みかん小説
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"生け垣を伐った4日後、隣人が青ざめた理由" 第3話

黄い子と広がる

がごとにたさを増すにつれ、美津の嫌がらせは湿さを極めていった。 朝、がの玄関を掃き掃除していると、の反対側からわざと聞こえるような声で、通りかかる隣民に話しかける声が響く。

「ねえ、奥さん、見ました? あそこの佐野さんのけ垣! 枝がにせりして、暗くて気が悪いでしょ? いつ毛虫が落ちてくるか分かったもんじゃないわよ!」 「あそこのお宅、ご主がくなってから完全に入れを放棄してるのよ。寄りの暮らしだからって甘えられても困るわよねえ」 回覧板を回しにった際も、集まっていた主婦仲が私の姿を見るなり、サッと会話を止めて散っていく。 美津が町内会で「佐野邸のけ垣は危険だ、景観を損ねている、老の怠だ」と言いふらしていることは、もはや公然の秘密だった。

(私が至らないばかりに、お父さんが遺してくれたが、悪者扱いされている……) 庭の犀の幹にを当てると、ゴツゴツとした皮の温もりが掌に伝わってきた。 この犀は、政治と私が結婚した記だ。毎になると、さなのを満に咲かせ、のまで芳醇なりで包み込んでくれた。 の暮れ、娘夫婦と遊びに来た学の孫娘・柚(ゆづき)が、このを見げて無邪気に笑った顔がいされる。

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『おばあちゃん、この、おじいちゃんの匂いがするね! すごくいい匂い! 私、きくなったら植さんになって、このをずっとチョキチョキしてあげる!』

あの幼い笑顔をいすたび、胸の奥底が温かくなるのと同に、切ない涙がこみげてきた。 私の腰さえ丈夫なら。あの、政治が逝ってしまわなければ。 そんな毛な悔を打ち消してくれるのは、毎朝の通学をく子供たちだった。

「おばあちゃん、おはよう!」 毎朝分、黄い子をかぶった学の集団が、け垣の角を元気に曲がっていく。 「おはよう。に気をつけていくのよ」 私が声をかけると、子供たちは揃ってさなを振り返してくれた。 「おばあちゃんの犀、すっごくいい匂いだね!」 そう言ってびねる子供たちの笑顔を見るだけが、苦しい常ので息をつける瞬だった。

だが、現実は残酷だった。 子供たちが曲がるそのの角――け垣のイヌマキの枝が、確かにの背丈ほどのさで、アスファルトのへセンチほど張りしていた。 政治がいた頃は、見通しを遮らぬよう角の部分だけを丸く削るように剪定していたが、今の私のでは届かない。 もし、この枝のせいで角ができ、子供たちがと接触事故でも起こしたら――。 美津の悪に満ちた言葉のにも、その点だけは、否定のしようがない「私の落ち度」

がしていたのだ。

植さんに頼もう。いくらかかってもいい。側のけ垣をすべて綺麗に刈り込んでもらおう。 私がそう固く決し、話へ向かって歩きした、まさにその翌朝のことだった。

がの平穏は、けたたましいチャイムの音とともに、完全に打ち砕かれることとなった。

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