振りかけ、井さんの顔を見て考え直した。疲れて判断を誤れば、事を待つたちに迷惑をかける。私は交代で休憩を取る表を作り、分だけ子に座った。眠れはしなかったが、温かいお茶をむと、次にするべきことが理できた。

夜け、からの音が聞こえた。玄関へ駆けつけると、だらけの武さんが救助隊員と緒に戻ってきた。隊員に支えられた老は疲れ切っていたが、識ははっきりしていた。武さんの腕にも擦り傷があり、私はわず駆け寄った。「けがは」。彼は「丈夫です。まず皆さんをへ」と答えた。

私は老に温かいみ物を用し、救護担当へ引き継いだ。

ようやくが空いたとき、武さんが玄関の脇にっていた。いつもの落ち着いた顔が、疲れでし青く見える。私は濡れた着を受け取り、自然に言った。「お帰りなさい、武さん」。彼は瞬驚いたように目を見き、それから「ただいま、美緒さん」と答えた。

そのつの言葉だけで、私は胸がいっぱいになった。実では誰も私の帰りを待っていなかった。ここでは、私も誰かの帰りを待ち、そのが戻れば名を呼べる。広から子どもの笑い声が聞こえ、厨では井さんが朝の米を研ぎ始めていた。私は武さんの濡れたをそっと握った。

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