みかん小説
本棚

"「バカ息子」と笑う義父母、旅行中に息子夫婦が消えた" 第9話

親族関係調調と法な完全包囲

にると、鉛のの隙から、夕暮れの鮮やかな夕が差し込んでいた。濡れたアスファルトが赤に輝いている。

に乗り込み、しばらくったロードサイドのコンビニの駐で、琢磨はハザードランプを点けてエンジンを切った。

内には静寂が広がっていた。琢磨はハンドルに額を押し当て、細かく肩を震わせていた。

「琢磨……」

私がそっと肩にを置くと、琢磨はゆっくりと顔をげた。その頬を、粒の涙がとめどなく濡らしていた。

「はる子……今まで、本当にごめん」

掠れた、震える声だった。

「俺、ずっと怖かったんだ。親父たちに逆らったら、自分が本当にぼっちになってしまうんじゃないかって……来損ないの烙印を押されるのが怖くて、逃げてばかりで……番切なはる子の尊厳を守ってあげられなかった。本当に、ごめん……」

「謝らないで、琢磨。あなたが逃げていたなんてってないわ」

私は彼の両を握りしめた。

「今、あなたは私のにって、しっかりと守ってくれた。昔の呪縛を、自分の力で打ち破ったのよ。私はそんなあなたを、の底から誇りにうわ」

琢磨は涙を拭い、力く頷いた。

「ありがとう。……でも、これで終わりじゃない。あいつらは、先だけで諦めるようなじゃないんだ。おが無くなれば、また俺たちの職や実に乗り込んでくるに決まってる。

広告

だから、完全に法なを打つ」

琢磨は助席のダッシュボードから、冊のいファイルを取りした。そこには、数にわたって彼が法律相談所や法務局に通い、綿密に調べげた類が挟まれていた。

「庭裁判所に、『親族関係調調』を申してる」

「親族関係調調……?」

「ああ。庭裁判所で調委員と裁判官がに入って、親族の刻なトラブルを法に解決するための続きだ。直接顔をわせずに話しいができるし、何より『今切の接触禁止』や『居・勤務先への接禁止』といった条件を、法な効力を持つ調調として取り決めることができるんだ」

琢磨は仕事のを縫って、でこの準備をめていたのだ。妻を守るために、度と理尽な暴力を許さないために。

翌週、私たちは藤堂法律事務所を通じて、管轄の庭裁判所へ正式に調を申してた。

提された証拠は完璧だった。

にわたるモラハラの記録、玄関先での暴言の録音データ、散乱した借の督促状の写真、そして居を法占拠された証拠。さらに、義父が琢磨に暴力を振るおうとした事実を記した陳述。

数週にわれた第回調期。

調に呼びされた義父母は、当初「息子が親を捨てるなんて法律が許すはずがない!」と調委員ので鳴り散らしたという。

広告

しかし、裁判官と調委員から、法に成した子供に親の借を返済する義務は切ないこと、居の所権は妻にあり法占拠にあたること、これ以嫌がらせを続ければ接禁止命令だけでなく警察へ被害届を提され刑事事件になることを徹に突きつけられ、完全に沈黙した。

成した調調には、以の条項が厳格に盛り込まれた。

、義父母は、申夫婦の居、勤務先、および妻の実へ半径百メートル以内に接してはならない。 、話、、子メール、SNS等による切の連絡を禁止する。 、銭の求、および借の肩代わり求を永久に放棄する。 、本に違反した、違約の支払いおよび即の警察通報に同する。

法な檻が、逃げのない鉄壁の包囲網となって義父母の周りに完成した瞬だった。

調が成した数、度だけ、見らぬ公衆話から琢磨の携帯に着信があった。

琢磨がスピーカーにして通話ボタンを押すと、受話器の向こうから、かつての傲さを完全に失った、擦り切れた老の泣き声が漏れ聞こえてきた。義父だった。

『た、琢磨……頼む、助けてくれ……! アパートの保証会社からブラックリストに入れられて、どこの産も部を貸してくれないんだ……! 消費者融の取りても毎に来て、もうきていけないんだよ……!』

続いて、義母の惨めな願がなる。

『琢磨、お願いよ……私たちはあなたの本当の親じゃないの……! 優しいあんたなら、親がで野垂れぬのを見捨てたりしないわよね……!? ちょっとだけでいいから、おを……!』

かつて息子を「バカ息子」「来損ない」となじり、嫁を「産む械」と見していた者たちの、あまりにも浅ましくれな末。

琢磨は静かに目を閉じ、く息を吐きした。その表には、同もりもなかった。ただ、い世界の来事を見届けるような静寂だけがあった。

「調調の条項違反だよ。この通話は録音してる。今すぐ警察に通報するから、度とかけてこないでくれ」

『た、琢磨ァッ——!』

プツリ。

無質な切断音とともに、にわたる呪縛の糸が、完全に、永に断ち切られた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: